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ANgelic of the Dead  作者: 書庫
三章--ヴァルストーク砦攻略戦--
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第十七夜:夜明けの道は、共に 前編

「光よ、イルルミナ!」

ジークが詠唱すると、彼の右手に淡い光が灯り、周囲を明るく照らした。

ランタンよりも遥かに視界が開け、水路の奥まで見通せる。


ヴァルストーク砦、地下水路。

部屋の片付けを終えた五人は、フォスターが遭遇したという

『言葉を話すゾンビ』の元へ向かっていた。


「なぁジーク」

先頭を歩いていたフォスターが、不満げに話しかける。


「何?」

ジークは最小限の動きでフォスターに視線を向けた。

手元には相変わらず光の魔法が灯っている。


「お前、そんな魔法使えるなら、最初から使ってりゃよかったじゃねぇか」

むくれたフォスターの言葉に、すぐ横から冷たい視線が突き刺さった。


「……阿呆なのか?」

ミルベーナがまるで呆れ果てたようにフォスターを見下ろしている。


「はぁ!?なんだよテメェ!なんでそうなるんだよ!」

フォスターは派手なオーバーアクションで抗議するが、

ミルベーナの表情は微動だにしない。


リージュが慌てたように二人を見比べる。


「……あのね、フォスター」

ジークが静かに口を開いた。


「あの時、僕たちは逃げてたんだよ?

