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永劫のセツナ  作者: ALOE
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施設は静まり返っていた。

戦力が村に割かれたためなのか、それは

わからないが。


辺りは甘い香りが漂い

建物には蔦が絡みつき、いくつかの赤い花が

咲いていた。


「フウ…」

セツナは小さなため息をひとつついた。


シンプルな石造りの建物の壁の下に、四角い入り口があった。

すぐに階段が下に続いている。


セツナが階段を降りようとした時

ふと気配を感じた。


「おやおや、私の気配に気が付いたかい」

その声は聞いたことがあった。


「……」


「マナコアは抜かせないよ、あんた達が栓と呼んでるあれだよ」


「何の事だ?」

セツナは振り返らずそう言った。


「とぼけるのは時間の無駄だよ。

あんたをここから先に行かせる訳にはいかない。」

柱の陰からハップ婆がゆらりと姿を現した。


「ひとつ聞かせてくれ」


「なんだい?」


「それでいいのか?

あの村を襲わせて、あんたは?」


「もう…手遅れだよ。

やっぱり、生きる場所は無いのさ

混種にはね…」


セツナが振り返ると、ハップ婆が立っていた。

普段着ていたローブが取り払われたその体には

鱗がびっしりと生えていた。


「消されるはずだったんだよ。あの巨大兵器で。

ルモルグ爺の村と共にね。」


「……」


「だが、そこに現れた、使徒と融合したジュリがね

射程位置が寸前で変更された。」


「……」

セツナは踵を返し、建物の中へと一歩を踏み出した時

何かが空を覆い、辺りは陰となった。


黒い飛空戦艦はセツナ達の真上で止まり

船からゴンドラが下りてきた。


透明なゴンドラが地上に降りると、中から3人のダークエルフが

姿を現した。


「フォクシール……!」

ハップ婆は嫌悪感を(あらわ)に呟いた。


「臭い臭い…息が出来ぬわ全く。」

そう言いながらフォクシールたちは

近づいてくる。


「これはこれは、仮面の…

こんな所で何をしているのか?」

ニヤケ顔でそう言った。


「おお それに、匂うと思ったら

混種の老いぼれもいるではないか。」

フォクシールはハンカチを口に当てている。


ハップ婆はフォクシールの前で片膝をつき

頭を下げた。


「で…ハップ、使徒と融合したあの混種は

捕らえたのか?」


「……現在、R村にて遂行中でございます。

フォクシール様」


「あ? そんな事はどうでもよい

捕らえたかと聞いている。」

フォクシールは顔を近づけて

そう言った。


「ま‥‥まだでございます。」

ハップ婆の声はかすかに震えていた。


「さっさと捕えてこい! ゴミが!」

フォクシールはハップ婆の顔面を思い切り蹴った。


セツナはただ黙って見ている。


フォクシールはセツナに視線を向けた。

「ところで、仮面の‥‥

あんたはなぜここにいるのだ?」


「何処にいようとあんたに関係ない」


「人の土地に無断で入られれば

誰だってこう聞くだろ?」


「あんたの土地に興味は無い

それにここは中立地帯ではなかったか?」


「はっ…この期に及んで…

貴様の今置かれている状況が理解できんのか?」


「さあね あんたとおしゃべりしてる

時間は無い」

そう言ってセツナは再び踵を返し、階段を下りかけた。


その時

「やれ」

フォクシールの冷たい声が響いた。


黒い飛空戦艦の砲身から、青白いエネルギー波が

セツナに向けて発射され、辺りは光に包まれた。


「フハッ! すごい威力! 分解されおった!」

いやらしい笑みを浮かべてフォクシールは手を叩いた。


不安げなハップ婆の瞳は白い光を映していた。





「ララー!」


異形に鷲掴みにされているハイエルフに向かって

ジュリは叫んだ。


「おいジュリ、どうでもいいがあのハイエルフのガキは

ララという名なのか?」


「私が付けたの。かわいいでしょ?」


「ララを離して!!」

ジュリは叫ぶ。


「ジュリよけろ!!」

ギャリガンが叫んだ瞬間

触手がジュリの足に巻き付いた。


「キャーー!!」


たちまちジュリは逆さづりにされてしまった。


しかし程なく、きらりと鋭い閃光が走り

異形の腕と触手は一瞬で切断され

ララとジュリは誰かの腕に受け止められた。


「お前たち、下がっていなさい。」

ミキルは落ち着いた声でそう言った。


「こっちよ」

ニキルの姉、カミルがついてこいのジェスチャーをした。


無数の異形たちが

二人の少女に群がろうと迫って来る

だがクロフォードと、ミキルの前では紙切れに等しかった。


(すまぬ…お前たち…)

