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ANgelic of the Dead  作者: 書庫
五章--閉ざされた国、ファルムス帝国--
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第百四十七夜:なんと言う連携……!?

「はーっはっはっはっ!!!神成走破かんなりそうは!走破!走破ぁー!!」

雷鳴のような声と共に、閃光が戦場を駆け抜けた。


地を這っていたネクロスが、触れられた瞬間に砕け散る。

骨も肉も関係ない。ただ“そこにいた”ものが、存在ごと消し飛ぶ。


視界の端で、何体もの影が吹き飛んでいく。


「ロ、ロゼリアさん、凄いね。

でも、さっきと技名違くない?」

走りながら、リージュが思わず呟く。


前方では既に、紫がかった靄が切り裂かれ、道が開かれていた。


「エンゴウから戦力としてなら一国を壊滅出来るほど、と聞いていたが……」

アランがわずかに眉を寄せる。

「少し五月蝿うるさいな」


「……なんか、ロゼリアさんだけで、よくない?」

ジークが、周囲に散っていくネクロスの残骸を見ながら言う。


その言葉に、間髪入れず答えが返る。

「調査には向いてない」

即答だった。


迷いも、冗談もない。


前方。

雷の軌跡が走った場所だけ、空気が薄くなる。

瘴気が、散っている。


「ロゼリア殿のおかげか、もやが晴れてきたな」

ミルベーナが目を細める。


その視線の先。

――いくつもの“塚”が、並んでいる。

黒く、歪な、小さな山。


「……あそこが、調査の死塚しにづかか?」

誰にともなく、そう呟いた。



――七日前


帝国死部隊トーデスヴァハト》。


「調査先には前線基地を敷く」

アランの声は、いつも通り淡々としていた。


机の上に広げられた簡易地図。

指先が、丘の位置をなぞる。


「ここが拠点だ。死塚からは一定距離を保つ」

「道のりは約一日。調査を三日と予定。帰路に一日」

「休息を含め、六、七日の行軍となる」


短く、だが正確な説明。


「長期任務だな」

腕を組み、ミルベーナが低く言う。

「行くのは、私たちだけか?」


「いいや」

アランは視線を上げないまま答えた。


「我々は天使部隊として、調査地までは力を温存する」

「同行するのは、オルセラ将軍の部隊だ」


その言葉に、ジークが顔を上げる。

「オルセラさんの……と、言うことは、獣王隊の人たち?」


「ああ」

短い肯定。


ジークはこの数ヶ月、オルセラ将軍より直々にその部隊と何度も手合わせをしていた。

荒々しく、だが統率は取れている連中だ。


「前線基地までの掃討と護衛を担当させる」

「我々は、内部調査に専念する」


その時だった。

「ただエンゴウからの要請で――」


『スパンッ!』

乾いた音。


アランの言葉を遮るように、横から飛んできたものが額に当たる。

スリッパだった。

リリアがソレを持ち、腕を組んで立っている。


「はい、もう一回」

一言だけ。


アランは、ほんの一瞬だけ目を閉じた。

そして、何事もなかったかのように続ける。


「……陛下からの要請で、防衛部隊も残す」


空気が少しだけ緩む。


「防衛部隊?」

誰ともなく、言葉が漏れる。


「《帝国死部隊トーデスヴァハト》の治安維持と、市街の安定のためだ」


アランが資料を軽く叩く。

「全戦力を外に出すわけにはいかない。だから今まで調査も出来なかった」


「……まぁ、そりゃそうか」

フォスターが肩をすくめる。

「行方不明者の捜査もあるし、巡回、意外と効いてるみたいだからな」


その一言に、わずかに沈黙が落ちた。

アランは否定しない。

ただ。


「残る者は何か有れば、無理にでもここを守れ」

とだけ言った。


「誰が残るの? 流石にオイラ、行かないよね?」

プルワが不安そうに聞く。


「王都に残る者は……」



――現在


地面を蹴る音が重なる。


前方。

瘴気の薄れたその先に。


大小いくつもの“口”が、ぽっかりと開いていた。


その奥から。

また一体。

ゆっくりと、這い出てくる。


「……うわっ」

リージュが息を呑む。


ロゼリアの雷が、再び走る。

閃光。

轟音。

そして、破砕。


だが。

それでも。


“出てくる”。


「まさに“巣”だな、蟻の巣。あの中にどれほどネクロスが居るのか……」

ミルベーナが低く呟く。


アランは、視線を逸らさない。

「無尽蔵に現れるから調べる、その為の調査だ」

ただ、それだけを言う。



「止まれ」

