第27話:星の記憶、数千年前の『約束』
最近、私は同じ夢を見るようになった。
それは、空から数えきれないほどの星が降り注ぎ、大地が銀色の光で満たされる光景。
私は、高い塔の上で一人、誰かを待っていた。
数千年の孤独。けれど悲しみはなく、ただ一つの「約束」だけが、胸の奥で温かく灯っていた。
(……あの方は、誰? 私は、何を待っていたの?)
「――エルシア。また、うなされていたな」
深い夜の静寂を切り裂くように、ギルバート様の声が響いた。
気づけば、私は彼の逞しい腕の中に、これ以上ないほど強く抱きしめられていた。
彼の肌の熱と、少しだけ乱れた鼓動が、私の背中に伝わってくる。
「陛下……。申し訳ありません、起こしてしまいましたか」
「謝るな。……お前が私の腕の中にいながら、どこか遠くへ行こうとしている。それが、私には耐え難いだけだ」
ギルバート様は私の髪に顔を埋め、独占欲を孕んだ溜息を漏らした。
彼は私の夢の中にさえ、他者の影が入り込むのを許さない男だ。
翌朝、私たちは帝国の最深部にひっそりと佇む禁域――『始まりの神殿』へと向かった。
そこは、建国以前から存在すると言われる漆黒の石材で作られた遺跡。歴代皇帝でさえ、足を踏み入れることを禁じられた場所だ。
「……ここです。私の夢に出てきた、あの場所……」
遺跡の中央にある、巨大な水晶の石板。
私が吸い寄せられるようにその石板に触れると、私の銀河の瞳が、かつてないほど激しく共鳴した。
キィィィィンッ!
石板から溢れ出したのは、魔力ではなく「純粋な記憶」の奔流だった。
石板の表面に、古代の文字が浮かび上がり、それは瞬時に現在の帝国の言葉へと書き換えられていく。
『――我が愛しき半身、そして未来を継ぐ者よ。世界が再び色を失い、貴女が泥の中に沈む時、私は再び貴女を見つけるだろう』
その文字を見た瞬間、私の脳裏に、断片的な情景がフラッシュバックした。
数千年前。
世界を創り上げた「銀河の女神」と、彼女を影から支え、彼女のために死神となった「漆黒の王」。
「……まさか。……陛下、これは……」
「……フン。数千年前の男が、私の妻に恋文を残していたというわけか」
ギルバート様が、不機嫌そうに、けれどどこか納得したように鼻を鳴らした。
彼は私の肩を抱き寄せ、石板に刻まれた文字を、まるでライバルを睨みつけるような目で見据える。
「エルシア。お前の瞳がなぜ私を呼び、私がなぜお前以外の女に興味を持てなかったのか。……その理由が、ようやく分かった気がするな」
石板が眩い光と共に砕け散り、その中から一つの「銀の鍵」が現れた。
それは、世界の理を完全に掌握するための、神話の扉を開く鍵。
ギルバート様はその鍵を手に取ると、迷わず私の手のひらに握らせた。
「数千年前の約束など、私には関係ない。……だが、お前がその記憶を求めているのなら、私がそれをすべて手に入れてやろう。たとえそれが、神話という名の過去を、この手で破壊することになってもな」
皇帝の傲慢なまでの愛が、時を超えた神話の記憶さえも、今の自分たちの物語として塗り替えていく。
私は、彼の手を強く握り返した。
私たちの愛は、今始まったのではない。
数千年前から、こうなることが決まっていた。
運命という名の鎖は、今、より強固に二人を繋ぎ止めたのだ。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
ついに明かされた「前世」の繋がり……!
エルシア様が女神の転生体であるなら、ギルバート様もまた、数千年前から彼女を愛し、守り続けてきた存在だったのかもしれませんわね。
「数千年前の男の恋文」に嫉妬する陛下……。前世の自分にさえ嫉妬するその重すぎる愛、本当に尊いですわ。
「運命だから愛している」のではなく、「愛しているから、運命すら自分のものにする」。
これこそが、ギルバート様の揺るぎない美学ですわね。
さて、手に入れた「銀の鍵」。これが一体どこへ繋がっているのか?
少しでも「前世からの絆に感動した!」「陛下の独占欲が時空を越えていて最高!」と感じていただけましたら、
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皆様の応援が、次回、エルシア様が『神としての真の力』を完全に覚醒させるための、最高の儀式の輝きになりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、次回の更新もお楽しみに。




