第23話:聖騎士の来襲、神の剣を折る絶望の黒翼
完成したばかりの「竜神の揺り籠」――その虹色の空を、不吉な白銀の光が切り裂いた。
帝都の上空に展開された、聖教国最強の武力集団「十二聖騎士」の精鋭たち。彼らはそれぞれ、神の祝福を受けたと言われる「聖剣」を手にし、まばゆい後光を背負ってドームの前に整列した。
「――罪深き魔女エルシアよ! 並びに独裁者ギルバート! 我ら十二聖騎士が神の代行者として、この歪んだ結界を粉砕しに参った!」
先頭に立つ男、第一聖騎士ベネディクトが叫ぶ。彼が掲げた大剣から放たれるのは、邪悪を焼き尽くすと言われる浄化の光。
だが、その光はドームの表面に触れた瞬間、パリンと乾いた音を立てて霧散した。
「……? 何だ、今のは」
ベネディクトが呆然とする中、ドームの外壁を通り抜け、一人の男が「虚空」から静かに降り立った。
漆黒のマントを夜の翼のように翻し、冷徹な殺気を纏った皇帝、ギルバート様だ。
「……静かにしろと言ったはずだ。セレスがようやく昼寝に入ったところだぞ」
ギルバート様の声は、低く、鼓膜を直接震わせるほど重かった。
彼の背後には、かつての「死神」と呼ばれた頃を凌駕する、底知れない闇の魔力が渦巻いている。
「ふん、強がりを! 神の祝福を受けたこの聖剣『エクスカリバー・レプリカ』の前に、貴様の闇など……!」
ベネディクトが全魔力を込めて斬りかかる。
神速の一撃。
だが、ギルバート様は剣を抜くことさえしなかった。
彼はただ、左手を無造作に伸ばし、迫りくる聖剣の「刃」を、その素手で掴み取ったのだ。
「な……!? 馬鹿な、聖剣を素手で……!?」
「神の祝福、か。……その程度の『薄汚い魔力』で、我が妻の愛する庭を傷つけられると思ったのか?」
ギルバート様が指先にわずかに力を込めた。
ミシリ、と音が響いた直後。
伝説の金属で作られたはずの聖剣が、まるで安物のガラス細工のように、粉々に砕け散った。
「ぎ、ぎあぁぁぁっ! 私の、私の聖剣が!!」
「騒ぐなと言っている」
ギルバート様が指をパチンと鳴らす。
刹那、周囲の空間から漆黒の鎖が飛び出し、空中に浮いていた聖騎士たちを一人残らず拘束した。
鎖に触れた瞬間、彼らの「神の加護」はエルシア様の無意識の魔力干渉(拒絶)によって完全に無効化され、ただの重い鉄塊となった彼らは次々と地面へと叩きつけられる。
「……報告しろ。教皇庁の総本山には、あと何人の『ゴミ』が残っている?」
ギルバート様は、這いつくばるベネディクトの頭を冷たく踏みつけ、昏い愉悦を瞳に宿した。
「命乞いをする必要はない。お前たちが連れ去ろうとした私の妻は、お前たちが神と崇める存在よりも遥かに尊く、そして――私の娘に涙を流させた罪は、この程度では許されんのだからな」
ドームの中から、エルシア様が心配そうにバルコニーへ出てくるのが見えた。
ギルバート様は一瞬で殺気を消し、彼女に向けて、この世で最も甘く穏やかな微笑みを浮かべた。
「エルシア、大丈夫だ。ただの落とし物があっただけだよ。……すぐに片付けるから、君はセレスの側についていておくれ」
聖騎士たちの絶望的な叫びを、皇帝の優雅な微笑みが塗りつぶしていく。
神の加護を失った騎士たちを待つのは、救済ではなく、皇帝による「徹底的な処刑(お掃除)」であった。
本話もお読みいただき、ありがとうございました!
「聖剣を素手で粉砕」。
これぞ、愛する家族を守る男の、問答無用の強さですわね。
ギルバート様にとって、十二聖騎士など、セレス様の昼寝を邪魔する「羽虫」に過ぎなかったようです。
そして、エルシア様の存在そのものが聖教国の「加護」を無効化してしまうという事実……。
偽りの神の権威が、本物の「女神」の前でどれほど脆いか、皆様にも伝わりましたでしょうか?
次は、いよいよ帝国軍による聖教国への逆侵攻が始まります。
少しでも「ギルバート様の圧倒的強さに痺れた!」「聖騎士の無様な姿が最高!」と感じていただけましたら、
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皆様の応援が、次回、聖教国の腐敗した心臓部を暴くための、鋭い「ざまぁ」のメスになりますの。
これからもどうぞよろしくお願いします!
それでは、次回の更新もお楽しみに。




