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【7部】転生したら美少女冒険者に! ~おっさんの心が旅立つ異世界冒険記~  作者: 綾
第4章 古代遺跡の調査

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17話 ガーディアン登場

 俺たちは休息の片づけを終え、階段を下った。

降りた先は、かなり広い空間が口を開けていた。

高さだけでも十メートルくらいはあるのか。広さもランタンの明かりが届かないくらいで、先がよく見えない。


「エレナ?」


「どうかいたしましたか?」


「帰っていいか?」


「いきなりどういたしましたか?」


 エレナは驚いた感じでそう言ってきた。そりゃそうだよな。

普通はここまで暗いと何も見えないはずなんだけど、盗賊スキルの暗視《ルナ・サイト》があるのが、こういう時は逆につらい。

少しでも明かりがあれば、闇の中でも輪郭が浮かび上がってしまう。


「向こうの方に扉があるのだが、その前に三メートルぐらいの石像がある」


「石像ですか?」


「これまた『いかにも動きますよ』って感じの石像だな」


「動くと思いますか?」


「扉の前に石像だぞ。反対に、動かないと思うか?」


「動くとなると、ストーンゴーレムですか?」


「たぶんな」


 ゴーレムってやつは、素材でだいたいヤバさが決まる。

死肉とか骨のゴーレムもいるけど、石のゴーレムは上から数えた方が早い。

あの拳、まともに食らったらお陀仏だ。小型とか関係ない。あの重さの塊が飛んでくるってだけで、背筋が冷える。


「確かに、二人だけとなると、かなりつらい戦いになりそうですわね」


 エレナの言う通りだ。

前に出られるのは俺だけで、エレナは後ろから支援。

もし一発でもエレナに攻撃が飛んだら、その時点でサポートも何もあったもんじゃない。


 ルナ・サイトでじっくり周囲をなぞるみたいに見ていくと、壁から天井にかけて、見落としそうな赤い印がいくつも浮かんでいるのが見えた。

どう見ても、赤外線センサーみたいな代物だ。もちろん盗賊スキルでどうにかできる類じゃない。

あのラインをもう数メートル進んで踏み抜いたら、扉の前の石像が動き出す。たぶんそういう仕掛けだ。


やれることは二つ。

一つ、逃げる。たぶんそれをやったら、この依頼は失敗だろう。

二つ、戦う。分かっていて真正面から突っ込むのはバカだ。やるなら準備してからだ。


 ここは高さも広さもある。思い切り暴れても、天井に頭をぶつける心配はなさそうだ。

だったら、火炎流(キャノンバスター)を撃ちながら突進して、最初の一撃でどれだけ削れるかに賭けるのがいちばんマシか。


「一応、案はあるぞ」


「お聞きしても?」


「たしか祝福(ブレス)の呪文があるよな。戦闘の時に保護をかけるやつ」


「戦神に祈祷するよりは効果は薄いですが、戦闘のための祝福呪文はありますわ。慈愛の女神でも、生き残るための戦いはだめとはおっしゃっておりませんわ」


「その間に、俺は武器を魔法で強化する。そのあとで攻撃呪文を放ちながら突進するって作戦だ」


「気づかれずに何とかする方法は、ございませんか?」


「四方八方に、あれを動かす罠が仕掛けてある。俺がどうにかできるのは一か所だけだな。でも、それ以外のどこかに引っかかったら、結局必ず気づかれる」


「そうなりますと、気づかれずに突破するのは無理、ということですわね」


「だから、不意打ちで先制攻撃して、相手が攻撃してくる前に倒せれば、一番楽だな」


「なら、呪文を唱えますわ」


 エレナがベルのついた錫杖を掲げ、静かに祈り始めた。

祝福(ブレス)の呪文が完成した瞬間、体の芯からじんわりと力が満ちてくる。


「深淵なる我がうちに宿る力よ、剣に宿れ。魔力の刃(エンチャント・エッジ)」


 俺も力ある言葉を紡ぎ、自分が装備している武器に魔法の強化をかける。

|祝福のおかげで、さっきまでのざわつきが嘘みたいに消えて、意識がきゅっと研ぎ澄まされていくのが分かる。


「業火の精霊よ、我が意に従い、敵を焼き尽くせ。火炎流(キャノンバスター)」


 掌から炎が奔流(ほんりゅう)となってほとばしり、扉前のストーンゴーレムめがけて飛んでいく。

炎が直撃して爆発したその瞬間、俺は全速力で地面を蹴った。


 盗賊技能の影走り(ヴェイルラン)でさらに加速し、爆炎の手前、ゴーレムとの距離があと一歩になったところで大きく踏み込む。

一成(ひとなり)をおこなった。

戦士技能の踏み込み技だ。本来は一歩分、間合いを伸ばすための技だけど、思いきり体重を乗せて踏み出せば、その分だけ一撃の重さも増す。




戦士技能の奥義断轟(だんごう)。防御壁すら切れる戦士最大の攻撃技だ。

俺は刃を大きく振りかぶり、ゴーレムめがけて全体重を乗せて叩きつけるように振り抜いた。

石とは思えない、分厚い何かを断ち割ったみたいな手ごたえが、腕を通してずしりと伝わる。


 石煙の中で、一瞬だけゴーレムの目が光った気がした。

