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ANgelic of the Dead  作者: 書庫
五章--閉ざされた国、ファルムス帝国--
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第百十四夜:報告

ロゼリアは普段の浮ついた様子とは打って変わった声音で口を開いた。


「本日収容された二名だが、噛み傷は見当たらず。

規定に伴い、ネクロスと接触した者は七日間の隔離処置が取られる。

感染の兆候が無ければ、その後解放される予定だ」


壁に背を預けたまま、淡々と事務的に続ける。


抑揚の少ないその口調は、彼女の登場時に放っていた独特な話し方とはまるで違う。

部屋にいた誰もが、その落差に一瞬だけ呼吸を飲んだ。


だが、次に言葉を発したフォスターの声音は、どこか苛立ちを含んでいた。

「規定?……この街じゃ噛み傷も無かったのに、七日も収容されんのかよ?」


それは納得できないという意思の表れだった。


ロゼリアは視線を伏せたまま、顔の半分を髪で隠していた。表情は読めない。

「この街だけではない。ファルムス帝国全域の規定だ」


「帝国全域……つまり、ここまで通ってきた町や村でも、同じ処置がされていたということですか?」


ジークの問いに、ロゼリアはわずかに首を動かして肯定した。


「ああ。最近はイスナーヴより向こうのホムラノやカガリビには顔を出せていないが……規定は変わらない。

本国を含め、皆がこれに従っている。あちら側はアストン神父に任されているが」


「……マジかよ」


ロゼリアの口から出たその名に、フォスターが眉をひそめ、低く呻くように呟いた。

隣で、リージュも小さく俯く。


その沈黙を察してか、ロゼリアが視線を上げる。

「どうしたのだ?」


その問いに、しばし空気が張り詰めた。


視線が交差し、誰が口火を切るか逡巡するような間。

やがて、フォスターが重く、口を開いた。


「アストン神父は……死んだ。オレが、粛清した」


空気が弾けるように変わった。


「……なんだと!?」

ロゼリアが瞠目し、思わず数歩前へ詰め寄った。


「理由は言わなかったから、分からねぇ……。ただ、村人を毒で、皆殺しにしたんだ」


フォスターの言葉に、ロゼリアが怒気を含んだ声で食い下がる。

「何故だ!アストン神父は……誰にでも慈悲を捧ぐ、敬愛される方だぞ!!」


その瞬間、リージュが前に出た。

「やめて!!」


震える声で、彼女が叫んだ。

「……あの人は、もう、疲れ切ってた。

顔を見れば分かった。

理由も、何も話してくれなかった。

ただ……ただただ、許しを乞うだけで……」


その声には、かつて自分を救ってくれた人を思う、痛切な想いが滲んでいた。


リージュの言葉に、ロゼリアの手が静かにフォスターの胸元を離れる。

「……何故だ……どうして……こんな……」


彼女の肩が、かすかに揺れていた。


その背にあるのは、怒りでも憎しみでもない。

深い、悲しみだった。


アストン・フォーグナー。

彼女にとっての“この地の天使なかま”は、既に壊れていた。

心が、だ。


理由は語られず、真実は未だ霧の中にある。

けれど――その結末だけは、否応なく現実となって眼前に突きつけられていた。


しばらくの沈黙ののち、フォスターは口を開き、カガリビで起きた出来事について語り合った。

すべてを共有するように。


過去と、喪失と、今なお残された“痛み”の形を。

更新日は毎週火、木曜日の11時更新となります。

元のペースに戻せそうになり次第、お知らせいたします。


【2025年3月31日、第一夜〜第三夜 改稿リライト】リライト

現在第一夜〜第三夜の文章と構成を全面的にリライトしました。

以前のバージョンを読んでくださった方も、改めて楽しんでいただけたら嬉しいです。


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https://x.com/r5mswm?s=21&t=YDHDT292BvtoU2Xhs0cHWQ

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