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永劫のセツナ  作者: ALOE
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次の世代

——女の子です。

おくるみにくるまれた赤子をそっと受け取る。


——ああ なんて愛しい


——この子の名前は……


——ジュリ、ジュリが良いわ…


——ジュリ 生まれてきてくれてありがとう。


その人物の感触はとても心地よかった。

だが顔に靄がかかってよく見えなかった。


突然


——何をするの!?


無言で部屋から出て行く人々


——ジュリを返して!


——ジュリ! ジュリ!……



◆


生暖かい風が頬を撫でる。

べとつく様な風は少し生臭い気がした。


ジュリはうっすらと目を開けた。

陽の光が瞳に射しこんできた。


「ここは……」

寝そべったままジュリは呟いた。


そこには見た事も無い光景が広がっていた。


大きな水溜り。

水辺の水は行ったり来たりを繰り返している。


ハッとして自分の背中を見ると

羽の様な物は消えていた。


「あれは…夢だった?」


「夢ではない

やっと気が付いたか、娘……」

ジュリの目の前で細長いモノが目を瞬いている。


「あ‥ギャリガン」


「お前の羽…我にもわからぬ。

どうやらお前が目を開けねば我も

見えぬらしい。

妙な事よ……」


「ここはどこなの?私達

飛ばされて……」


「ここは恐らく‥‥

お前に言っても理解できんと思うが…」


ジュリは指から生えた細い相棒を目を丸くして

見ている。


「そんな目で見るな……

恐らくだが

帝国とハイエルフ領の中間地点…

消えたがな……」


「?」

ジュリの目は丸いままだ。


「だろうな…」

ギャリガンはため息をついた。


ギャリガンは絶望しかけていた。

龍脈に耐える事の出来る個体に寄生した時は

勝利を確信した。

だがどうだ

寄生したものの、掌握できず

体から抜け出す事もできない。

想定外だった。


ギャリガンの脳裏にあの

ダークエルフのしたり顔がちらついた。


——我らさえ、貴様らの駒だと言うか…


ギャリガンは腸(はらわた)が煮えくり返る思いだった。


——舐めくさりおって…!下等生物どもめ


「ギャリガン、悪口は自分に返ってくるんだよ

長老がいつも言ってるよ」

ジュリが頬を膨らませて言った。


「貴様まで! 我を愚弄(ぐろう)する気か!」


「グロ…?」


「はあ もういい! 黙れ黙れ!」

そう言ってギャリガンはジュリの指の中に

引っ込んで行った。


ギュルル‥‥

その時ジュリのお腹が鳴った。


「お腹減った」

ジュリが呟いた。



◆



——これは父さんに知らせなければならない…


森が消えた事を報告するために

急いで村に帰らなければならなかった。


ハイエルフのニキルは踵を返し、

駆けだそうとした瞬間

何かが自分の足首を掴んだ。


飛びのこうとしたが、足首は強い力で

捕まれており、その場に倒れてしまった。


「待て…」

掠れた声がした。


ニキルは倒れた足元を見て

驚愕した。


「ジリル!!」


思わず大声を出してしまった。


茂みの中にジリルの顔だけが浮かび上がっている

ようだった。

よく見ると、太い枝が体中に刺さっている。

顔中に血が滴り、ニキルの足首を掴んだ手にも

血がべっとりとついていた。


「おまえ…たす…け…を…呼んで…来い」

消え入りそうな声だった。


ニキルは恐怖で声が出せず、足をバタつかせて

なんとか引き離そうと試みた。


その時ジリルの隻眼(せきがん)がギラリと光った。


「ハァハァ…お…お…ま…えは……見、見たことがあるぞ…!」

ジリルは息も絶え絶えなのに、足首を掴む手の力は

一層強い。


ふと横を見ると、人の頭よりも少し小さい

石があった。


——やらなければ殺される

