第14話
開会式の翌日。
ようやく、狩猟大会の一日目がスタートした。
大会のルールについて、説明しよう。
まず狩猟の方法は多々あるが、今回の狩猟で採用された方法は二人一組での追い込み式だ。
一人が馬に乗って魔獣を追い立て、もう一人が待ち構え、魔獣を倒す。
倒した魔獣の大きさや種類によって、二人には同じポイントが入る。
二人組は一日ごとに交代される。
総合点が多い人が優勝だが、他にも一番活躍したペアとか、珍しい魔獣を倒した人に対して与えられる賞もある。
賞品はトロフィー、つまり名誉だけだ。
討伐した魔獣の魔障石は出席者全員に平等に分配される。
魔獣退治自体は、やりたい人にやらせればいいので、私が一生懸命やる必要はない。
もちろん、一体も倒さないのは決まりが悪いけど……。
この狩猟大会でもっとも大事なのは二人一組になる、という部分だ。
つまり周囲の目を気にせず、会話をすることができる。
……密室で密談すればと思うかもしれないが、そんなことをしたら周囲から「あ、何かあの二人企んでるな」とバレバレになってしまう。
周囲に怪しまれずに堂々と密談ができるという部分が、狩猟大会という社交の最大のメリットだ。
一方、デメリットとしては“事故”のリスクがある。
少なくとも、仲が悪い相手と一緒にはなりたくない。
そういうわけで誰とペアになるかというのは、貴族としては重要だ。
だから王家は事前に「誰と一緒がいいですか?」「誰が嫌ですか?」「要望や心配事はありますか?」と聞き取り調査を行っている。
ある意味、王家に対して交友関係という情報を晒すようなものだが、まあこれは場を整えてくれている王家への対価のようなものだろう。
それに馬鹿正直に「あいつは嫌い」とか書く貴族はいない。
ちなみに私は「女性貴族と仲良くなりたいです」「嫌いな人はいません」「狩猟はそんなに得意ではないので、優勝を狙っている人と一緒は避けて欲しいです」と回答した。
結果として一日目から四日目までは全員、有力な女性貴族になった。
未来の女性当主として、女の身で領地を切り盛りしている女主人たちの手腕を学びたいという私の意図はしっかり伝わったようだ。
五日目はバルトナ王子とのペアだ。
開会式での「○日目はお願いします」というメッセージは、この狩猟でのペアの話だったわけだ。
これは王家からの「カーヴェニル王子ではなくバルトナ王子との婚姻を前向きに検討する」というメッセージと捉えて良いだろう。
周囲にも、王家とブドゥーダル公爵家の婚姻外交の交渉が前進したことを示せる。
これで外交的な成果は上々。
あとは五日間を乗り切り、無事にお家に帰るだけだ。
「まあ! お見事ですわ、ロゼリア姫。……苦手とお伺いしていましたが、お上手ではありませんか」
「いえ……伯爵のご指導のおかげですわ」
というわけで、私は伯爵の地位にあるおばさ……お姉様と共にキャッキャしながら魔獣狩りに勤しんでいた。
女伯爵が追い込み役、私が魔獣を倒す役で、ちょうど兎の魔獣を矢で撃ち抜いたところだった。
弓と言っても、貴族が使う弓は身体能力強化が扱えない平民では、まともに引くことができない強弓である。
魔力の無い平民に撃ち込めば、体がバラバラになるほどの威力がある。
ちなみに討伐した兎の魔獣のサイズは、頭から尻尾までのサイズが五メートルに達するお化け兎である。
見た目そのままなのに巨大化すると可愛くなくなるのが不思議だ。
小動物というのは大きさ含めての可愛さなんだなと、あらためて実感する。
「次はわたくしが追い込みをいたしましょうか?」
明確な決まりがあるわけではないが、仕留める方が上役で、追い込む方が下役という風潮がある。
そして私と女伯爵、どちらが上かと問うと……人によって回答が異なるかもしれないが、一般的な価値観としては女伯爵だ。
それは私が爵位を持っていないから……ではない。
私は母からオーセン伯爵領という土地を受けついでいるし、他にも父からいくつかは伯爵領や男爵領を与えられている。
位階としては同格であり、領地の広さや経済力、宮廷の規模では私の方が遥かに格上だ。
では女伯爵が年上だからか? 否、それは違う。
この世界に年功序列の概念は……ないとは言わないが、そこまで重視されない。
七十年生きた老騎士と生後一秒の貴族ベイビィ―なら、後者の方が圧倒的に偉い。
大事なのは家柄だ。
もっとも、家柄でも私の方が女伯爵よりも格上になる。
それではどうして女伯爵の方が上と判断されるのかと言えば、それは「従属貴族」か「独立貴族」かの違いだ。
従属貴族は別の貴族に対して臣従契約を結び、忠誠を誓っている貴族である。