クロフォードは異形を切り倒しながら

呟いた。


その表情をミキルは見逃さなかった。


カミルは2人の少女の手を引き

村の外に続く小道を走っていた。

カミルの弟ハキルが殿となって迫る異形を斬りながら

誘導していた。


だが、異形の数は増える一方だった。


「カミル姉さん! これでは持たない!!」

ハキルが叫ぶ。


その瞬間

ジュリは触手に高々と吊り上げられた。


そして何処からか飛んで来た羽の生えた異形が

ジュリを掴み、羽を羽ばたかせている。


「ジュリ!」

ニキルだった。


ニキルは異形たちを踏みつけながら、羽の生えた異形に

飛びついた。


「ニキル!!」

カミルとハキルが同時に叫んだ。


ジュリを掴み、ニキルにしがみつかれたまま

鳥型の異形は上昇していった。


「ジュリ!」

ニキルは羽を掴みながら、ジュリに手を伸ばした。

だが届かない。

「意識を失ってる」


そこに別の鳥型の異形が襲い掛かって来た。

鈎爪がニキルの肌を何度も掴む


ニキルの体はどんどん傷が増えていった。


ジュリはぼんやりと目を覚ました。


視界に血まみれのニキルが辛うじてぶら下がっていた。


下を見ると、森ははるか遠く、水平線を(のぞ)んだ。


「ああ!ニキル!!」


ギャリガンが呟いた

「一か八か、俺に提案がある。」


「何?ギャリガン」


「この異形は手が無い、お前が上に手を伸ばし

伸びた()でこいつの首を絞める。」


「そんな事したらみんな落ちちゃうよ!」


「ああ その通りだ。

だが…お前には羽がある。」


「出し方がわからないよ!ギャリガン」


「出すしかない。だから一か八かと言ったんだ。」


ジュリはニキルを見た。

寒さと痛みで目を固くつむり、しがみついていた。


「ギャリガン!」

そう言うとジュリは腕を伸ばし指先を異形の首に向けた。


ギャリガンはするすると延びていき

異形の首に巻き付き始めた。


徐々に締まっていく。


異形は苦しくなっていき、羽をバタつかせ始めた。

やがて、小刻みに震え、体の力が抜けた。


「さあジュリ、羽を出せ!」


「無理だよ…」


「まあ そうだろうな…

そんなにうまく行くとは思えぬ…」


その時、ニキルは力尽き、異形からから徐々に離れていく。


「ニキル!!」

ジュリは叫ぶが、どうしようもなかった。


「ジュリ、我も限界だ…」

ギャリガンはそう言うと、異形の首に巻き付けた

指がスルスルと解かれていった。


その瞬間、ジュリの心に一筋の光が当たった。

「みんな…

嫌だ…死なせたくないよ…」


「助けて!助けて!‥


…助ける!!」

ジュリが叫んだ。


ジュリの中で何かが溢れた。

無数の光をまき散らしながら、いつの間にか

落下する速度は緩やかになっていた。


「ニキル‥‥」

そう呟いた瞬間、かすかに腕に重さがあった。


ジュリが見ると、伸びた指がニキルの脇に巻き付いていた。


「ギャリガン…!」


大木の高い枝の上で隠れていた

バエトは上空で光る物を目にした。

それは七色の光を放ち、ゆっくりと下降していた。

「綺麗だ…あれは…」


バエトは目をこらした、見た瞬間、ある疑念があったからだ。

だが疑念は確信に変わった。

間違いない…

「ジュリ…」

バエトの頬を涙が伝った。

だが同時に、バエトの心に去来する感情があった。

隠れていた自分、そして光り輝く妹 と。






「キリがない…」


「いつまで続くのだ…」


クロフォードとミキルの周りには無数の異形の屍が転がっていた。

そして時間が経つごとに、屍の山が出来ていた。


一体は弱い、だがいくらでも湧き出て来る事に

徐々に精神の疲弊を誘発した。


その時だった。

異形たちは一斉に動きを止めたのだ。

その場で石像のように固まっている。


いつの間にか魔法陣も消えていた。


異形に取り囲まれたカミルとハキルも呆気に取られている。


「止まっ…た?」


クロフォードはハッとした。

「まさか…核を…あいつが…」


クロフォードは剣を収めると、フッと消えるように

何処かへ向かった。


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