030 特 訓 3
セリアとリゼルに暫くファイアーボールを出す練習をさせてみたけれど、ふたりとも普通の魔力塊しか出せなかった。うむむ……。
「仕方ないなぁ……。じゃあ、俺が試してみるぞ」
とは言っても、俺も魔法は収納魔法と身体強化魔法しか使ったことがないからなぁ。
あ、この世界に飛ばされる前には、他の連中が色々な魔法を使っているのを見たことはあるぞ。
あの戦女神の候補生の候補生である幼女隊が空を飛んでいるのはいつものことだし、フレイヤの城からパクったものを売り払う時には、相手側が鑑定魔法を使ったりしていたからな。
……でも、町の中で攻撃魔法をぶっ放すようなヤツはいなかったんだよ。結構治安が良かったからな、あの世界……。
まあ、フレイヤのお城があったからな、あの町……。
そして俺の前……つまりフェンリルの女王である母ちゃんの前で攻撃魔法を撃とうとするような自殺願望者は、あそこにはいなかった。
もしかすると昔はいたかもしれないけれど、そういう連中はみんなとっくに死んだらしいし、そういう愚かな個体は子孫を残せないから、必然的に今生き残っているのは聡明な者とその子孫達、ということになるわけだ、うむうむ。
とにかくそういうわけで、使える……使ったことがあるのは身体強化と収納魔法のふたつだけでも、他の魔法を見たことはあるんだ。
……除く・攻撃魔法、だけどな。
それに、魔法の使い方というか、魔力の操作はできているわけだからな。
何とか、なるなる!
……しかし、本当に大丈夫なのか? これで俺も失敗すれば、信用度がダダ下がりになるぞ。
俺も属性魔法……身体強化と収納魔法も、属性魔法になる……は使えているわけだけど、初めて挑戦するファイアーボールでは、失敗してセリア達と同じようにただの魔力塊を出しちまう可能性があるなぁ。それだけは避けたい……。
「……ええと、炎を作り出すには、どうすればいいんだ?
別に、可燃物があるわけじゃないから、魔力そのものを熱に変換するのか?
じゃあ、酸素は必要ない? 洞窟の中とかで使っても窒息するようなことはないのか?
エネルギー変換のための触媒は何だ? ……精神波か? それとも神様が何かそういうシステムを作っているのか? うむむ……」
……分からない。分からないけれど、ま、やってみるしかないか。駄目ならそれから考えて、何度も試してみればいい。
よし、やるぞ!
「魔力を火に、炎に! 可燃物や酸素なんかなくても、魔力があればOK! 炎の精霊よ、我が魔力を糧に、炎の弾を生み出し給え……。
出でよ、ファイアー・ボオォ〜〜ルッッ!!」
ボヒュッ!
「あ、出た……」
「「えええええええ〜〜っっ!!」」
セリアとリゼルのヤツ、驚いてやがるな。
……いや、俺も驚いてるけどさ……。
呪文が効いたのか、イメージ力のおかげか、それとも知識の勝利なのか……。
ともかく、火球が出て……、あ、撃ち出さないと『ファイアーボール』にならないや。
このままじゃあ、ただの点火魔法だ。ええと、射出、射出、と……。
「マジカルシュート!!」
どひゅん!
ぱぁん!
「……」
「「…………」」
「「「………………」」」
「……って、どうしてあんたまで驚いてるのよ!」
「いや、まさか一発でできるとは……」
「お姉ちゃん、問題はそこじゃないよ! 今の魔法が当たったところ……」
「あ……」
うん、明らかに威力が大きい。
普通の魔力弾だと、岩があんなに削れたりしないし、オマケに焼け焦げてる。
もしこれが、魔物や人間に当たったとすれば……。
「じゃあ、次は水魔法をやってみるぞ」
「いや、もう少し驚きの余韻に浸らせてよ!」
「それは、後で纏めて! じゃあ、やるぞ。
ええと、水は実体がないと駄目だから、火と同じように考えちゃ駄目かな? じゃあ……。
魔力を触媒にして、空気中の水分よ、析出しろ! 足りなきゃ、どこかから持ってこい! 『空中にある元素を固定する装置』や分子変換、原子変換、何でもありありはべり、いまそかり!!」
「何よ、そのワケの分からない言い回しは!!」
「出でよ、ウォーターボール!!」
たぷん……
「……出たな……」
「……出たわね……」
「「「…………」」」
「んじゃ、どんどん行ってみよ~!」
* *
土魔法で、土遁の術……地面に穴を掘って隠れた。
風魔法で、そよ風を起こして涼しくした。
氷魔法で、水筒の水を冷やした。
雷魔法で、電気マッサージ。
洗浄魔法……水魔法のひとつ……で身体を洗い、風魔法と火魔法の混合魔法で温風を出して、乾かした。
ノミ取り魔法……は要らないか。ノミの口吻……針のような細長い口……が刺さるような柔な皮膚じゃないからな、俺のプリティなお肌は……。
「「「属性魔法、便利過ぎィ!!」」」
「……じゃないわよっ! いや、確かに便利だけど。便利だけどっっ!!」
「さっさと教えてよ!」
何だか納得できないらしく葛藤しているセリアに対して、リゼルはそんなことは気にせず、とにかく早く自分も属性魔法を使えるようになりたい、ということらしいな。
しっかりしているというか、現実的というか……。
「まあ、最初からふたりに属性魔法を教えるのが目的だから、勿論そうするけど……」
「教える方もよく分かっていない、というのが問題だよね!」
「うるさいわ、って言いたいけれど、事実、その通りだからなぁ……。
どうしてちゃんと魔法を教わっておかなかったかなぁ、俺……」
リゼルの突っ込みに反論できず、黄昏れる俺。
「まあ、生後半年の野生動物なんだから、仕方ないでしょ。
……というか、異常に物知りで、ちょっと不気味なんだけど……」
「「…………」」
慰めなんだか突っ込みなんだか分からないセリアの言葉に、沈黙で答える、俺とリゼル。
……いや、俺が無言なのはともかく、どうしてリゼルまで黙っているんだよ……。
俺への付き合いか?




