一度あるということは!?♡
転校2日目の朝。
学園はまだサキュバス転校生の話題で少しざわついていた。昨日転校してきたばかりということもあり、廊下ですれ違う生徒たちがチラチラ旧館の方を見ている程度だが、学園全体に得体の知れない熱気が漂っている。
僕は風紀委員の腕章を巻いて朝の校内巡回をしていた。どうしても昨日の地下室のことが頭から離れない。
(……ティアだっけ。昨日はすごい勢いで逃げていったよな。僕、何かまずいこと言ったのか……いや、あの時変なこと言った覚えはない。でも、このままじゃ変態の汚名だけはなんとかしないと……!)
いろいろ考えながら巡回し、旧館近くを通りかかったとき、地下教室から出てきたティアとバッタリ目が合った。
ティアは一瞬固まり、次の瞬間——
「きゃっ!? またぁあ!? この変態キモレン!!テメェ」
ドンッ!
いきなり飛び蹴りが飛んできた!
僕は咄嗟に後ろに下がったが、
「ぜっってぇーー逃がさないんだから!!」
ティアは着地するなり即座に回転し、連続回し蹴りを連発!
ズドン! ズボッ! ぐしゃぐしゃ!
さらに勢いよく飛びつき、僕の首に腕を回して絞め落としハメ技に持ち込む!
「このっ! このっ! このバカキモレン!! 昨日も今日もなんなのよ!! おかげで一睡もできてないじゃない!!」
「うわっ!? ちょ、待てティア——ぐえええっ!」
完全にハメられた。網タイツの脚が胴体に絡みつき、首を締めながら耳元で怒鳴られる。
「だからなんで私の名前知ってるのよ! ……近寄らないで! サキュバスだと思ってバカにしてるのね!! おりゃー! 観念しろウリャウリャウリャ!!」
首元の【金色の竜の紋章】がピキピキピキッと激しく点滅している。
周囲の生徒たちが「うわっ、サキュバスと風紀委員長マジか!?」「イチャイチャしてる!?」「ガチかよ!?」と騒然とし始めた。
ティアはハッとして慌てて僕から離れ、耳まで真っ赤に染めて叫ぶ。
「もうっ!! キモレンの大バカ!!」
そのまま全力ダッシュで角を曲がって逃げていった。
(……避けられてるどころか、朝からフルボッコかよ。俺、もしかしなくてもめっちゃ嫌われてるね……?)
その日の午後、新入生歓迎フェスティバルが開催された。
メインリンクではいつものようにクリーン街のお嬢様たちがフィギュアスケートを披露していて、今年は特別にサキュバス転校生の合同パフォーマンスも組み込まれていた。
僕はリンクサイドで監視役をしていた。アナウンスが流れる。
『続いて、サキュバス転校生によるスペシャル演技です!』
照明が変わり、音楽が鳴り響くと、ティアがリンクに登場した。
しかし動きが少し硬い。昨日地下室で練習していた時より明らかに集中できていない様子だった。
そして高速ターンに入った瞬間——再び僕と目が合った。
バチバチバチバチッ!!!!
首元の金色の竜紋章が激しく暴走した。
「きゃああっ!? また!? なんでまた反応してんのよぉぉ!! キモレンがこっち見てるからなの!?なんなのよ!?紋章のバグ!?!!」
ティアの叫びが響き、火花が派手に飛び散る。観客は大興奮&大パニック。
ティアは演技を強引に切り上げ、リンクを滑り降りて僕の目の前まで来た。
息を荒げ、耳まで真っ赤にしたままフェンス越しに睨みつけてくる。
「キモレン……あんたのせいよ。昨日からずっと……!」
僕は思わず言ってしまった。
「……今のやつ昨日のステップ!?」
ティアの顔がさらに爆発的に赤くなった。
「うるさいっ!! バカキモレン!! 知らんがな!!」
彼女は荒い息のまま、突然指を突きつけた。
「もういいわ!キモレン滑れて!?ホッケー部らしいじゃん?次にリンクでキモい目で見たら覚悟しなさいよね、キモレン!!」
そう言い残して去り際にチラッと振り返ったティアの後ろ姿は、ボロクソ言われたのになぜか可愛く思えた