一方で独立貴族は誰に対しても忠誠を誓っていない、誰にも支配されていない貴族だ。
私は父の家父長権に伏しているので、従属貴族。
女伯爵は王国には属しているが、王家に忠誠を誓っているわけではなく、他の貴族にも臣従していないので、独立貴族になる。
従属貴族はどれだけ実力があろうとも、「結局、親分の七光りでしょ?」と思われるので、独立貴族と比較すると下に見られる。
親からお小遣いをもらってる無職の金持ちと、汗水たらして働いている貧乏人なら後者の方が立派みたいなイメージだ。
だから女伯爵の方が偉い。……名目上は。
実際は先述した通り、あらゆる面で私が優越しているので、私の方が丁重に扱われる。
店からしたら金持ちは金持ち、貧乏人は貧乏人だ。
それに女伯爵も完全に自立しているわけではなく、複数の大貴族に「誠実の誓い」を掛けている。
要するに複数の派閥の間を行ったり来たりするような蝙蝠ムーブをしているわけで、お世辞にもカッコいいとは言い難い。
とはいえ、それでも独立貴族であることには変わらないので、敬意をもって接しなければならない。
接待されてばかりだと決まりが悪く、今度は私が接待を申し込んだが……。
「あら、ありがとうございます。……でも、少々疲れましたし、一度休憩いたしませんか?」
とりあえず一体倒せたし、もうやめにしない?
と、やんわり提案された。
私と同じく、女伯爵は狩猟が好きではないのだろう。
「そうですね。そうしましょう」
私たちは日当たりの良い場所へと移動する。
場所を定めると、側仕えの騎士たちが折りたたみ式のテーブルと椅子を置いた。
テーブルには焼き菓子とお茶が並べられる。
完全にお茶会モードだ。
「此度の共同賞杯はどなたの手に渡るでしょうか? やはり王子たちの二人組でしょうか。兄弟で仲が良いご様子でしたし……」
共同賞杯とは、一番多くの魔獣を討伐したペアに与えられる優勝杯である。
カーヴェニル王子とバルトナ王子の二人組は、四日目でペアになっている。
この二人が優勝するんじゃないか……という世間話に見せかけた、探りだろう。
あの二人、本当に仲が良いと思う? あなたなら、何か知ってるんじゃない? 婚約者候補だし…と。
「さあ、どうでしょうか。時の運も絡みますから……」
などと誤魔化しつつも、私個人の意見としてはあの二人は仲は良い方だと思う。
一緒にペアを組んでいるからだ。
もし私がカーヴェニル王子の立場だったら、「自分が死んだら得をするやつ」とは一緒に狩猟に出たくない。
それとなく、暗殺者のところに誘導されたらたまったもんじゃない。
二人が一緒に狩猟をしている時点で、互いに一定の信用があることが窺える。
「おほほ、そうですわね。ところでロゼリア姫様の弓の腕は、本当にお見事でしたわ。バルトナ王子とご一緒なら、共同賞杯を手にすることができるのでは?」
今度は婚約について探りを入れてきた。
それにしてもこのおばさん、「わたくし、血生臭いことは苦手ですわ。おほほほ」とか言ってたくせに、やる気マンマンである。
「うふふ、そうですね。もし、杯を手に入れることができれば……お父様への良いお土産になりますわ。国王も祝福してくださるでしょうし……」
婚姻同盟の最有力候補はバルトナ王子。あなたの解釈の通りで問題ありませんよ。
私がそう伝えると、女伯爵は「優勝を祈っておりますわ。おほほほ」と笑った。
「うらやましい限りですわ。わたくしも、もう少し弓の腕があれば楽しめるのですが……やはり普段から練習されているのでしょうか?」
「ええ、もちろん。我が領でも、似たような大会は度々開いていますから……」
「あら、そうなのですね。ということは、やはりご家族と?」
あぁ、そうか。そこが本題か。
要するに「継母や異母妹と仲が悪いって本当?」と聞きたかったのだろう。
先ほどの王子の話はその前振りだ。
私とブランシュの関係性は、王子たち二人の関係性と酷似している。
このおばさん、本当に嫌なところを突いてくるな。
もしここで私が言い淀んだりしたら、私と継母の関係が悪いことを察してしまう。
「はい、もちろん。仲良く……まあ、お父様は女ばかりの家族で肩身の狭い思いをしているかもしれませんが……」
女同士仲良しですよ。
と、嘘をついておく。
しかし深掘りされると面倒なので、釘も刺しておく。
「家族と言えば……伯爵の夫君はお見えにならないのでしょうか? 夫君も狩猟があまりお好きではないので? それとも、我が父と同じようにどこかを睨み付けているのでしょうか?」
反乱未遂を犯した夫の目玉をくり抜いて幽閉したって聞いたけど、本当?
