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永劫のセツナ  作者: ALOE
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覚悟

「ここにダークエルフの女が来なかったか?」

フォクシールの声は落ち着いていた。


ジュリは身を固くしてうつ向いた。


「隠しても良い事は無いぞ?」

その時、フォクシールは床にあるものをつまみ

指で転がし、匂いをかいだ。


「これは使徒が消滅する時に残った遺灰だ」

そしてジュリとニキルを交互に見た時

何かに気が付いた。


「それは何だ?」

フォクシールは扉を開け、ジュリを強引にどかした。


「この制服はなんだ?」


ハップが消滅した瞬間、ギャリガンが隠したのだった。


「貴様…」

フォクシールがそう言った時

ジュリの頭に何かが直接語り掛けた。


(ジュリ!ニキルを!)


その言葉だけで不思議とジュリはニキルの手を掴んだ。

その瞬間、ジュリとニキルはその場から搔き消えた。


「転移か…」

フォクシールの顔は険しさを増した。



◆



「キャッ!」

ジュリとニキルは突然、空中に投げ出された。

そして床に転がった。


ジュリは這ってニキルに近づいた。

「う…ジュリ…」


ニキルは意識が戻っていた。


「ここは…?」

ジュリは呟いた。


「天国じゃないのは確かだ」

ギャリガンが言った。


「今何が…」


「あの婆さんだ。」


「ハップ婆…声がしたの」


「ああ、それに我の同族もな。

お前はあの婆さんと、我の同族を吸収したんだよ。」


「私の中に…」

ジュリはお腹に手をやった。


「お前は転移の魔法が使えるようになったらしい。」


「てんい?」

ジュリが首をかしげた。


「瞬間移動だよ。一瞬で違う場所に移動するんだ。」


「……」


「だがお前はまだ使いこなせないと思う。

さっきのは婆さんか…」


「お…ジュ…ジュリ…それは…?」

ニキルがジュリの指をゆびさして言った。


「ギャリガンだよ。私の中に住んでるの。」

あっけらかんとしていた。


「しまった…」

ギャリガンは呟いた。


ジュリはおもむろにニキルの胸に手を当てた。

「え?」

思わずジュリ自身が声を上げた。


するとジュリの右腕がうっすらと光を帯び始めた。

その光はやがてニキルを包んだ。


「傷が…」

ニキルは自分の体の傷が塞がって行く事に

思わず声を上げた。


「ジュリ…お前…すごいな…

なんとか動けそうだぞ!」

ニキルは体を起こして両手を上げた。


その時、大きな爆発音が聞こえ

立っていられないほどの揺れが起った。


「どうやらまだ船の中らしいな…」


「どうするんだよ…」

ニキルが嘆いた。


「そもそもなぜ貴様がいるのだ

ハイエルフ?

足手まといめが!」

ギャリガンはがなり立てた。


「体が勝手に動いちまったんだよ!」


「とにかく…外に出るしかあるまい…」


「外って!?」

ニキルは少し先の小窓から、外を覗き込んだ。


「おい……


 空の上じゃねーか!指野郎!」


「大丈夫だ。ジュリがいればな。」


「はあ?……

全部夢であってくれ…」

ニキルは肩を落とした。



◆



「フォクシール様! 発艦します。お急ぎを!」

兵士がフォクシールの艦、ソーマのブリッジへ入室を促した。


「ハップめ…」

フォクシールはハップの認証カードを握りつぶした。


「これ以上は載せられない!」

群がる群衆をしり目に、兵士は冷たく言った。

そしてハッチは閉っていった。


「見殺しにする気か!」

「フォクシール!」

群衆はソーマに罵詈雑言を浴びせた。


「ソーマ発進!」


ソーマはゆっくりと浮き上がり、進みだした。

何人か、ぶら下がっているが

持ちこたえられず、バラバラと落ちていった。



◆



「艦長、この艦はもう持ちません、早く脱出を」


「そんな事はわかっている」

ゼノギアは不気味に笑った。


「この艦はすでに自動航行により海に不時着するよう設定しました。」

オペレーターが早口で言った。


「ダメだ。設定を解除しろ」

ゼノギアの声は落ち着いていた。


「は? どういう…」


「この下に進路を取れ」


「!? 中立地帯に落とせと?」


「それしかないだろう」


「それでは乗組員達が…」


「大義を成すためだ!」


「はっ!」

兵士は敬礼し、足早に去っていった。


(ククク…全て灰燼に帰すがいい 

貴様の肝いりの施設だけはな。フォクシール…)



——


「おい聞いたか今の?」

ニキルは囁いた。


「この艦を墜落させると言っていたな」

ギャリガンが言った。


「どうすんだよ! 村に落ちるぜ!

