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TS貴族令嬢の複雑すぎる婚活事情  作者: 桜木桜


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第17話

「以上が事の顛末になります」


 狩猟大会からトルーニア城へと戻ってすぐ。

 私は父に狩猟大会で起きたことについて、報告した。


「無事で何よりだ……」


 父はホッとした様子で、嘆息した。


 狩猟大会は何事もなく、閉幕した。

 というのが王家の公式見解であった。


 もちろん、私とカーヴェニル王子に矢を放った伯爵は一時逮捕されたし、私たちは王から事情聴取を受けた。

 しかし狩猟大会はそのまま続けられたし、翌日の閉会式では「今回も死者が出ずに終わって良かった。めでたし、めでたし」と王が宣言した。


「しかしまあ、暗殺未遂事件とは物騒な話だ」

「王は事故と判断しましたが」


 王は事件性なしと判断した。

 そして弱小伯爵に「ごめんね」をさせて、私たちも「いいよ」と謝罪を受け入れた。

 弱小伯爵に科せられた罰は「狩猟大会への出席禁止(五年)」である。


 軽くない?と思うかもしれないが、そもそも貴族を裁く権利は王にはない。

 王も貴族の一人でしかないのだから。

 できることと言えば、精々、貴族同士の諍いを仲裁する程度だ。


 だからもし仮に私やカーヴェニル王子があの矢で死んだとしても、五年が永年になっただけだと思う。


 そして私たちもそれについて、文句は言えない。


 狩猟大会の主催者には「狩猟中に賊が攻めてこないこと」を保障する義務はあるが、その狩猟大会そのものが安全であることを保障する義務はない(というかそもそもできない)。


 なぜなら「狩猟には事故が付き物」だからだ。


 死ぬ可能性があることくらい、言わなくても分かるよね? それが分からない不注意な間抜けが死ぬのは当たり前だろ。嫌だったら狩猟に来るな。一生、領地に引きこもってろ。

 と、言われてお終いだ。


 王はきっと「場は整えるので、当事者同士で話し合って解決してください」としか言わないし、言えない。

 そして弱小伯爵は話し合いに応じない。裁判にも来ない。死ぬまで領地に引きこもるだろう。

 被害者遺族は泣き寝入りである。


 ……もっとも、これは弱小伯爵が自分の領地に生きて帰れたらの話だ。


 生きて返したら泣き寝入りになると分かっているなら、生きて返さなければいいだけの話。

 と、考えるのがこの世界の貴族だ。


 現実にはラザァーベル伯爵(元帥)やアローベラ伯爵辺りが、「ロゼリア姫が卑怯者に殺された! 戦争だ!! 行くぞ、お前ら!!」と派閥の貴族を率いて、集団暴行リンチしに行ったと思う。

 トール君やバルトナ王子もそのリンチに参加するだろうし、王は黙認する。


 貴族の集団暴行リンチは魔法で行われる。

 戦争で使われるような、爆発するタイプの魔法が何発も撃ち込まれるので、おそらく死体すら残らないだろう。


 もっとも、今度は弱小伯爵の家族が泣き寝入りだが……。


 なお、「狩猟大会への出場禁止(五年)」は貴族にとっては非常に不名誉なことだ。

 公然と「お前は下手くそだから来るな。五年、修業して来い」と言われるようなもの。

 かなり屈辱的な話だ。

 

 慰謝料なんて求めても「え? お金払えばロゼリア姫を矢で撃っても許されるんですか?」という話になってしまうので、これ以上に罰する方法はない。


 だから公的にはこれで一件落着。

 当事者同士が和解した以上、できることは何もない。


 ……まあ、責めようと思えばできないこともないんだけどね。

 ただ私と同じ被害者であるはずのカーヴェニル王子が「まあ、事故だろう。そういう日もある」と弱小伯爵を慰め始めてしまったので、私は文句を言う機会を失ってしまった。


 ここで私がキレても器が小さいと思われるだけだ。


「しかし彼はバルトナ王子と親しくしていたのだろう? 王位を欲するバルトナ王子が、カーヴェニル王子を暗殺しようとした、とは考えられないか?」


 父はニヤニヤと笑いながら私にそう言った。


 カーヴェニル王子が死んで一番得をするのは誰か? バルトナ王子だ。

 そして犯人である弱小伯爵は、バルトナ王子と親しかった。

 ……妙だな?