私がそう尋ねると、女伯爵の魔力がわずかに揺れ動いた。
あ、動揺してる。本当なんだ。
「……えぇ。留守を守っていただいています」
「まあ! そうでしたか。……やはり海を見つめているのでしょうか? 賊が来るやもしれませんからね」
この世界には「西海を見つめる」という故事がある。
前世の言葉だと「骨折り損のくたびれ儲け」が近いだろうか。
これは大昔の皇帝が、政敵を西海岸に左遷させたというエピソードに由来する。
西海岸は島一つない大海に面しており、外敵が侵入してくる可能性はゼロに近い。
左遷させられた将軍は、海洋に反射する光と潮風に目をやらせ、失明してしまったらしい。
それ故に「無意味なこと、無用な心配をした結果として、損をする」というニュアンスがある。
女伯爵に対する皮肉としてはこれ以上の物はあるまい。
「……」
私の指摘に女伯爵は何も答えなかった。上手い返しが思い浮かばなかっただろう。
代わりに頬をピクピクさせている。
内心では怒り心頭な様子だ。
人のプライベートを最初に突いてきたのはそちらなので、文句を言われる筋合いはない。自業自得である。
“西海を見つめる”とはまさにこのこと……と言いたいところだが、秘密を暴いた結果、外交関係が悪くなりましたでは意味がない。
外交というのはただ論破すればいいわけじゃないのだ。
手土産を持たせてあげよう。
「そう言えば……石鹸というものは、ご存じでしょうか?」
「ブドゥーダル公国で流行っている化粧品とお伺いしていますが……」
急に話を変えて来た私に対し、女伯爵は警戒心を露わにする。
そんな彼女に私は笑顔を浮かべる。
「あれは大変良い物です。実はわたくしも……妹たちも使っています。お義母様は苦手なご様子ですが」
さっきの話ですけれど、妹とは仲が良いですよ。継母とは仲が悪いですけどね。
と、私は女伯爵に教えてあげる。
私の告白に女伯爵は目を大きく見開いた。
こちらから教えてもらえるとは思っていなかったのだろう。
ぶっちゃけたところ、私と継母の仲が悪いことなんて間諜を放てばすぐにわかることだ。
それに「夫の目玉を抉って幽閉している」のと比較すれば、「継母と継子の関係が悪い」なんてスキャンダルのうちに入らない。
教えてあげても良い情報だ。
これで弱みを握ると同時に恩を売ることもできた。
成果は上々だ。
「もしよろしければ、伯爵もお使いになりませんか? いくつか持って来ていますので、お土産にお包みしますよ?」
「あら、それは嬉しいわ。ぜひ、試してみたいと思っていたの」
「まあ、そうでしたか。では、もしお気に召したら、おっしゃってください。商人を紹介いたします。……特別ですから、内緒ですよ?」
私は人差し指を唇に当ててそう言った。
誰にも言わないから、誰にも言わないでねという念押しだ。
「ええ、もちろん」
「うふふふふっ」
「おほほほほっ」
こうして私たちは和やかにお茶会を楽しむのだった。
はぁ……疲れる。
そうこうしているうちに、あっという間に四日が過ぎた。
非常に濃密で疲れる四日間だった。
というのも、私と組む女性貴族たちの殆どが一癖も二癖もある人ばかりだったからだ。
みんなして私の性格や公位継承後の統治方針、人間関係を推し量ろうとしてくる。
油断すると首を取られそうな緊迫感があった。
舞踏会で出会う女性貴族はもうちょっとのほほんとしているというか、人によっては突くとボロがボロボロ出てくるような(継母みたいな)人も珍しくないのだが。
