表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ANgelic of the Dead  作者: 書庫
五章--閉ざされた国、ファルムス帝国--
106/188

第九十九夜:男のロマンだ!

遠くから、泉のせせらぎと、かすかな声が聞こえてくる。

「よし……ようやく近くまで来たぞ……」

フォスターが、藪をかき分けながら小声で囁いた。


「兄ちゃん、あそこだ、あそこ!」

プルワも目を輝かせながら隣でしゃがみこむ。


二人の顔には、もはや探検家のような緊張と期待が入り混じっていた。


「しかし……数日寝込んでたからか、久々の水浴びは良かったな……」

ミルベーナの声が聞こえる。


フォスターは思わず耳をそばだてた。

「き、聞いたかプルワ……!?水浴び、だと……!!」

「す、すげぇ……!お姉ちゃんたちの神聖な儀式だね!」

「そうそう、“神聖”な……いや、“ありがたーい”儀式だ……!」


二人は息を殺して、藪の隙間に顔を寄せる。

ドクンドクンと鼓動が早くなる。


リージュの声が届く。

「下着どうする〜?」


フォスターの瞳がギラリと光った。

「きた……!下着をどうする、だと!? プルワ、これは事件だ!!」

「事件!?どういう意味!?」

「つまり……今、あの向こうでは――“着替え”が行われているんだ!!」


「うぉぉぉぉ……!!」

二人のテンションは、もはや限界突破。


フォスターは慎重に藪をかき分け――

(これが男の使命ってやつだ……!)


「自分で畳む。置いておいてくれ」

ミルベーナの声とともに、タオルが――


――ぶわっ、と大きく広がった!!


「き、きたああああああ!!!」

フォスターの脳内に祝福のラッパが鳴り響いた。

プルワも横で「まぶしい!なんか光ってるー!」と興奮気味。


次の瞬間。



ふぁさっ――。



タオルが軽やかに舞い、陽光を受けてひらりと落ちた。

フォスターとプルワは息を呑む。


……なんともスポーティな姿のミルベーナだった。

下着、か? いや違う。


どちらかというと、部屋着だ!?


ノースリーブに短パン――。

いつもの可憐な鎧姿とはまた違う、動きやすく健康的なその姿は、

それはそれで、別の意味で目の毒だった。


だが、フォスターの中で、何かが音を立てて崩れた。


「……あれはあれで良いけどよ……なんだよ……期待して損したぜ……」

ため息まじりの愚痴が漏れる。


隣のプルワはキラキラした目でうなずいた。

「オイラのお姉ちゃんも、あんな格好よくしてたよ!」


「お前なぁ……フォローになってねぇぞ……」

肩を落とすフォスター。


そのとき、リージュの声が響いた。

「あれ? そういえばロゼリアさん、どこいったんだろ?」


……確かに、さっきまで派手にポーズを決めていた“蒼穹の守護天使”の姿が見えない。


「……あそこだ」

ミルベーナが、左手の親指で“こちら”を指差していた。


「え?」


ガバァッ!!


藪の中から何かが飛び出した。

猫のような軽やかさで、二人の頭をがっしり掴む腕――!


ゆっくりと振り返るフォスター。そこには、笑顔のマグナ・ロゼリアがいた。

その笑みが、やけに神々しく見える。


「……やっても構わないか!?」

朗々とした声。まるで戦場での確認のようなトーン。


ミルベーナは髪をタオルで拭きながら、冷ややかに言った。

「プルワは離していいから、フォスターはキツめで頼む」


「承知した!!」


ロゼリアが高らかに右手を掲げる。

青い稲妻が指先に宿る。


「必殺!!――エレクトリックサンダー!!!」


バリバリバリバリバリバリバリバリ!!!!


「んぎゃあああああああああああああ!!!!」


雷光が空を裂き、地面が焦げる。

鳥たちが一斉に飛び立ち、空には黒煙が立ちのぼった。



……数分後。


髪がチリチリになったフォスターが、地面に正座していた。

顔は煤け、手には小さな湯気。


「お、男のロマンが……焼け落ちた……」


プルワが心配そうに覗き込む。

「に、兄ちゃんが焼け焦げてるよ……」


フォスターは空を見上げ、どこか遠い目をした。

「……いいんだ、プルワ……ロマンってのはな、命懸けなんだよ……」


ロゼリアは腕を組み、誇らしげに言った。

「ふっ、浄化完了!!」


その隣でミルベーナが小さくため息をつく。

「……まったく、気配に気付かないと思ったか?」


湖畔に、静かな風が吹いた。

雷鳴のあとに訪れる、妙に爽やかな空気だけが、フォスターを慰めてくれていた。

更新日は毎週火、木曜日の11時更新となります。

元のペースに戻せそうになり次第、お知らせいたします。


【2025年3月31日、第一夜〜第三夜 改稿リライト】リライト

現在第一夜〜第三夜の文章と構成を全面的にリライトしました。

以前のバージョンを読んでくださった方も、改めて楽しんでいただけたら嬉しいです。


Xアカウント

https://x.com/r5mswm?s=21&t=YDHDT292BvtoU2Xhs0cHWQ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