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泥を啜れと捨てられた無能令嬢、実は「神の瞳」を持つ奇跡の聖女でした 〜隣国の冷酷皇帝は、私を閉じ込め独占し、世界ごと跪かせる〜  作者: 西園寺ミオ
第3部:「宇宙のバグ」だと消去されかけた聖女、執着の皇帝に溺愛されて世界の理(システム)ごと神様をボコボコにしました

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第35話:星の回廊、鏡合わせの『私』

轟音と共に『星の回廊』の防壁が弾け飛び、白銀の戦艦が静かにその心臓部へと滑り込んだ。

 船のハッチが開くと同時に、私はギルバート様の逞しい腕に抱かれ、幾何学的な紋様が浮かび上がる白亜の床に降り立った。


「……ここが、世界の終わり、そして始まりの場所なのですね」


 見上げる空はない。そこにあるのは、無数の光の筋が複雑に交差する、巨大な情報の海。セレスが「お星様がいっぱいですわ!」と歓声を上げ、ロザリアが警戒して剣を構える。


 だが、その静寂は、一人の「女」の出現によって破られた。


「――ようこそ、エラー・コード:エルシア。そして、イレギュラー:ギルバート」


 回廊の奥から歩み寄ってきたのは、私と同じ、銀河の瞳を持つ女だった。

 月の光を溶かしたような銀髪、透き通るような白い肌。その容姿は私と寸分違わず、身に纏う法衣は、数千年前の私が『天空の聖域』で着ていたものと全く同じだった。


「……お母様が、二人……?」


 セレスが当惑して私の後ろに隠れる。

 その「女」は、感情の一切を排した、氷のように冷たい微笑みを浮かべた。


「私はタイプ・ゼロ。管理者が、失われた『原初の女神』のデータを完全に修復し、再現した姿。……不完全な感情というノイズに汚された貴女を消去し、私が新たなルールとなります」


 彼女が指先を上げると、周囲の光の筋が一本の巨大な槍へと収束した。

 それは、私の『銀河の瞳』が放つものと同じ性質を持ちながら、より無機質で、純粋な「消去の力」。


「……下がっていろ、エルシア。あのような薄気味悪い人形、私が見ているだけでも反吐が出る」


 ギルバート様の殺気が、物理的な圧力となって回廊を震わせた。

 彼は私の前に立ちふさがり、抜剣した漆黒の魔剣をタイプ・ゼロへと向ける。


「我が妻の姿を騙り、あまつさえその尊厳を汚そうというのか。……万死に値する、などという言葉では生温いぞ、ゴミ屑め」


「無意味な攻撃です、イレギュラー。私は、貴方が守ろうとするその『エルシア』の完璧な完成形。彼女にできることはすべて私にもでき、彼女が持ち合わせる弱さは私にはない。……勝機はゼロです」


 タイプ・ゼロが槍を放った。

 空間を抉り、理そのものを書き換える一撃。

 ギルバート様がそれを剣で受け止めるが、魔力の衝撃に回廊が激しく軋む。


「……陛下、おやめください。……これは、私の問題ですわ」


 私は、ギルバート様の肩にそっと手を置いた。

 彼は不機嫌そうに顔を歪めたが、私の瞳の奥に宿る「覚悟」を見て、わずかに道を譲った。


「……エルシア。あんな紛い物にお前の指一本触れさせるな。……不愉快だ」


「ええ、分かっておりますわ」


 私はタイプ・ゼロの正面に立った。

 彼女の瞳には、かつて私が王国で「無能」と呼ばれ、孤独に祈っていた頃の冷たい静寂があった。

 完璧。確かに彼女は、プログラムとして、神としての完成品なのだろう。


「タイプ・ゼロ。……貴女は、自分が『完璧』だと仰いましたわね」


「肯定します。感情、未練、執着。それらすべてのエラーを排除した私こそが、星を統べるべき正解です」


「……いいえ、それは違いますわ」


 私は、自分の胸に手を当てた。そこには、王国の冷たい床で震えていた記憶も、ギルバート様に拾われた時の温もりも、セレスを抱いた時の愛おしさも、すべてが刻まれている。


「貴女には、重さがない。……陛下が私に注いでくださった、息が詰まるほどの愛も。私が陛下を想う、狂おしいほどの執着も。……それがない貴女は、ただの『空っぽの器』に過ぎません」


 私の『銀河の瞳』が、タイプ・ゼロのそれを上回る密度で輝き始めた。

 それは、管理者が「エラー」と呼んだ、泥臭くも尊い、人間としての生命力。


「……バグが、出力を上昇させている……? 理解不能。なぜ、不完全なデータがこれほどの存在強度を――」


「教え差し上げますわ。……完璧な神様より、愛されている人間の方が、ずっと強いのだということを!」


 私が両手を広げた瞬間、回廊全体が銀色の光に包まれた。

 それはタイプ・ゼロが放つ冷たい光を飲み込み、優しく、けれど圧倒的な力で彼女の存在定義を上書きしていく。


「消えなさい、過去の私。……私はもう、独りで星を数える女神ではありません」


「ガ……ギギ……ッ、認識……不能……。愛、という変数が……宇宙の定数を……破壊……っ」


 タイプ・ゼロの体が、パリンと音を立てて砕け散った。

 感情を持たない鏡の中の私は、本物の愛を知る私の前で、ただの一秒も持ちこたえることができなかったのだ。


 静寂が戻った回廊で、ギルバート様が背後から私を強く、壊れ物を扱うように抱きしめた。


「……良く言った、エルシア。……あんな人形と、お前を並べること自体が宇宙の不具合だ」


「陛下……。私、もう怖くありませんわ」


 私は彼の腕の中で微笑んだ。

 だが、その時。

 砕け散ったタイプ・ゼロの光が、再び収束し、回廊の最奥に巨大な「扉」を形作った。


『――エラー値、限界。……管理者権限を『執行』から『抹消』へ移行。……マスター・プログラム、強制起動』


 扉の向こうから、これまでとは比較にならないほど、おぞましい「絶対零度の魔力」が溢れ出してきた。

 ついに、この世界の「主」が、その姿を現そうとしていた。

第3部の中盤戦、鏡合わせの自分自身との決着……!

「完璧な人形」と「愛された人間」。この対比、皆様にもエルシア様の尊さが伝わりましたでしょうか?

どれほど高出力なプログラムであろうと、ギルバート様の「重すぎる愛」で鍛えられたエルシア様の存在感には敵わなかったようですわね。


タイプ・ゼロが砕け散る瞬間のカタルシス、私も筆が走りすぎてしまいました。

「陛下に愛されている私の方が強い」と言い切るエルシア様、本当にかっこよく、そして愛らしいですわ。


しかし、偽物を壊したことで、ついに管理者の本体、マスター・プログラムが目を覚ましました。

次話、いよいよ第3部のクライマックス。

宇宙の理そのものを相手に、ギルバート様がどんな「理不尽なまでの力」を見せるのか……。


少しでも「エルシア様の啖呵に痺れた!」「陛下の相変わらずの独占欲が最高!」と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価(★★★★★) をお願いします。


皆様の応援という名の「バグ」が、管理者のシステムを完全にオーバーフローさせる最高の鍵になりますの。


これからもどうぞよろしくお願いします!

それでは、次回の更新もお楽しみに。

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