彼女たちはそうではないようだ。
やはり女性で一国一城の主をやっている人たちは肝が据わっている。
それくらいじゃないと生き残れないのだろう。
もちろん、それは私も同じこと。
こちらにも面子があるので、やられたらやり返さないといけない。
そのせいで互いに弱点を探り合う舌戦になった。
どうでもいいけど、貴族のお姉様方と「弱点を探り合う舌戦」をするって、物凄く濃厚なレズディープキスをしているみたいで、ちょっとえっちだ。
本当にどうでもいいことだな……。
そんな濃厚レズディープキスの結果、有力な女性貴族とはかなり親交を深められた。
こういう派閥に囚われない人脈は重要なので大事にしていきたい。
そして迎えた五日目。
「では、よろしくお願いいたします。ロゼリア姫」
「ええ……ご指導、お願いいたしますわ。バルトナ王子」
私はバルトナ王子と組み、狩猟を行っていた。
私は優勝なんて目指していないし。バルトナ王子も本心では興味ないだろうけれど、成果ゼロは居心地が悪い。
一体くらいは倒したいところだが……
「やはり五日目になると、数も少なくなりますね」
私は魔力感知を使いながら、バルトナ王子にそう話しかけた。
魔力感知は魔力操作技術の一つだ。
その効果は読んで字のごとく、魔力を持っている物質の方角や距離、魔力の大きさを測るというものである。
その精度はお世辞にも良いとはいえない。
例えば魔獣と魔力持ちの人間の区別はつきにくい。
魔力の大きさや距離も、視覚で言うところの遠近感のような錯覚が働くので、本当に魔力が大きいのか近いだけなのかわかりにくい。
そもそも、推し量れるのは自然放出される魔力量だ。
魔力操作に優れた人間であれば、魔力を隠すことができる。……まあ暗殺者でもない限り、やる意味は薄いが。
狩猟で事故が多いのは、この魔力感知の不確かさが原因だ。
魔獣だと思って攻撃したら人間でしたとか、人間だと思って近づいたら魔獣で襲われましたとか、そういうことがたまにある。
どんな世界にもドジはいるし、間が悪いタイミングというのはどうしてもある。
だから常に緊張し、周囲の様子を伺う。
……密談をするための場を整えやすいというわけだ。
もっとも、少なくとも私には密談をする予定はないが。
「そうですね。昨日、私と兄上で狩り尽くしてしまったかもしれません」
バルトナ王子は冗談めかした調子でそう言った。
カーヴェニル王子とバルトナ王子のコンビが狩猟をしたのが四日目、昨日のことだ。
俺たち、仲が良いんだよ!! と主張したいのだろう。
バルトナ王子の立場からすれば、これは当然の主張だろう。
現状、カーヴェニル王子にはこれといった瑕疵がない。
長子相続、家督継承の秩序を乱してまでバルトナ王子が王位に就く正当性はない。
そのような状態で王位に関心があるようなことを口にすれば、周囲から下劣で強欲な野心を疑われる。
不利益を被るのは彼自身だ。……仮に本心では王位を欲していたとしても。
「おや、それほど成果を上げたのですね。ところで……共同杯と優勝杯、バルトナ王子はどちらの名誉に与りたいとお考えですか?」
「もちろん、共同杯です。私にとって兄弟の絆を示せることは、何よりの栄誉ですから」
念のために野心の確認をしてみたが、バルトナ王子は一切の淀みなく野心のなさを主張してきた。
表情は爽やかで、魔力の揺らぎが全くない。
……なんだか、一周回って怪しいと思ってしまうのは私の偏見だろうか?
