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ANgelic of the Dead  作者: 書庫
五章--閉ざされた国、ファルムス帝国--
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第百十三夜:困った天使

※次回火曜日ですが、ちょっと更新出来るか微妙です。

最悪「百四夜」とだけ書いて、中身を後日更新するかも知れません。

なるべく早く対応して、間に合う様にいたします!

「お夕飯、美味しかったね」

リージュが満足そうに息をつき、椅子に深く腰を下ろした。


一行は夕食を終え、宿の一室でロゼリアの到着を待っていた。

卓上には空になった皿と湯気の残るカップ。

先程までの緊張が少しだけ緩んだ、穏やかな時間だった。


「この辺りまで来ると、宿の食事もだいぶマシになりますね。もちろん宿にもよりますが」

フォルスティンが穏やかに補足する。


「ファルムス本国までは、あとどれくらいなんですか?」

ジークの問いに、フォルスティンは即座に答えた。


「明日出発すれば到着できます。この街が最後の中継地点ですね」


その言葉に、ミルベーナは少し考え込むように視線を落とす。

「……そうか。では、昼発でも間に合うか?」


「少し馬車の速度を上げれば、夜までには。どうかされましたか?」


「この辺りのネクロスは腐敗が強いらしくてな」

ミルベーナは淡々と説明した。

「武器屋の主人に、リージュ用の武器を見繕ってもらっている」


「あたしの?」

リージュが目を瞬かせる。


「今の短刀がどこまで保つかわからない。

腐敗に強い、この地方の手法を使った、女性でも扱いやすい武器頼んだ。

朝、受け取りに行きたい」


「あー、あのおっちゃんのとこな」

フォスターが頷く。


「今日の件もあったし……武器を選ぶのに時間を取るのは悪くないと思う」

ジークも同意する。


「私は構いませんよ」

フォルスティンは椅子の背もたれに体を預け、片膝を抱えながら続けた。

「昼までに出発できれば問題ありませんし、一日滞在しても支障はありません」


「すまない、助か――」


ミルベーナが言い切る前だった。


『バリンッ!!』


豪快な破砕音と共に、窓ガラスが吹き飛んだ。

次の瞬間、クルクルと空中で一回転しながら人影が室内に飛び込み、派手に着地する。


……ロゼリアだ。


「我!遅参の折、参上!!」


沈黙。


全員が一斉に固まった。

窓は完全に破壊され、床にはガラス片。

ロゼリアの腕や肩にはガラスが数本刺さり、うっすら血も滲んでいる。


誰も、すぐには言葉を発せなかった。

ツッコミどころが、多すぎた。


「……」

「……」

「……えっと……」


最初に動いたのはフォルスティンだった。

ゆっくりと立ち上がり、割れた窓とロゼリアを交互に見て、深くため息をつく。


「……ロゼリア天使。質問してもよろしいですか?」

「うむ!許可しよう!」


「どうして“普通に扉から入る”という選択肢が、貴方には存在しないのですか?」

扉の方を指差し引き攣らせた笑顔が滲む。


「ふっ、それはだな――」


「あと血!」

リージュが慌てて立ち上がる。

「血出てるし!ガラス刺さってるし!」


「問題ない!」

ロゼリアは親指を立てた。

「この程度は我が右眼が疼く程度だ!」


「それは問題大アリだろうが!!」

フォスターの即ツッコミが部屋に響いた。


こうして、穏やかだった夜は、盛大なガラス音と共に完全に終わりを告げた。



正直、もっと大騒ぎになると思っていた。

窓が派手に割れて、人が飛び込んできて、血まで出ているのに。


でも、次に起きたことは拍子抜けするほど淡々としていた。


宿屋の扉がノックされ、年配の宿の主人さんがひょいと顔を出す。

割れた窓と床のガラス片を見るなり、ため息ひとつ。


「……ああ、またか」


そのまま奥へ引っ込み、戻ってきた手にはホウキとちりとり。

無言でロゼリアにそれを手渡した。


「ほら、いつもの。割れた分は簡易板で塞いどいたからな」

「うむ!感謝するぞ、主人!」


ロゼリアは血が滲んだまま、手際よくガラスを掃き集め始める。

動きが妙に慣れている。

宿主も慣れている。


「修理代は《帝国死部隊トーデスヴァハト》に回しとくから」

「承知した!」


あっという間に床は片付き、窓も仮板で塞がれた。

まるで“日常業務”だった。


僕たちは誰一人、状況に追いつけていなかった。



「さて、本題に入ろうか」


ロゼリアが振り返る。

額には、まだしっかりと大きなガラス片が刺さったままだ。


「いや、まだ額にでっけぇ破片刺さってんぞ」

フォスターの反射的なツッコミが飛ぶ。


「問題ない!」

ロゼリアは胸を張る。

「我が右眼の疼きが警告しておるのみだ!」


「それが問題だっつってんだよ!」


「青い人、カッコいいなぁ〜」

プルワが目を輝かせる。


「少年!」

ロゼリアはビシッと指を立てた。

「我は特別な訓練を受けている!良い子は決して真似をするな!」


「子供は真似するから言ってんだよ!」

フォスターが頭を抱える。

「つーかオレをツッコミ役に固定すんなー!」


状況についていけているのは、フォスターとフォルスティンくらいだった。

フォルスティンは紅茶を口に運びながら、どこか達観した表情で眺めている。


「……ところで」

ミルベーナが慎重に割って入った。

「“本題”というのは、今日の被害の件か?」


「ああ」

ロゼリアの声色が変わる。

先程までの大仰おおぎょうさが嘘のように消え、表情が引き締まった。


「ネクロスの侵入経路、その後の処理、そして――この付近で“起き始めている異変”についてだ」


部屋の空気が、静かに張り詰める。

いつもの奇行の裏に、彼女が“常駐天使”として立ち続けている理由が、ようやく見え始めていた。

更新日は毎週火、木曜日の11時更新となります。

元のペースに戻せそうになり次第、お知らせいたします。


【2025年3月31日、第一夜〜第三夜 改稿リライト】リライト

現在第一夜〜第三夜の文章と構成を全面的にリライトしました。

以前のバージョンを読んでくださった方も、改めて楽しんでいただけたら嬉しいです。


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https://x.com/r5mswm?s=21&t=YDHDT292BvtoU2Xhs0cHWQ

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