ニキルはそれを掴むと、ジリルの頭に

叩きつけた。


「お…ま… やりやが… ミ…キルの…むす…」


ニキルは何度もジリルの頭を石で叩いた。

次第にジリルの握る力も弱まり

ついにはニキルの足から手が離れた。


ジリルはニキルを睨みつけたまま息絶えた。


——人を殺した…

ニキルは今起こった事が整理できず

暫く呆然とするしかなかった。


ニキルは暫く、地面に尻をついていたが

やがて立ち上がり、ゆっくりと歩き出した。


しばらく歩くと、また誰かが倒れていた。

——ダークエルフだ。

——さっきの。

——死んでる。


——ハイエルフの子供は!?


ニキルは辺りを見回したが

他に人影は見つからなかった。


——ジリルは帝国にハイエルフの子供を売ったんだ…

——やっぱり父さんに報告しなければいけない…


疲労困憊——ニキルは酷い気分だった。

今日はあまりにも多くの事が起ったのだ。

そもそも入るなと言われていた森でだ。

これらを順を追って父に説明しなければならない事に

更に気持ちが沈んでいった。

だんだん光を失っていくジリルの瞳が目に焼き付いている。


ニキルはべそをかきながら、もうすぐ陽が落ちそうな

森を分けいった。

足取りは重く、ギュルルとニキルの腹が鳴った。

「腹減ったな…」



◆



——とにかく西へ…


バエトは、夢中で駆けていた。

西の方角で空が光った。

それがジュリと関係するのかはわからない。

だけど、なぜかそう思い込んでいた。


居てもたってもいられず、飛び出してきてしまった。

体が勝手に動くのだ。前へ前へと。

光った方向に進む事などもうどうでも良かった。


日没からずっと進み続けていて

バエトは此処がどこか全く分からなくなっていた。


——そういえば村を離れるのは初めてだ…


村の住人は全て帝国の所有物だと。

その言葉を長老から聞いた。


——なんだよそれ!皆んな知ってて…!


村の皆の目、生きる事を諦めた人の目だった。

その事を思い出すたび、頭に血が上った。


しかし今の自分にはどうする事も出来ない。

——自分は混血なんだ。

何にも類しない存在。

自分の為に生きてはならない。

無条件で帝国の為に命を捧げる。


心の奥底から、黒い何かが迫って来る。

そして大きな手で心臓を鷲掴みされるのだ。

それを絶望と呼ぶ事に今のバエトでは理解できなかった。


——うわああああ!!

バエトは叫び、走り出した。

目から鼻から汁が出た。


その光景を、空に静止する仮面の男が

じっと見ていた。

「バエト…」



◆



「あ、この実食べれるよ!」


ジュリは少し背の高い木になる赤い実を背伸びして

千切り取った。

そしておもむろに口に放り込む。


その時

「おい! 待て! それは食べては…!」

ギャリガンが叫ぶ。


ゴクリ

ジュリの喉が鳴った。


「おい、娘…それはお前が思っている木の実ではないぞ」


「え?」


「猛毒の実だよバカ!お前が死ねば我も死ぬのだ…

ああ、ここで我はついえるのか…」


「……」


「…って、何も無い?痛む所は?腹は?」


「ううん おいしいよ! ちょっと苦いけど。」


(あの実は間違いなく、ダルマボクだ、ホトケボクと

良く間違われる…どういう事だ)


「お前…毒耐性があるんじゃないか…?」


「ドクタイセイ?? それは美味しいの?ギャリガン」


その時、近くの茂みがガサガサと揺れた。


「おい!娘、静かにしろ!」

ギャリガンがそう言ったが、時はすでに遅かった。


そしてジュリは見上げた。


大木の陰の茂みをかき分け

一つ目の巨人がヌッと現れた。


巨人の脇には人が抱えられている。


白い肌、金色の髪の毛。


「キャァァァ!」

ジュリは叫び声を上げた。


怒涛の週末出張が終わったので、またゆっくり書けそう…かも

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