 

 なんてね。


「その場合、私が射られたことと矛盾しませんか?」

「誤射ではないか?」

「事故ではなく事件と言い張るのに、そこだけ事故ですか。都合が良い推理ですね」


 そしてその推理には、最大の問題点がある。


「そもそも真鍮の矢では、貴族を殺せないでしょう? 金の矢を使わなくては」


 真鍮は確かに魔力を保持するが、金ほどではない。

 矢じりほどのサイズでは大した魔力は込められず、貴族を殺害するほどの威力にならない。

 貴族を殺したければ、金の矢が必要だ。

 そして金の矢は、狩猟大会では使用が禁止されている。

 誤射防止のためだ。


 もしこれで弱小伯爵が使った矢が金製であれば、限りなく黒に近いグレーだが、彼は真鍮の矢を使っていた。

 どう考えてもホワイト案件だ。


「そもそも誤射事故なんて、毎年どこかで起こっています。今回はたまたま、それがカーヴェニル王子と私だっただけです」


 今回の狩猟大会に限らず、狩猟は西大陸のあちこちで行われている。

 そして事故は毎年のように起きている。

 今回は事故に遭ったのが大物だったからニュースになっただけで、本来であればニュースにすらならない事案だ。


 自動車事故みたいなものだ。

 以上より、事件ではなく事故であると判断するべきだ。


「ククク……そうだな、その通りだ。ロゼリアの言う通りであろう」


 父は笑いながら言った。

 私が推理できることくらい、父にだってできるだろう。

 父の悪ふざけだ。


「しかしそう思わない者もいるだろう」

「そうでしょうか?」

「何かと陰謀だのと叫ぶ者は、どこにでもいる」


 ……確かに、前世の世界にもその手の陰謀論者はいた。

 その手の人は「何事にも悪意ある犯人がいる」という結論から推理を組み立てるので、何を言っても無駄だ。


「それに社交の場では、真実は問題にならない」


 つまり事件ではなく事故だと分かった上で、事件じゃないかと主張する者もいると。

 確かに王家の不和を煽りたい人は、そう噂するだろう。

 噂をする分はタダだ。

 後は馬鹿が勝手に妄想を膨らまして吹聴してくれる。

 これほど簡単な外交工作はあるまい。


「王家はしばらく、鎮火に苦労するであろう。面倒なことだ」


 今の王家に婚姻外交の話をしても「ちょっと後にしてくれ」と言われるだけだ。

 しばらくの間、私の結婚は棚上げになったと考えていい。

 ……正直、少しだけ安心している自分がいる。


「何はともあれ、何事もなくて良かった。トール殿には私からもお礼の手紙を書こう。……トール殿と言えば」

「……はい」


 あー、やっぱりその話になるか……。


「夜会で手を取ったそうだな。おっと、そんな顔をするな。叱るつもりはない。下手に断る方が、印象を悪くするだろう。所詮は夜の言葉だ」


 どうやら、父にとってはそれほど大事なことではなかったようだ。

 私はホッと息を吐く。 

 実はずっと気がかりだったのだ。


「彼を納得させるのは、私の仕事だ。ロゼリアは気にせず、今まで通りに接しなさい」

「分かりました」


 やはり父は私をトール君と結婚させるつもりはなさそうだ。

 ラークノール公爵家とブドゥーダル公爵家が同君連合を組むのは周辺諸侯の反発を招くだろうし、当然か。


「話は変わるが……四月に建国祭が、我が邦で行われることは分かっているな?」


 父の前振りに私は頷いた。

 建国祭は呼んで字のごとく、王国の建国を祝う祭りであり、四年に一度、行われている。

 王国貴族はもちろん、周辺諸国からも貴族や外交官たちが来る、大規模な祝祭であり、社交だ。


 何故、四年に一度なのか。