短く、鋭い声だった。

アランの一言で、前へ出ていた足がわずかに揃う。


その先。

一際大きな“塚”が、口を開けていた。


他のものとは明らかに違う。

地面が抉れ、ぽっかりと開いたその入口は――もはや洞窟だった。


黒く、深い。

奥が、見えない。


「気味が悪いな……」

ジークが低く呟く。


丘の上からも見えていた最大級の死塚しにづか

間違いなく、ここが“本命”だ。


「合図を出す」

アランは視線を逸らさずに言う。


「出てくるネクロスの掃討を頼む」

周囲の気配を読むように、わずかに目を細めた。


「任せろ」


応えたのはミルベーナ。

「私が行く」


次の瞬間には、地を蹴っていた。

空気を裂くように、身体が浮く。


同時に――


死塚の奥から、何かが“反応した”。


ズルリ、と。

影が這い出る。

一体、二体ではない。


一斉に。

まるで巣を守るように、ネクロスが吐き出される。


「来るよ!」


リージュが叫ぶよりも早く。

四つ足の異形が、地面を蹴って飛び出した。


速い。


牙を剥き、一直線にミルベーナへ殺到する。


「ミルベーナ、無理しないで!」

ジークの声が飛ぶ。


だが。

その声は、すぐに掻き消された。


囲まれる。

四方から。

だがミルベーナは止まらない。


「……千光剣・凪」


静かな声。


次の瞬間。


空間が、裂けた。


無数の斬撃が、同時に走る。

視認できないほどの速さで、ネクロスの身体が刻まれていく。

肉が、骨が、音もなく崩れ落ちる。


そして。


一歩、踏み込む。


「連撃・一閃!!」

振り抜かれた一撃。


その軌跡が、衝撃波となって広がる。

入口付近に群がっていたネクロスが――


まとめて、吹き飛んだ。


周囲が、一瞬だけ静まる。


「流石ミナだね」

リージュが苦笑いを浮かべる。


「あたしたち必要かな?」

軽口のような言葉。


だが、その直後。


『ドンッ!!』


頭上で、爆ぜる音。

空気が震える。


それは“合図”。

ロゼリアへ向けたものだった。


だが――


「はーっはっはっはっ!!!」


まだ暴れている。

雷の軌跡が、縦横無尽に駆け巡る。

ネクロスが、次々と弾け飛ぶ。


止まらない。

止まる……気がない?


「……聞こえてないなぁ、ロゼリアさん」

ジークが顔をしかめる。


その時だった。


丘の上。

一人の影が、大きく身を乗り出した。


「合図ですよー!左遷天使ー!!」

響き渡る声。


「一旦、止まらんかーーーーい!!!!!」

場違いなほど大きなツッコミ。


だが。

その声だけは――

届いた。


ピタリと。

雷の軌跡が止まる。


「……あ?」


ロゼリアが振り返る。

「ロ、ロミナ殿……」


その瞬間。

戦場に、奇妙な静寂が戻る。

丘の上。


腕を腰に当て、肩で息をする女性。

ヴァルカンの街で出会ったロミナだった。


「君も大変だな」

隣に立つオルセラ将軍が、低く笑う。


「はい……お恥ずかしい限りで……」

ロミナは深く息を吐く。


「ほんと、ちょっと目を離すとすぐこれなんですから……」

その言葉とは裏腹に、どこか慣れている様子だった。



下では。

ネクロスの気配が、ほぼ消えていた。


「……静かになったな」

ミルベーナが剣を下ろす。


まだ瘴気は濃い。


だが、表層の脅威は一掃された。


「いいだろう」

アランが前に出る。


視線は、ただ一つ。

目の前の“穴”。


「ここからが本番だ」


誰も、言葉を返さない。

必要ない。

わかっている。


その中に何があるのか。

わからないからこそ。


「行くぞ」


低く、告げる。

踏み出す。

光の届かない、闇の中へ。


天使部隊は――

死塚しにづかの内部へと、足を踏み入れた

※2026/4月〜6月の間、どこかで1〜2週間ほど執筆をお休みします。(引越し予定)

それ以外はいつも通り、更新日は毎週火、木曜日の11時更新となります。


【2025年3月31日、第一夜〜第三夜 改稿リライト】リライト

現在第一夜〜第三夜の文章と構成を全面的にリライトしました。

以前のバージョンを読んでくださった方も、改めて楽しんでいただけたら嬉しいです。


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https://x.com/r5mswm?s=21&t=YDHDT292BvtoU2Xhs0cHWQ

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