第19話
トルーニア公爵領南部、クーランベル伯爵領のとある騎士領。
その小さな城には六人の人間がいた。
一人は二十代後半の男性で、ベッドの中にいる。
もう一人は十代半ばほどの少女で、彼女も男性と同じベッドにいた。
その二人を取り囲んでいるのは、四人。
ベッドの中の男性の父親。
ベッドの中の少女の父親。
この地域にある神殿の神官長。
そして銀髪の十代前半の美少女――つまり私は、大きな声で宣言した。
「今宵、わたくしロゼリア・エル・ブドゥーダルは、新郎・新婦による肉体の結合が果たされたことを、今、この場において宣言いたします。ご結婚、おめでとうございます」
私はそう言ってから、笑みを浮かべ、拍手した。
するとベッドを取り囲んでいる男たちも一斉に笑みを浮かべながら拍手する。
この意味分からないシュールな儀式は、この世界の結婚式である。
この世界において、夫婦とは「子作りする男女の番」を意味する。
そのため結婚とは即ち子作り――つまりセックスを意味する。
新郎と新婦がベッドの中で肉体の結合を済ませることが結婚であり、それをみんなで見届けるのが結婚式である。
つまり結婚式とは公開セックスなのだ。
……AVかな?
なんてね。
現実には新郎と新婦が同じベッドに入り、それを確認できた時点で「結婚成立」となる。
この後、実際にセックスが行われるかどうかは二人だけの秘密だ。
なお、翌朝には破瓜の血が付着したシーツが回収され(場合によっては捏造され)、お城のバルコニーに飾られる。
それから城下町や各村々にシーツが運ばれる。
領民たちは花嫁のま〇こから出た血液を見て「おぉ! 領主様のご子息が結婚されたんだ!! これで次代も安泰だ。万歳!!」と大喜びするのだ。
……この世界は変態しかいないのだろうか?
いや、常識を変態だと思う私が、この世界では変態なんだろうけど。
この世界にプライバシーの概念がないことは今更である。
私の初潮とか、何か知らない間に国中に知れ渡っていて、お祭り騒ぎになってたし。
宮廷の家臣たちが把握しているのはまだ分かるとして、地方の封臣たちや、街の商工業者、そして農奴まで私の月経事情を把握している必要、あるか?
……あるか。
私が子供作れないと、大変だもんね。
きっと、私の初潮日がいつまでも公開されないと、社会不安に繋がるのだろう。
姫様の初潮がいつまでも来ないなんて……もう終わりだよ、この国……みたいな。
というわけでブドゥーダル公国の住民はみんな、私の初潮日を知っている。
もう終わりだよ、この国。
ともあれ、結婚にはセックスをする必要があり、それには見届け人が必要だ。
それはできれば第三者、それも身分が高ければ高いほど良い。
今回はそれが私だ。
都合が合えばどうか来て欲しいと言われ、赴くことにした。
翌朝の披露宴では周辺領主が祝いに来るので、私にとっても都合が良かった。
というわけで翌日、披露宴が行われた。
なお、騎士の披露宴はぶっちゃけ大した規模ではない。
学校の教室くらいの部屋に大きなテーブルが置かれ、料理が並べられる程度だ。
騎士の生活水準なんて、富農よりはちょっと上くらいなものだ。
場合によっては魔障石や馬、武器の購入代金で極貧レベルというのもザラである。
「みすぼらしい料理で申し訳ございませぬ。姫様のお口には合わないかもしれませんが」
やや申し訳なさそうに私に言ったのは、花婿の父親――老騎士だった。
この土地の領主である。
私の参加は唐突だったし、そもそも彼の経済力では私に相応しい祝宴を開くことは不可能だ。
「そのようなことはありません。皆様と同じ物を口にすることができて、嬉しく思っています」
これは本音だ。
私は旅をしたら、その地域の地元の人が普段食べている物を食べたい派だ。
むしろ宮殿で食べているような料理が出されたら、げんなりする。
「あなたがわたくしのため、心を込めて準備をしてくださったことは伝わっております」
私は老騎士の目をしっかり見つめてそう言ってから、あえて目を逸らす。