いやその前に俺たち!?」

ニキルが少し声を荒げた。


「静かにしろ! ハイエルフのガキが」

ギャリガンが言った。


その時、ジュリの親指からギャリガンとは違う

声がした。


「聞きなさい、あんた達…」


「ん? 我ではないぞ!?」

ギャリガンが言った。


「その声はハップ婆!」

ジュリが言った。


「あんた達が載っているバカでかい艦は墜落する。

私が機関の一部を破壊したからね。」


「はあ!? 俺たち死ぬのか?」

ニキルが言った。


「聞きな!せっかちだねあんたは!」


「この艦に積まれている兵器。この兵器は物を消滅

させる力がある。跡形もなくね。」


「完成していたのか…」

ギャリガンが呟いた。


「ああ、そうだギャリガン。

久しぶりだね。」


「そんな恐ろしい物を、どうするんだ?」

ニキルが言った。


「墜落する前に、その兵器を暴発させ

艦ごと消滅させるんだ。」


「……」

「……」


「うん…下の皆が助かるなら…」


「ああ…仕方ねえ」


暫く沈黙が続いた。


「二人とも、勘違いしてないか?」

ふとハップは言った。


「?」


「艦だけを消滅させるんだよ。」


「はっ! どうやってそんな事を」

呆れたようにギャリガンが言った。


「この兵器の開発責任者だったんだよ

私は…」


「‥‥!」


「干渉対象を変更するようにプログラムを変えたんだ。」


「かんしょ…? プロ?」

ジュリが言った。


「言ってることがよくわかんねえけど

俺たちは消滅しないって事だな?」


「まあ そういう事だ」


「でも、その後どうなるんだよ?

俺たちは空中に放り出されるって事だろ?」


「それは知らん…」


「おい!ババア!それじゃあ一緒じゃねえか!」


「ジュリに聞け」


ニキルはジュリを見た。


「あ…はは…」


「ジュリ、やれるな?」

とハップは言った。


ジュリはゆっくりと頷いた。


◆



ヴァルディア・ブリッジ———


「座標、セット完了しました。目標、中立地帯、西北部…」

と兵士は力なく言った。


ゼノギアはニヤリと黄色い歯を見せた。


「では私はこれより退艦する。

皆、ご苦労だった。」


「!?」


10名いたブリッジのクルーたちは一斉にゼノギアを見た。


ゼノギアは剣を抜き、目の前の兵士を斬りつけた。


袈裟に斬られた兵士はうめき声を上げる間もなく

どさりと倒れた。


「艦長! 何を!」


「混ざり物はいらん」

ゼノギアの剣には青白い光が揺らいでいた。


「艦長…いや、ゼノギア…」

そう言って兵士の一人がゼノギアに斬りかかる。


だがその斬撃をゼノギアは素手で受け止めた。


「純血こそ真理。純血にしか到達できぬ。」

ゼノギアは掴んだ剣を強く握ると、刀身は粉々に砕けた。


「な…なんだ…お前?!」

それを見ていた他のクルーも一斉に攻撃を開始する。

ある者は、攻撃魔法で、ある者は体に強化の魔法をかけ躍りかかった。


しかしゼノギアにはそれらが止まって見えていた。

スローモーションの兵士たちの間を、ゆっくりと歩き

首を刎ね飛ばしていった。


そして、一瞬で首を刎ね飛ばされた兵士達は

バタバタとその場に落ちていった。


ゼノギアは剣をパチンと鞘に納め

はーっ とゆっくりと息を吐いた。


そしてゆっくりとした足取りで

闇間に消えていった。



その時、イオンフレイムの制御盤のインジケーター

が警告を知らせていた。

エネルギーの充填量が100%を超え、上がり続けていたのだ。


だが、その事に気が付く者は誰も居なかった。



◆



ジュリとニキルは手をつなぎ、来たる瞬間に備えていた。


「もうどうにでもなれ…」

ニキルは呟いた。


ジュリは正面を向き、窓の外の景色を見ながら

少し震えていた。

だがそれを押し殺すように歯を食いしばった。


「私が助言できる…ジジ…はここまでだ。

あまり長い間しゃべる事ができ…ジジ…からね。」

ハップの声に時々ノイズが入った。


「来る!」

ギャリガンが叫んだ。


辺りは眩い閃光に包まれた。



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