第34話:次元を駆ける星の船、最果ての管理室へ
「――陛下、本気なのですか? 次元の壁を越えるなど、理論上は……」
騎士団長ロザリアの震える声が、天空の聖域のドックに響いた。
だが、その懸念は、目の前に出現した「それ」を見た瞬間に霧散した。
「理論など、私の前で口にするな。エルシアが望み、私が必要だと判断した。それだけで事象は確定する」
ギルバート様が指し示したのは、白銀の流線型を描く、巨大な「空飛ぶ宮殿」だった。
それはかつて聖教国が誇った飛空艇などとは根本から異なる。船体そのものがエルシアの魔力を結晶化させた『感応石』で覆われ、周囲の空間を常に「書き換え」ながら浮遊している、次元航行艦『エターナル・エルシア』。
「……陛下、このお船、私の名前が……」
「当然だ。お前を運ぶ器に、それ以外の名などあり得ん」
ギルバート様は私の腰を引き寄せ、誇らしげに、そして独占欲たっぷりに微笑んだ。
彼はこの数時間で、帝国の魔導技術の粋を集め、さらに自らの「守護の執着」を動力源として、この化け物じみた船を完成させたのだ。
「お父様! お船の中に、お空が見えるプールがありますわ!」
一足先に乗り込んだセレスの声が、クリスタルの回廊から響く。
次元を越える戦いへ向かうというのに、船内は最高級のホテルよりも豪華で、常に一定の温度と湿度が保たれている。
管理者の「消去命令」すら、この船のバリアに触れれば、たちまちアロマの香りに変換される仕組みだという。
「……さあ、行こう。エルシア、私たちが『バグ』ではないことを、あの中枢の連中に直接教えてやる時間だ」
私たちがブリッジの中央、玉座のような指揮席に座ると、船全体が銀河の輝きに包まれた。
ギルバート様が私の手に重ねた自身の手に力を込める。
刹那、空間がガラスのように砕け、目の前には虹色の光が渦巻く『次元の狭間』が広がった。
通常の生命体なら、この空間に触れた瞬間に存在が分解される。
だが、『エターナル・エルシア』は、荒れ狂う次元の嵐を優雅に切り裂き、滑るように進んでいく。
「……綺麗。陛下、星が……流れていきますわ」
「お前の瞳には及ばない。……だが、退屈しのぎにはなるだろう」
窓の外では、管理者が張り巡らせた「防衛プログラム」と思われる無数の光の矢が迫っていた。
しかし、船体に当たる前に、自動迎撃システム――ギルバート様の魔力をトレースした黒い雷が、それらを塵一つ残さず撃ち落としていく。
「……報告します! 次元座標、固定。前方に巨大な構造物を確認……。あれが、管理者の心臓部『星の回廊』です!」
ロザリアの叫びと共に、虹色の霧の向こうに、幾何学的な巨大なリングが連なる、神々しくも冷徹な要塞が姿を現した。
あそこに、私たちの幸せを「エラー」だと断じた主がいる。
『――警告。警告。不法侵入者を確認。……全次元砲、起動。……対象を完全に――』
管理者の無機質な警告が船内に響こうとした瞬間、ギルバート様が鼻で笑った。
「五月蝿いぞ、ゴミ箱の番人が。……エルシア、少し揺れる。私の腕を掴んでいろ」
ギルバート様が指揮席のひじ掛けにあるスイッチを叩いた――のではない。
彼の意志が、船の主砲に直接乗り移った。
「――道を空けろ。皇帝の家族がお通りだ」
船首から放たれたのは、破壊の光ではない。
それは、次元の壁そのものを「強制開城」させる、圧倒的な覇道の波動。
管理者が誇る最強の防衛障壁が、まるで見えない巨人に踏みつけられたかのように、無残に歪み、崩壊していく。
私たちは、逃げも隠れもしない。
正面から、その喉元へと突き進む。
私を捨てた世界を越え、神を越え、今、私たちは運命そのものを支配するために、最果ての扉をこじ開けた。
ついに始まりました、宇宙規模の「殴り込み」!
ギルバート様が作った次元航行艦、その名も『エターナル・エルシア』。
愛する妻の名前を冠し、船内の快適さと防衛力を極限まで両立させる……。
「宇宙戦艦なのにプール付き」という陛下の過保護っぷり、これぞ溺愛ものの醍醐味ですわね。
管理者が張り巡らせた「次元の壁」を、ただの「障子」のように突き破るカタルシス!
皆様、お楽しみいただけましたでしょうか?
「皇帝の家族がお通りだ」という台詞、私も書いていてゾクゾクいたしましたわ。
しかし、辿り着いた『星 of 回廊』には、管理者の最終防衛ラインが待ち構えています。
そこには、エルシア様の「前世」をよく知る、ある人物の影が……。
少しでも「豪華客船並みの戦艦にワクワクした!」「陛下の物理的な解決策が最高!」と感じていただけましたら、
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皆様の応援が、次回、管理者の心臓部でエルシア様が『真の覚醒』を遂げるための、最高の舞台装置になりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、次回の更新もお楽しみに。