こんな光を灯してたら、『ここにいます』って言ってるようなものじゃない?」


「……あー……なるほど」

フォスターは一瞬キョトンとした後、腕を組んで深く頷いた。


「ところで、なぜ君が案内しているんだ?」

ミルベーナがジークに問いかける。


「ん? あの時は地図を持ってたけど……フォスは方向音痴だからね〜」

ジークは軽く肩をすくめながら答える。


「きゅっきゅ、きゅーきゅきゅーきゅっ!」

フェリオがまるで言葉を話しているかのように鳴いた。


「フェリオ!テメェ今バカにしやがったな、なんとなくわかんぞ!!」

フォスターがくってかかるが、フェリオは素早くジークの胸元へ飛び込んで避ける。


「はいはい、フェリオもあんまりフォスをいじめちゃダメだよ」

ジークが軽くあしらうと、フォスターはさらにむくれた顔になった。


「賑やかですねぇ」

フォルスティンが肩をすくめながら微笑む。


「うん、なんだか楽しいね」

リージュも自然と笑みを浮かべた。


そんな風に穏やかに歩を進め、奥へと進む一行。

その時だった。


「……何か匂うね、結構キツイ匂い」

ジークが鼻を覆った。嗅覚の鋭い種族には相当厳しい臭いなのだろう。


「あたしも、鼻が曲がりそう……」

リージュも同様に鼻を押さえる。


「そうか、ジークたちにはキツいか……ここで待つか?」

フォスターが気遣うように振り返る。


「大丈夫、明かりが必要でしょ」

「……あたしも、我慢する」

二人は少し苦しげながらも、同行を続ける意思を示した。


「気分が悪くなったらすぐに言うのよ」

ミルベーナも念を押す。


その時だった。


「……いた、アイツらだ」

フォスターが低く呟く。


一行は足を止め、フォスターが指し示す方向を見た。


「二人はここにいて、明かりも十分届くわ」

ミルベーナがそう言うと、ジークとリージュは頷き、その場に留まる。


倒れ込んでいる何かの遺体。フォスターが大斧の柄を使って仰向けにした。


「……顔の皮膚が溶けている……頭蓋まで見えているぞ」

ミルベーナが眉をひそめる。


「うわぁ、これは痛々しい。どれどれ……」

フォルスティンが遺体の衣服をまくり上げた。


「身体の方が酷いな……やはり薬品の類か?」


「恐らくそうでしょうねぇ」

フォルスティンは愉快そうに微笑みながらも、遺体の状態を丁寧に観察する。


「飲み込んだ箇所から全身に広がっている……典型的な薬物反応ですねぇ」


「他の遺体はどうだ?」

ミルベーナがフォスターに尋ねた。


「こっちも似たようなもんだぜ」

フォスターは残りの遺体を一つずつ仰向けにしながら答える。


「……あそこを見ろ」

ミルベーナが天井の隅を指差す。


全員が目を向けると、そこにはぽっかりと空いた穴があった。


「あの穴……大きさ的に先程の部屋のものでしょうか?」

フォルスティンが興味深そうに覗き込む。


「恐らくそうね。……それにしても、そっちの遺体は腐敗の進行が違うわね」

ミルベーナが静かに観察する。


遺体は三体。そのうち最も酷い状態のものでも、死後七日といったところか。


「ったく……胸くそわりぃぜ」

フォスターが舌打ちしながら吐き捨てた。


ミルベーナは黙って遺体を見つめたまま、思考を巡らせる。

(人体実験……何を作ろうとしていた?治療薬?それとも六命に関わるものか?)


だが、答えを出すにはまだ情報が足りなかった。


「なぁ、この人たちどうする?」


フォスターが目を伏せ、低い声で問う。

「流石に外までは運べないぞ」


死の匂いが染みついた空間で、彼らは沈黙に包まれたまま立ち尽くした。


「燃やすしか……ねぇよな」

フォスターが大斧を担ぎながら、遺体を見下ろす。


「軽く言うな」

ミルベーナが短く制した。


「炎で焼けば、ここが瘴気に包まれる。下手に燃やしたら、住民に被害が出る」


フォスターは不機嫌そうに舌打ちする。

「じゃあどうすんだよ。放置するのか?」


「……ジーク!なんとかできそうか?」


ミルベーナが振り返る。


「え? ぼ、僕!?」


ジークは驚きながらも、遺体を見つめている。


「遠いと話しづらいでしょう」


フォルスティンがジークたちの元へ歩いて行った。

軽く指を鳴らすと、空間に揺らぎが走る。


「えっ……匂いが消えた?」

リージュが鼻をひくつかせる。


「幻術で感覚を少し鈍らせました。これで匂いに邪魔されないでしょう」


「便利なもん持ってんな……」

フォスターが呆れたように言う。


「ジークの天使の力なら、瘴気を抑えて浄化できるかもしれねぇ」


「うーん……やったことないからわからないけど……」

ジークは少し悩む。


「とりあえず、遺体をまとめましょうか」


一同は遺体を一カ所に集めた。

ジークは深く息を吸うと、膝をつき、ゆっくり手をかざした。


「……できるかな……?」


彼は目を閉じ、祈るように両手を組む。

静寂、息遣い、水音が聞こえる。

しかし、何も起こらない。


「無理、かな……」


肩を落とし、立ち上がろうとしたその時だった。


遺体に触れた瞬間、ジークの指先に青白い炎が灯る。


「……あっ……!」


炎は徐々に広がり、遺体を優しく包み込む。

しかし、炎は熱を持たず、静かに揺れていた。


瘴気が発生しない。ただ純粋な光の炎が、死者を清めていく。


「これは……浄化の炎か?」


ミルベーナが目を細める。

フォルスティンも少し驚いたように目を丸くしていた。


「すげぇじゃねぇか、ジーク!」


フォスターが肩を叩こうとしたが、ジークは動かない。

彼の目には涙が滲んでいた。


「……苦しいよ……」


静かな声が、地下水路に響く。


「苦しみが伝わってくる……みんな、助けてって、言ってる……」


ジークの力は性格と相まってかなり感情に突き刺さる。

薬の実験台にされた人たちの苦しみ、痛み、辛さ、

全てが彼に伝わってしまうようだ。


ジークの頬を伝う涙が、青白い光に溶けていく。

やがて、炎は完全に遺体を包み、塵へと還した。

水路には、ただ静寂だけが残った。


「ジークさん……」

リージュがそっと彼の背中に手を置く。


「……ごめん、大丈夫。もう終わった」

ジークは涙を拭い、立ち上がる。


「外、出ようか」


静かに呟いた彼を、皆は黙って見守りながら、水路を後にした。

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