第28話:天空の聖域、銀の鍵が導く『真実の楽園』
『始まりの神殿』の最深部で、エルシアが銀の鍵を虚空に差し込むと、世界が音を立てて書き換えられた。
視界を埋め尽くしたのは、宝石を砕いて散りばめたような星々の瞬き。
足元には、雲よりも白く柔らかな光の道が続き、その先には、純白の石材とクリスタルで築かれた、天空に浮かぶ神殿がそびえ立っていた。
「……ここは……」
エルシアの瞳が、かつてないほど激しく明滅する。
彼女が一歩足を踏み出すごとに、神殿の至る所にある魔導灯が次々と灯り、まるで数千年の眠りから覚めた主を歓迎するように、清らかな鐘の音が響き渡った。
こここそが、彼女がかつて統治していた『天空の聖域』。
人界の魔力など比較にならないほどの、純粋な「理」が満ちる場所。
「……思い出したわ。私はここで、ずっと……」
エルシアの背中に、光り輝く銀の翼が、陽炎のようにゆらりと立ち昇った。
その神々しさに、付き従っていたロザリアや騎士たちは、畏怖のあまりその場に跪き、頭を上げることすらできない。
だが、ただ一人。
ギルバート様だけは、その神聖な輝きに怯むことなく、エルシアの手をより強く、乱暴なまでに引き寄せた。
「陛下……? ここは、神聖な場所ですわ。そんなに強く……」
「……関係ない」
ギルバート様の瞳は、昏く、燃えるような嫉妬の炎を宿していた。
彼はエルシアを抱き寄せ、神殿の玉座を見据えて吐き捨てる。
「この場所がお前の故郷だというのなら、私はこの神殿ごと奪い去るだけだ。エルシア、お前をあの泥の中から拾い上げたのは、この冷たい玉座に返すためではない」
彼は彼女の耳元で、低く、呪いのような熱を込めて囁いた。
「お前は、私の皇后だ。神であっても、過去の自分であっても、私からお前を連れ去ることは許さん。……もしこの神殿がお前を縛る鎖になるというのなら、私は今すぐ、この聖域を地獄の炎で焼き尽くそう」
神の領域にありながら、男としての独占欲を一切隠さない。
その圧倒的なエゴイズムに、エルシアは恐怖ではなく、深い充足感を覚えた。
「……ふふ。貴方様らしいですわね、ギル様。……大丈夫です。私はもう、この玉座で一人、星を数える日々には戻りませんわ」
エルシアは自らの翼を消し、ギルバート様の胸に顔を埋めた。
「私は、貴方様に拾われた『ただのエルシア』として、貴方様の側で生きていたいのです」
聖域の主が、神の地位を捨て、一人の男の愛を選んだ瞬間。
神殿の最奥に鎮座していた『創世の記録』が、眩い光と共に、二人の「現在」を新たな正史として刻み始めた。
もはや運命ですら、この二人の絆を裂くことはできない。
天空の聖域は、女神の帰還を祝う場所ではなく、皇帝が女神を「完全に手に入れた」ことを証明するための、新たな邸宅へと成り果てたのだった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
ついに天空の聖域へ……!
エルシア様が「神」としての権能を完全に取り戻そうとする中、それを「私の皇后でいろ」と力技で引き止めるギルバート様。
これぞ、究極の「神殺しの溺愛」ですわね!
神殿の鐘が鳴り響く中での、独占欲たっぷりの囁き……。
皆様、あまりの尊さに悶絶していただけましたでしょうか?
エルシア様もまた、神の孤独よりも陛下の「重い愛」を選んだ。
これにて、二人の関係は「人間界の夫婦」を超え、「宇宙の理」そのものとなりました。
次は、この聖域に隠された、最後の「ざまぁ」の仕掛けが発動いたします。
少しでも「神殿での二人の抱擁に痺れた!」「陛下の嫉妬が時空を超えていて最高!」と感じていただけましたら、
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皆様の応援という名の「星屑」が、次回、エルシア様が『全人類の頂点』として、旧王国の者たちに引導を渡すための輝きになりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、次回の更新もお楽しみに。