視線の先にあるのは牛肉料理だ。
この世界において牛は非常に重要な財産だ。
農地を耕すこともできるし、乳を絞ることもできる。
だから牛肉を食べることは滅多にない。
食べるとしたら、それはもはや乳も出ず、畑を耕すこともできない、老衰したボロボロの牛だ。
故にこの披露宴で牛肉料理が出ていることは重要だ。
要するに私のために牛を潰して、料理にしたということなのだから。
というわけで私はその労をねぎらうために、「分かっています」アピールをしたのだ。
なお、私も手ぶらで結婚式に来ているわけではない。
祝い金は渡したし、新郎新婦にはちょっとした贈り物を贈っている。
私が来たことによる収支はプラスにはなっているはずだ。
「牛肉のワイン煮込みが私の好物と……よくご存知でしたね」
「姫様のお心遣い、骨身に染みまする」
老騎士は感じ入った様子でそう言った。
私はそんな彼に問いかけた。
「ところで最近はいかがでしょうか? 今年の収穫や魔獣の被害、生活は……」
私は騎士たちに会うたびに投げかけている質問を口にした。
すると老騎士は恭しく、頷く。
「今年は豊作でございました。民心も安定しており、これも全ては公爵様と姫様の……」
まず先に上位主君である父や私への賛辞から入る。
いきなり「マジ生活苦しいです」とか言うと、失政を批判しているように聞こえてしまうからだ。
「しかし最近は物価が上がっており、腰の調子も日に日に……」
だが最終的には「ちょっと苦しいです」という結論に至る。
どんな騎士も似たようなことを言う。これは当然のことだ。
ここで「生活マジ余裕です」とか言うと、「じゃあ次の戦争、任せた!」という流れになってしまうからだ。
騎士たちは基本的に自分にとって益の無い戦争には関わりたくないと思っているので、いざという時に参戦要求を断れるように、日頃から言い訳づくりをしている。
なお、「物価が高い」はみんな口を揃えて言う。
「腰が痛い」系は年寄りの常套句だ。
本当かは知らない。
「おや、そうですか。腰が……」
「ええ、この年になると特に寒さが応えて……」
老騎士あらため腰痛騎士は全力で腰が痛いアピールをし始めた。そのあまりの全力っぷりに私は思わず苦笑してしまった。
「それでは……ジッとしていただけますか?」
「……ジッと? 姫様?」
「動かないでくださいませ」
私はそう言うと腰痛騎士の背中に回り込んだ。
そして彼の背中に手を当て、治癒魔法を発動させる。
「こ、これは……」
「いかがでしょうか? 少しは痛みが和らいでいると良いのですが」
私の言葉に腰痛騎士は腰痛を確認するように、腰を前後に動かした。
そして先ほどよりも背筋を伸ばす。
「先ほどまでの痛みが、嘘のように消え去りました。生まれ変わったかのような気分です。何とお礼を申し上げたら良いか……」
と、元腰痛騎士はかなり複雑そうな表情で私にお礼を口にした。
腰の痛みがなくなったのは良かったが、代わりに「腰が痛い」を言い訳に使えなくなったのだ。
加えて私に恩が出来てしまった。
そして治してもらった手前、文句も言えない。
化かし合いは私の勝ちだ。隙を見せた方が悪いのだ。
「まことに勝手ながら……この恩寵を、上様にも施してはいただけないでしょうか?」
「……おや?」
元腰痛騎士の言う上様とは、彼の直接の主君であるクーランベル伯爵のことだろう。
どういう意味かと私が続きを促すと、彼は続けた。
「実は上様もお招きしたかったのですが、どうにも政務がお忙しいと……いつも、おっしゃられております。もしかしたら、体調も優れないのやもしれませぬ。皆々、心配しているのです。上様のご体型では膝が……おっと」
腰痛騎士はわざとらしい様子で自分の口を押えた。
しかし予想はしていたが、クーランベル伯爵は招かれたが、欠席したのだろう。
私たちも忙しい時は断るが、しかし祝いの言葉くらいは送る。
そういうのもなかったのだろう。
今回だけではなく、いつも。
貴族ほどではないが、騎士も面子や体面を気にする。