次の瞬間、無数の石つぶてが俺に向かって飛んでくる。

一撃を振り抜いた直後で、回避は無理だと判断する。

俺は避けるのをあきらめ、身体全体に力を込めて、正面から受けに回った。

石つぶてをまともに浴び、その威力に押されて、俺の体は後ろへ吹き飛ばされる。


「シビさん!」


「大丈夫……だ」


 とっさに戦士の防御技金剛(こんごう)が間に合ったからよかったものの、

もし遅れていたら、近距離からの石の散弾で、そのままあの世行きだっただろう。まったく。


 そりゃそうだよな。

ここに来るまでに普通じゃないことが山ほど起きてたのに、扉を守ってるやつだけ「普通の」ストーンゴーレムなわけがないか。

俺は剣を杖代わりに地面につき、体を起こして、もう一度ゴーレムと対峙した。


 エレナがこちらに走ってくる途中、何かを唱えていると思ったら、俺の身体の傷がじわじわと癒えていく。

どうやら治癒(ヒーリング)の呪文をかけてくれたらしい。


「シビさん、今の攻撃、もう一度まともに受けたら本当に危険ですわ。

守備の光(プロテクション)をかけます」


 エレナが錫杖を胸の前で構え、鈴をかすかに鳴らしながら祈りの言葉を紡ぐ。


「慈愛の女神アウリスよ、その光でわたしたちを包み、迫りくる刃と衝撃を遠ざけ給え。守備の光(プロテクション)」

ふわっと淡い光が俺の体を包み込んだ。肌のすぐ外側に、薄い壁みたいなものが張りついた感覚がある。


「さっきより体は軽いのに、どこか鎧を一枚足したみたいな感じだな」


「防御呪文をかけましたわ」


「助かる。……やっぱり一撃が弱いな」


 俺はそうつぶやいた。女性の身体だから仕方ないが、予想よりはるかに非力に感じる。

少なくとも以前の俺の筋力くらいあれば……まあ、ない物ねだりしても仕方ないか。


 石煙が晴れ、ようやくご対面となったゴーレムは、思った以上のダメージを受けていた。

全身のあちこちにクモの巣みたいなひびが走り、石肌が不規則に歪んでいる。

この攻撃で無傷なんてことになったらシャレにならなかったので、とりあえず一安心だ。


ゴーレムがこちらに向かって腕を振り下ろしてくる。

ひびは入っているが、動きそのものはまだ十分速い。

休息明けで体がよく動くこともあって、俺はその一撃をギリギリのところで身をひねってかわした。


「次で決めるな」


「ですが、ひびが入っているとはいえ、動きが鈍っているわけではありませんわ。ご用心を」


「了解したよ」


 俺は身体を弓なりに反らせて、ゴーレムめがけて突進した。

戦士技能の一つ、牙衝(がしょう)。

さっき入れたひび割れを狙って、一直線に踏み込む。

刃がひびの奥までずぶりと差し込む感触があって、俺はそのまま手を放した。

柄を蹴り上げるようにしてさらに押し込み、後ろへ飛び退きながら力ある言葉を吐き出す。


「雷神の怒りよ、闇の雷よ! 敵を貫け! 雷鳴の裁き(サンダーボルト)!」


 指先に集めた雷撃を、ゴーレムに突き刺さったままの剣めがけて叩きつける。

次の瞬間、剣に宿っていた魔力と雷が共鳴したみたいに、空気がビリビリ震えた。


 やばい。これ、想像してたより出力が高い。

俺は反射的にエレナの方へ駆け寄り、そのまま抱きかかえるみたいに押し倒した。

エレナが真っ赤になって俺を見上げた瞬間、背後で視界が真っ白になるほどの大爆発が起きた。


「何が起きたのですか?」


「おそらく、エンチャントしてた魔法の剣の魔力と雷が融合して、盛大に爆発したんだろうな」


俺は立ち上がって、エレナに向かって手を差し出した。

エレナは少しだけ顔を赤くしながら、その手をそっと掴んで立ち上がる。


「これで終わりましたわね」


あああああああああ、これ完全にフラグだわ。

エレナがフラグ立ててくれた。


「エレナ、それフラグだ!」


「フラグってなんですの?」


エレナが首をかしげたところで、動きが止まっていたゴーレムの岩の装甲が、バキバキと音を立てて外れていく。

中から現れたのは、青白く光を反射する金属の身体をしたゴーレムだった。

さっきまでの鈍重な石像とは違って、見ただけで「質が違う」と分かる。


「やっぱりフラグじゃねえか。二回戦かよ、まったく」


「わたくし、何かやっちゃいましたか?」


「仕方ないってやつだ。エレナがお約束な言葉を言ったから、お約束な出来事が起きただけだ。気にするな」


「気にいたしますわ」


俺の剣は、さっきの爆発で見るも無残にひびだらけになっていて、とても使い物になりそうにない。

俺はそれを一度鞘に戻し、腰に下げていたショートソードを抜いた。


その瞬間、金属ゴーレムの目がぎらりと光り、口元とも胸元ともつかない部分からエネルギー波が俺たちに向けて放たれた。

反射的にエレナの腕を掴み、跳躍(ジャンパー)で横へ思い切り飛ぶ。


さっきまで立っていた場所を、白い光の奔流が薙ぎ払った。石床が抉れ、熱気が肌を刺す。


どうやら、マジでつらい戦闘になる予感がしてきた。



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