魔塔主様の1番弟子
アエラスはデビュタント前なので祝賀会には参加ができず、部屋でぷんぷんしているかもしれません。
姉上とアスが準備をしてくれた俺の誕生日を祝う祝賀会。
きらびやかな装飾を見ても、美味しそうな料理の数々を見ても、俺は今までにこの祝賀会を経験したことが有るすら思い出せない。
ただ貴族達の目を見ると指先が震える。
何かをされた訳では無いと思うのに、抑えようと思っても難しかった。
けれど、王族として悟られないように仮面をかぶり表情を殺すことしか出来なかった。
そんな事を考えてるとは、この会場にいる全ての人は気づいてないだろう。
もちろん、父上達も。
貴族達の挨拶が、流れるように続いていく。
どれくらいの人々が祝辞をしてくれたのか分からないけれど。
きっと次の人で最後だ。
早く自分の部屋へと戻りたい。
「次で最後となります、魔塔よりお越しになられました魔塔主のヴァルカス様、および時期魔塔主候補のノクス様」
父上よりは年上であろうヴァルカス様、父上よりも若く見えるのに遥かに落ち着いて見える。
幼い頃に城へと来ていたヴァルカス様に色々なお話をご教授して頂いたような気がする。
そして魔塔主様の、半歩うしろを歩く人物……フードを深くかぶって顔が見えないが、体格的に子どものように見える。
「シリウス殿下、立派になられましたな。」
ヴァルカス様の笑顔が俺にむけられた。
俺はヴァルカに笑顔で頷いた。
「シリウス殿下、本日は我が愛弟子の時期魔塔主候補であるノクスを紹介したく連れてまいりました。」
俺が頷くと、ヴァルカス様がその人物に挨拶をするように促す。
その人物が一歩前に出ると頭を下げる。
「お……お初にお目にかかります、私はヴァルカス様が一番弟子のノクスと申し上げます、シリウス殿下の16回目のお誕生日を心よりお祝い申し上げます。」
胸に添えられた手が小刻みに震えている。
その姿をみて、何故か心が騒ぐ。
この状態が、なんなのか分からない……分からないけど体が勝手に動いていた。
「ねぇ、なんでフードを脱がないの?」
優しく聞いたつもりだった、けれど何故かガタガタと震えだした。
「申し訳ありませんでした……」
そう言いながらフード脱いだ。
フードの下からは、ふわふわと柔らかく揺れるヴァイオレット色の髪。
確信はない……けれど俺の中の何かがこの少年を知っていると心を揺さぶる。
「俺達は、本当にはじめましてなのか?」
誰にも聞こえないほど小さな声だで呟いたはずなのに今、目の前にいるノクスという名の少年の前髪から除く星沙ゆ色の瞳が、ゆらりと大きく見開かれる。
「……殿下……覚えておられるのですか?」
唇を歪ませながらノクスは、瞳は潤いをもたらして行く。
やはり、何処かで出会った事があるに違いない、けれどヴァルカス様は俺に初めて合わせような振る舞いだった。
街にお忍びに行った時だろうか?
記憶力は、そこまで悪くはないとはいえ、今なのか繰り返したイツカの時なのかが分からない。
全ての挨拶が、ヴァルカス先生で終わりだ。
父上に断りノクスと少し話をさせて貰おう。
「父上、私はヴァルカス先生の弟子のノクスと少し話をしたいですがよろしいでしょうか?」
父上が年齢も近いようだし好きにするが良いと言い放った時。
姉上が凄い形相で父上を睨みつけながら口をパクパクと動かしている。
「姉上、婚約者様とのファストダンスで会場を盛り上げて下さい、戻ってきたら俺とも踊ってくださいね。」
あ……思わず俺と言ってしまった、誤魔化すように姉様に笑顔を向ける。
「シス!今日はあなたが主役なのよ……それでもシスが望むなら戻ってくるまで会場は、わたくしがしっかりと温めておきますわ。」
俺は父上たちに挨拶をすると、ヴァルカス先生に断りノクスの手を取った。
「俺の話しに少しだけ付き合ってよ。」
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