後継者である長男の結婚式にすら来てもらえないのは、腹に据えかねるものがあるだろう。
後半はほぼほぼ、悪口であった。
なるほど。
この辺りの領主たちはみんなクーランベル伯爵に不満を抱いていますという告げ口。
それが治療の対価か。
この分だと、バークス=ブドゥーベル家とバークス=クーランベル家の関係性についても、深く理解していそうだ。
全く、食えない爺さんである。
「しかし姫様は本当にしっかりしていらっしゃる。私にも娘がいますが、とても同い年には見えませぬ」
「まあ! 娘さんがいらっしゃるのですね」
「はい。しかしどうにも我儘ばかりで……父親として、公爵様が羨ましい限りです」
「いえ、わたくしもまだまだ未熟者で……」
せっかくの交流の場で政治っぽい話ばかりするのも良くないので、私たちは世間話を開始した。
特に話しても問題のない、世間話の小ネタならいくつかある。
そうこうしていると、入口辺りが少し騒がしくなった。
どうやら、招待客の一人が遅刻してきたらしい。
一人の騎士とその従者が披露宴会場に入って来た。
約二時間の遅刻だ。
なお、この世界は通信状況や交通状況の問題もあるし、そもそも精密な時計があるわけでもないので、この程度の遅刻は遅刻に入らない。
……というか、世界的に見ると日本人が遅刻に対して異常にうるさいだけな気もする。
「いやはや、もう始まっておりましたか。おぉ!!」
遅刻騎士はキョロキョロと辺りを見渡し、そして私を見つけるとわざとらしく声を上げた。
そして大股歩きでこちらまで歩いてくる。
私は僅かに体の向きを変え、半身だけを向けてから、一瞬だけ視線を遅刻騎士に向けた。
「お初にお目にかかります。ロゼリア様」
「……おや?」
私は遅刻騎士に声を掛けられ、ようやく気付いたと言わんばかりの態度で彼に向き直った。
……上の者が下の者に対して「挨拶したい」アピールをするのは、あまり良くないのだ。
彼はつらつらと自分の家系と領地について自己紹介をしてから、私に対して片膝を付いた。
「どうか、姫様。あなた様の美しき御御足に忠誠を捧げるお許しをいただけないでしょうか?」
「構いませんよ」
私はそう答えてから、背後に控えていたデラーウィアに視線を向ける。
彼女はキビキビとした動作で私の前に跪き、靴紐を解いた。
私は靴から足を抜き、騎士に視線を向けた。
「……ありがたく」
遅刻騎士は片手を皿のように、前へ差し出した。
私は彼が差し出した掌に、絹の靴下に包まれた足を置く。
そして手で触れた瞬間、彼はビクっと体を震わせた。
「どうかされましたか?」
「……いえ」
遅刻騎士は先ほどよりもずっと緊張した様子で私の足の甲に顔を近づけた。
そしてわざとらしく、リップ音を立てる。
「まことに恐悦、恐悦至極にございます……」
遅刻騎士は感じ入った様子でそう言った。
先ほどと比較して、私は彼の態度が変わったのを感じた。
彼のように、足の甲へのキスの前後で、態度が露骨に変わる騎士は珍しくない。
私は最初、「もしかして私の足、激臭なんじゃ……」と不安になったのだが、どうやら原因は私の体臭ではないらしい。
原因は魔力だ。
貴族と騎士には魔力の差がある。
それは即ち、騎圧の差であり、戦闘力の差だ。
故に騎士にとって貴族とは強者であり、恐怖の対象だ。
人間にとってのヒグマみたいなものである。
が、しかし女である私は、舐められる傾向があるらしい。
私には理解できないが、“女性貴族”とか“お姫様”という言葉の印象で、強いイメージよりも美しくて可憐なイメージが先行してしまうようだ。
自分で言うのも何だが私は華奢な方だし、見た目も綺麗で、上品なドレスを着ているので、尚更そう感じるのだろう。
クマと聞いて、プーさんとかクマモンをイメージしてしまうものだろうか。
そのレベルじゃなくても、クマ牧場の熊さんはコミカルで可愛らしいので、「可愛いな」と思うのは分からないでもない。
が、ゼロ距離でそのデカい腕と爪を見れば「猛獣だな」と思う。
遅刻騎士の態度の変化はまさにそれである。