 ブドゥーダル公国で行われるのか。

 その理由は二つある。


 一つは参加する貴族の負担軽減のためだ。

 この世界はインフラが発達していないので、移動するだけでも一苦労だ。

 毎年開催していたら集まりが悪くなるので、四年に一度に絞る代わりに、「みんなできるだけ来てね?」と貴族たちに頼むのだ。


 もう一つは規模が大きいからだ。

 国中はもちろん、外国からも大貴族がやってくるのだから下手な祝宴はできない。

 しかし王家には、例え四年に一度だとしても、そんな派手な祝宴を毎回やるような財力も余裕もない。

 だから王家と、建国に関わった御三家の合計四家で、持ち回りで開催するのが慣習になっている。


 王家からすると財政的な負担を軽減できる。

 御三家からしても、自分たちが王家と対等であることを示せる。

 WINWINの慣習である。


 なお、建国祭そのものは四年に一度だが、建国を祝う祝宴そのものは毎年、王都で行われている。

 私がトール君と踊ったのは、その祝宴だ。

 もっとも建国祭と比較すると、その規模はかなり小さい。


 だから通常は王家とその派閥の貴族くらいしか出席しない。

 前回は和平交渉のため、ラークノール公爵と顔を合わせる必要があったので、赴いただけだ。

 普段はわざわざ参加していない。


「それに合わせ、ブランシュの社交デビューを行う」

「おぉー」


 貴族にとって社交デビューは極めて重要だ。

 私人から公人に切り替わることを意味する。

 そしてまた、正式に婚姻外交の舞台に上げることも意味している。

 父から家臣を与えられ、小規模ながら宮廷を運営することにもなるだろう。


 ブランシュは可愛いし、何よりブドゥーダル公爵家の姫君なので、あちこちから結婚の申し込みが来るだろう。


「それは喜ばしいことです。それでは此度の主役はブランシュですね」

「いいや。ロゼリアも主役の一人だ」

「……私も?」


 ということはつまり、私に関して何かしらの重大発表を行うということだ。

 正式にバルトナ王子との婚約を発表するとか?

 ……いや、さっき婚姻交渉は停滞するって話をしたばかりだし、それは違うな。

 そうなると答えは一つしかない気がする。


「ロゼリアをブドゥーダル公国の共同統治者として、指名する」


 その言葉にドキっと心臓が跳ねた。

 共同統治者になるということは、私の権限が父と並ぶことを意味している。


 私が出した勅令がそのままブドゥーダル公国の法律になる。

 また父の認可や権限の委譲なしに、裁判を行うことも可能になる。

 軍を動員して戦争することだってできる。


 もっとも、父と私で矛盾した指示を出せば、父の指示が有効になるけど。


「それは……嬉しいような、畏れ多いような……」


 正直、荷が重い。

 私は私なりに頑張っているし、やれているとは思っているが、父と同じことができるとは思えない。

 そんな不安な気持ちが顔に出ていたらしい。

 父は苦笑した。


「安心しなさい。今までとやることは大きく変わらない。あくまで名目上だ」

「そうでしたか。それでは……謹んで、拝命いたします」

「うむ」


 私が恭しく礼をすると、父は大袈裟な仕草で頷いた。

 しかし十二歳で共同統治者への指名か……。 

 いや、建国祭の時は十三歳になっているか。もっとも、早いことには変わりない。


「……まさか、お父様。何か、大病を患っているわけではありませんよね?」

「安心しなさい。少なくとも二十年以上は、この席を渡すつもりはない」


 健康に不安があるわけではないらしい。

 では、どうしてこんな早くに?