バルトナ王子は声と顔が少しうさんくさいというか、「私が天に立つ」とか言い出しそうな雰囲気がある。
私は彼が物語の中盤くらいで裏切っても、驚かない。
「まあ! 本当に仲が宜しいのですね」
もっとも、バルトナ王子が内心でどう思っていようとも、それが達成される可能性は限りなく低い。
彼が王位を得るには私の協力が不可欠だが、私は王位に何の興味もないからだ。
私が――というよりはブドゥーダル公爵家が求めているのは王家との同盟であり、それはオレアニス王やカーヴェニル王子との同盟である。
彼らと関係が悪化するような真似は、私も父も許さない。
カーヴェニル王子が急死すれば話は別だが。
……そんなことは彼も、百も承知か。
私の夫に立候補している時点で、やはり野心はないものと考えていいだろう。
「羨ましいですわ」
「……おや? ロゼリア姫も、妹君とは仲が宜しいとお伺いしましたが?」
バルトナ王子は僅かに声を低めた。
魔力の揺らぎから、彼が魔力感知を作動させたことが分かった。
何やらプライベートな密談が始まると思って、周囲を警戒しているのだろう。
やっぱり、人がいいな、この人。
「ええ、もちろん。大切で可愛い妹ですわ。いつもお姉様と慕ってくれて……でも、わたくしも、 “お兄様”とお慕いできる人がいればと思うことがあります」
いや、本当に兄がいればもっと私の立場は気楽になったのだが……。
ない物ねだりは仕方がない。
「ですから、わたくしも……素敵なお兄様が欲しいと、バルトナ王子が羨ましいと思いました」
「あぁ、なるほど」
話のオチは妹と仲が悪いとかそういう話ではなく、カーヴェニル王子を“お兄様”と呼びたい=あなたと結婚したい=王家と婚姻同盟を結びたい、という話である。
「そういうことでしたら兄上や……私のことを、兄と呼んでいただいても構いませんよ? 兄上も、これほど可愛らしい妹が増えることを、きっと喜ばれるはずです」
バルトナ王子は冗談めかした口調でそう言った。
話のオチは見えたが、敢えて乗ってあげよう。
「それは大変嬉しい申し出ではありますが……しかしオレアニス王はお困りになられるのでは? 血の繋がりのない娘が増えたら」
「あはは、何をおっしゃいますか」
バルトナ王子は笑いながらオチを口にした。
「私たちは共に、豪胆王の子ではありませんか」
ユガペ豪胆王。
ユガペ・エル・パルテリアはこの国――西王国、パルテリア朝の初代国王だ。
彼を始めとする歴代の国王は積極的に政略結婚を行い、王国各地の有力諸侯に娘を嫁がせた。
結果として王国の大貴族同士はみんなユガペ王の血を引いている親戚同士という有様になっている。
それはブドゥーダル公爵家も同様であり……実は私とバルトナ王子は又従兄妹の関係にあるのだった。
もっとも、普段はそんなことをわざわざ強調することはない。
貴族なんてみんな親戚同士だから血の繋がりは珍しくないし、そもそも王家との親戚関係なんて誇るようなものではない。
ブドゥーダル公爵家の方が歴史も格式も上だ。
「あら、そうでしたわね。うふふっ……」
ユガペ王は元々、パルテリア伯であり、現在の王国の首都であるパルテリア市とその周辺しか所領を持っていなかった。
現在の王家はその時よりも所領が増えているが、それでも大貴族と呼ぶには一歩及ばない程度に過ぎない。
それでも王国が安定しているのは王家が子沢山だから……という説がある。
バンバン子供を作りまくるので、政略結婚の弾丸に困らないのだ。
財産相続で揉めるというデメリットもあるが、それを抜きにしてもやはり子沢山は正義だ。
「もっとも、直接、血の繋がりがなくとも、親子や兄妹になる方法もありますが……おっと」
――少々、気が早かったですね。
バルトナ王子はわざとらしく、口に手を当てた。
私と結婚すればあなたと私の兄、私の父は共に家族ですよ……という話だろう。
そういえば、こいつ、二十歳なのに愛人との間に非嫡出の子供を三人も作ってたな。
私も孕まされまくるのだろうか……。
嫌だなぁ。
お腹が痛くなってきた。
代わりの女、用意するからさ。
最低限の人数以外は、そっちを孕ませてくれない?
名前:バルトナ・エル・パルテリア
性別:男
身分:貴族(上級伯爵)
年齢:20歳
性格:社交的・満足・好色・お人好し
趣味:読書、作詩
特技:古典の翻訳
好きな異性:美しくて教養のある女性(年上だとなお良い)
結婚相手に求めるもの:王家、王国の利益となること
一言:大陸情勢の安定と均衡、そして平和を維持することが我々の使命です。そうですよね? ロゼリア姫。