魔力感知の精度と外見イメージ、人の脳の錯覚が生み出す現象だ。
……これは私の考察だが、「足の甲にキスをする」という風習はまさに、魔力量の差を見せつけるための儀式なのだろう。
貴族の足に顔を近づけるという行為は、クマに頭を甘噛みされるようなものだ。
逆らう気力も失せる。
「素晴らしき神威に我が体が喜びで打ち震えております」
遅刻騎士は恐怖から来る震えについて、言い訳するように言った。
おそらく、彼にとってもっとも身近な貴族はクーランベル伯爵だろう。
彼の魔力量は伯爵級をやや下回る程度だ。
一方で私は十二歳でありながらも、伯爵級を超えている。
クマと聞いて、ツキノワグマサイズを想像していたら、ヒグマが出て来たみたいなものだ。
なお、公爵級は例えるとホッキョクグマだ。
父は公爵級をやや上回る程度なので、キングサイズホッキョクグマである。
ちなみに私はこのまま順調に魔障石の摂取が進めば、父を超える。
……そんな私を超えているトール君は相当な魔力量である。
成人した時点でどれほどの魔力量になるのだろうか。
「……神威の差は器の差。まさに、今、我が身の矮小さを思い知りました。さすが、姫様。ブドゥーダルの地と血を受け継ぐ者は、違いますな」
遅刻騎士はふらふらとしながら立ち上がると、興奮した様子でそう言った。
この世界では強さは美徳だ。
マッチョ最高!な脳筋男社会であり、弱いことは罪なので、自分たちの支配者の魔力量が多いことは大きな評価点である。
それにクマと違って貴族には理性がある。話していれば騎士たちもそれを理解するので、過度に恐れられることはない。
……しかし、誰と比較しているのやら。
「貴殿の家系は確か……日常では、オスク語を?」
「……はい。私のエイル語は、不足でございましたか」
『いえ、久しぶりにオスク語で会話をしたいと思いました。このまま続けても?』
私が使用言語をエイル語からオスク語に切り替えると、遅刻騎士は目を見開いた。
『ははっ、ご配慮いただき感謝いたします。……しかし大変、お上手ですね』
『言葉が通じなければ、真に心を通わすことはできないと考えております。ブドゥーダルの地の太守として、必要なことです』
この世界では支配階級と被支配階級、主君と封臣で使用言語が異なるなどザラである。
貴族同士でも使用言語が異なることはあるので、複数の言語を操る能力は必要不可欠だ。
もっとも、私の言語習得は半分趣味みたいなものだが。
私はそのままオスク語に使用言語を切り替えたまま、遅刻騎士と世間話を続ける。
「貴殿の領地は白葡萄酒が名産でしたね」
「おぉ……ご存じでしたか」
遅刻騎士は驚きの声を上げた。
白葡萄酒とは、白ワインのことである。
「宮廷の者たちが話題にしておりましたので」
なお、地球においてワインにいろいろなランクがあるのと同様に、この世界の葡萄酒にも等級がある。
そして遅刻騎士の領地で造られている葡萄酒は、どちらかと言えば大衆向けのお酒――つまり安酒だ。
だが酒造家たちによれば、「ロゼリア酒を造るなら安酒が良い」らしい。
確かにいろんな葡萄酒で作られたロゼリア酒を試飲したが、不思議と元の葡萄酒の味と比例して美味しいわけではなかった。
蒸留するとどうしても嵩が減るので、価格も低いワインの方が適している……とのことである(というか、品質の良い高級ワインはそのまま売った方が売れる)。
というわけで、実は遅刻騎士の領地の白ワインは宮廷関係者によって買い付けられ、ロゼリア酒に加工されている。
もっとも、ロゼリア酒の製造方法は秘匿されているため、遅刻騎士視点だと「なんか分からないけど、うちの安酒が最近、売れてるんだよな……」となっている。
と、私が彼の領地について知っていたのはそのような経緯であり、つまりたまたまであって、私が全国の細々とした領地の名産品や地理を全て把握しているわけではない。
だが遅刻騎士は自分の貧乏領地についても、私が気に留めてくれていたと考えたのだろう。
遅刻騎士は非常に感激した様子だった。
「姫様。少し、お耳を……」