 と、私が尋ねると父は指を三本示した。


「一つはロゼリアが頼もしくなったからだ。年齢は若いが、能力は十分だ。優れた能力を持つ者には、相応の席を用意しなければならない。……経験を積むには、早いに越したことはない」


 父は指を一つ折る。


「二つ目、小うるさい分家の男共を黙らせるためだ。ロゼリアが正式な後継者であることを、内外に示し、確固たるものとする。これも可能であれば、早いに越したことはない」


 女では領地を継げない。

 というわけではないが、その継承には疑問符が付けられる。

 私が領地を継がない場合、領地の継承権は分家の男子たちに流れる。


 だから「俺、もしかしたらワンちゃんあるんじゃね?」と期待している男たちは少なくない。

 表立って言わないが「俺の方が相応しい」と思っている者もいるだろう。

 彼らの希望と願望を圧し折るわけだ。


「三つ目……これは他言無用だ」

「はい」


 私の返事を確認し、父は指を折った。


「私が長期的に邦を留守にする可能性がある。そうなった時、次期当主では重みが足りない」

「なるほど」


 それが主な理由か。

 長期的に邦を留守にする。

 次期当主では重みが足りないということは、いつ帰れるかも分からないのだろう。

 となると、答えは一つ。


「理由は聞かないか」

「円卓が欠けることは嘆かわしいと感じております」

「……全く、聡い子だ」


 私の予想は正解だったらしい。

 