「……はい?」
遅刻騎士はゆっくりと、私の耳元に口を近づけた。
そして小さな声で囁く。
「後ほど、お伝えしたいことがございます」
「……では、後ほど」
そして披露宴が終わった後、遅刻騎士は私の下にやって来た。
彼はクーランベル伯爵について、非常に耳寄りな情報を教えてくれた。
結婚式から数日後。
私はクーランベル市へと向かった。
ここを通らないと、内地に入れない……ことはないが、通らないわけにはいかない。
「……ようこそ、おいでくださいました。ロゼリア姫」
小太りの男性貴族――クーランベル伯爵は自分の城の前で、私を出迎えた。
ラザァーベル伯爵は街の入口で出迎えてくれたが……。
まあ、歓迎されていないのだろう。
それもそのはず。
彼は私の即位に反対しているのだ。
言わば反ロゼリア派の中心人物と言えるのがクーランベル伯爵だ。
クーランベル伯爵は分家の筆頭格であり、また私の継母の兄に当たる。
私さえいなければ、ブランシュの後見人として差配を振るうことも、自分自身がブドゥーダル公爵になることだってできるのだ。
私のことを嫌うのは自然だろう。
もっとも、私の存在以前に父とシンプルに仲が悪い節がある。
父は「分家が調子に乗るな」と思っているだろうし、クーランベル伯爵の方が仮にも義兄である自分をないがしろにするとはどういうことだと思っていることだろう。
「急なご来訪でしたので、歓迎の準備ができておりませぬ。ご容赦ください」
「いえ、わたくしも今日中には発ちますから。気遣いは無用です」
暗殺を恐れてビビッて通らないと侮られるが、だからといって長居するつもりはない。
ブブ漬けを出される前に、通り過ぎるつもりだ。
「おや、お急ぎでしたか。それでしたら、事前にお示しした道を通って頂ければ、迅速に移動ができたかと……」
クーランベル伯爵からは事前に「この道を通ってくれ」という要望があった。
もちろん、無視した。
クーランベル伯爵には私たちにそんなことを強制する権限はない。
配慮はするが、遠慮するつもりはない。
が、クーランベル伯爵はそれが気にくわなかったのだろう。不機嫌だった。
しかし私はもっと不機嫌だ。
「そうでしたか。確かにあまり整備された道ではありませんでした」
「田舎の山道です故、当然かと……次からは……」
お前が選んだ道だろ、文句言うな。
と言おうとしたクーランベル伯爵に被せるように、私は告げた。
「わたくしたちの知らない関がございました。賊が勝手に立てたのかと、思いますが……」
クーランベル伯爵の顔色が変わる。
領主が自分の領地に関所を設け、通行税を取るのは領主としての権利だ。
しかしどこに何を設置したかを報告する義務がある……と、ブドゥーダル公国では定められている。
なお、教えてくれたのは遅刻騎士あらため密告騎士である。
「ぞ、賊が勝手に立てたのでしょう。……私の管理不足でございました。場所を教えていただけないでしょうか? 取り締まります故……」
「ご安心ください」
私は満面の笑みを浮かべた。
「すでに私の魔法で破壊しておきました。賊も討伐済みです。……検分、されますか?」
関所はぶっ壊して、関所の兵も殺しておいたぞ。
首、確認するか? 知ってる顔だと思うぞ。こいつら、お前の部下だろ。
どう落とし前つけんの?
私がそう問いかけると、クーランベル伯爵は震えながら首を左右に振った。
「い、いえ……結構でございます。……お手間を取らせて申し訳ございません」
「いえ、礼には及びません。瞳の数には限りがあります。目の届かぬ土地も、出てくるでしょう。……二度目はないようにしていただければ、と」
次やったら、目ん玉引っこ抜くぞ。
私はクーランベル伯爵にそう告げてから、彼の領地を後にした。
名前:フィーロ・エル・クーランベル
性別:男
身分:貴族(伯爵)
年齢:40
性格:怠惰・内向的・暴食・強欲
趣味:飲酒、食事、ギャンブル
特技:利き酒
好きな異性:大人しくて従順な女性
結婚相手に求めるもの:結納金
一言:後妻募集中