 王国は三つの大諸侯が、ユガペ・エル・パルテリアを王として推戴することで建国された。

 この三つの大諸侯こそが、御三家である。


 ブドゥーダル公爵家。

 コークモール公爵家。

 そして三つ目、カルタリア公爵家。


 王国南西部最大の諸侯だ。


 彼らは先の狩猟大会にも顔を見せなかった。

 当然だ。

 王家と対立しているのだから。


「建国祭が最終期限でしょうか?」

「であろうな。王家主催の社交に欠席するだけならばともかく、我が家の祝宴に顔すら出さないようではな。王国を離脱したと見ても良かろう」


 そういう父は嫌そうな顔だった。

 まあ、カルタリア公爵家と戦争してうちにメリットないしね。

 得をするのは王家だけだ。


「だがどのみち、西を安定させねば、王家も東に目を向ける気にはなるまい」


 私たちは東で国境を接する帝国、それを支配する皇帝家に対抗するために、王家との婚姻同盟を結びたいのだ。

 要するに、東から敵が攻めて来た時に、王家には援軍を出してもらわなければならない。

 西で戦争しているから援軍が出せませんでは困る。 

 できればカルタリア公爵家と王家は「ごめんね!」「いいよ!」と和解してもらいたいが……。


「私たちの立場では、王家に寄るしかありませんからね」


 王家とカルタリア公爵家の対立の要因は、遺産相続争いだ。

つまり公位継承問題である。

というのも、カルタリア公爵家はカーヴェニル王子の亡き母親の実家なのだ。


 元々、カルタリア公爵家には男子の後継者が存在した。

 しかし疫病により、彼が急死してしまい、次期当主の席が空いてしまった。


 そこで先代のカルタリア公爵は、すでに王家に嫁いでいたカーヴェニル王子の母親を次期当主に指名した。

 カルタリア公爵家の封臣たちもそれを承認し、彼女を次の支配者として認めた。


 これで一件落着……かと思いきや、何と先代カルタリア公爵が亡くなった後、封臣たちが勝手にカルタリア公爵家の分家男子を、公爵として立ててしまったのだ。


 カーヴェニル王子の母親からしてみれば、遠い親戚に父親の財産を総取りされたことになる。

 夫であるオレアニス王、そして王家の面子も丸つぶれだ。


 あわや戦争……となりそうになったが、その前にカーヴェニル王子の母親が急死してしまった。


 結果として、公位継承権問題は有耶無耶になった。

 が、今度は彼女の息子であるカーヴェニル王子が、公位を主張している。


 以上の経緯から、私たちは王家……というより、カーヴェニル王子を支持せざるを得ない。

 なぜなら今のカルタリア公爵を支持することは、“直系女子よりも父系男子を優先する”ことを認めるのと同義だからだ。


 つまりバークス家の分家男子が「じゃあ、ロゼリア姫ではなく、俺がブドゥーダル公爵を継ぐべきだよな?」と言われて反論できなくなる。


 だからカーヴェニル王子もそれを分かって公位継承を声高に主張している。

 次期国王である彼の影響力は国王も無視できない。


 もちろん、だからといって私たちがカーヴェニル王子の個人的な野望に付き合う必要はない。

 私がバルトナ王子と結婚し、婚姻同盟が結ばれない限り。


 要するにカーヴェニル王子は私たちに二つの選択を迫っている。


 私がカーヴェニル王子と結婚する代わりに、彼がカルタリア公爵位を諦めるか。

 私たちがカーヴェニル王子を手伝う代わりに、彼が私との結婚を諦めるか。


 少なくともカーヴェニル王子はカルタリア公爵領かブドゥーダル公爵領、どちらかを手中に収めない限り、帝国との戦争に付き合うつもりはないだろう。


 彼は王国の連帯よりも、王家の力の強化を優先している。

 王家ファーストだ。


「公爵位は王子が、実権は現公爵が引き続き握る……辺りが落としどころでしょうか?」

「うむ……カルタリア公爵は受け入れるだろうが、王子は受け入れまい」


 私は父とあれこれ議論したが、名案は出て来なかった。

 王国南東部の貴族である私たちは南西部の事情についてはあまり詳しくないし、そもそも紛争の当事者ですらない。

 ここで頭をひねっても、意味はないだろう。


「来客と言えば、プルーメラ大公も来るそうだ。……まだ招待状も出していないのに、気の早いことだ」

「まあ! お爺様が?」


 プルーメラ大公とは私の母方の祖父である。

 ブドゥーダル公国の東側に領地を持っている、帝国を構成する大諸侯の一人だ。


 プルーメラ大公領は西大陸では有数の先進地域であり、また鉱山資源も豊富だ。

 また祖父本人は乱世を生き抜いた武闘派貴族でもある。

 西大陸最強の貴族の一人だ。


 なお、祖父の子供や孫は尽く戦乱や病気で死亡しているため、直系の孫は私しかいない。

 だから祖父の領地を継ぐのは私になる。

 私がモテまくりの理由の一つだ。


「封臣たちも引き連れて来るそうだ」

「賑やかになりそうですね」


 私の言葉に父は苦笑した。

 ……多分、あまり来て欲しくないのだろう。

 父と祖父は同盟関係にあるが、必ずしも利益を共有しているわけではないのだ。


「建国祭となると……例年通り、帝家も招待しますか?」

「無論だ。招待せぬわけにはいかぬし、招待すれば来るだろう」

「揉めなければ良いのですか」


 祖父は先代皇帝と帝位を争ったことがある。

 そしてその戦争で数多くの家族や友人を亡くした。

 「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」ということで、先帝の息子である現皇帝のことも嫌っている。

 ブドゥーダル公爵家が帝家と対立しているのは、祖父と皇帝が対立しているからでもあるのだ。


「来るとすれば、皇太子でしょうか?」

「であろうな。……最低でも一曲は踊りなさい」

「心得ております」


 皇太子は私の婚約者候補の一人である。

 まあ……祖父が断固反対すると思うので、順位はかなり低いが。


「建国祭では今まで以上に慎重な立ち回りを求められるであろう。帝家とは……戦を回避できるのであれば、それに越したことはない」

「そうですね」


 領地については相続するつもりではいるが、憎しみまで相続する気はない。

 平和的にやれるのであれば、それが一番だ。

 あちらだって、私たちと本気で戦争はしたくないだろう。

 何しろ……。


「私たちは推戴権を持つ帝国諸侯ですから」


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