029 特 訓 2
「……というわけで、誰も来ず、草木も生えていない岩山にやって来たわけだけど……」
「フェン、あんた誰に説明してるのよ……」
「いや、様式美というものがあって……」
「いいから、さっさと始めるわよ! フェンが言う通りに、わざわざこんなところまで来たんだからね! ……まあ、ここなら秘密保全と自然環境保護、小動物に迷惑がかからないということは、確かに認めるわよ……」
そうなのだ。一応、納得しているからこそ、こんな離れた場所まで歩いてきたのだ。
私はともかく、まだ体力のないリゼルまで、頑張って……。
フェンは、私の肩の上に乗ったままで、楽をしていたけれど。
なので、絶対に成果を出さなきゃ……。
私達の、未来のために……。
「……じゃあ、早速始めるぞ。
まず、俺がイメージする魔法というのは、大きく分けて2種類ある。
普通の魔法と、魔法少女が使う魔法だ」
???
私とリゼルの頭の中は、疑問だらけでフリーズした。
「いや、『普通の魔法』って、魔力をそのまま放出する、今のやつだよね?
……そして、『魔法少女』って何よ? 私達、年少の女性魔術師のこと?」
私がそう質問すると、フェンのヤツ、手……前脚をチョイチョイと振って、呆れたような顔で言いやがった。ちょっとムカつくよ、その仕草と表情……。
「ノンノンノン! 俺が言う『普通の魔法』とは、火魔法、水魔法、土魔法、風魔法とかの属性魔法のことだ。……それと、それらから派生した氷魔法、雷魔法とかだな。
そして『魔法少女』というのはだな……」
その後、フェンの身振り手振り、声色を変えて……実際には、声じゃなくて精神波だから上手く少女の声を真似られているらしい……の熱演で、数種類の魔法少女達の活躍と決め台詞、そして変身シーンの詳細説明が行われた。
どうやら『魔法少女が使う魔法』というのは普通の……この世界での普通……に近く、魔力のぶつけ合いみたいだけど、色々なバージョンがあり、威力が桁違いみたいだった。
何よ、一撃で城を消し飛ばせそうな集束魔法って……。
そんなの、使えるわけがないでしょ!
……そして、どうしていったん裸になって変身しなきゃならないのよ!!
でも、フェンが語る物語が面白くて引き込まれ、ちょっとばかし『やってみたい』と思ってしまったのは、悔しい……。
但し、変身の時に裸になるのだけは嫌だ!
私達は、『属性魔法』の方だけで充分よ!!
そして『魔法少女が使う魔法』に関する説明が概ね終わった時には、もうお日様がかなり傾いていた。たくさんの魔法少女パーティの話が続いたからなぁ……。
そろそろ帰らないと、途中で暗くなり始めちゃうな。
なので……。
「もうすぐ暗くなり始めるから、今日はもう帰ろう。続きは、明日ね」
「うん、それは分かったけど、ひとつ聞いてもいいかな?」
リゼルが、何やら疑問に思うことがあるらしい。
この子は、本当に勉強熱心だからなぁ。私の、自慢の妹だよ!
そして、その質問は何かな?
「……今日、わざわざ岩山に来る必要、あった?」
「……」
「「…………」」
「「「………………」」」
* *
特訓、2日目である!
昨日のコトは、考えない。
いい女というものは、過去には囚われないものなのよ、うん!
「……今日も、あの岩山へ行くの?」
「ああ」
「今日もお話だけで終わったりしないよね? お話だけなら、宿屋の部屋でいいよね?」
リゼルが、ジト目でフェンを見ながらそんなことを聞いている。
「…………」
「その沈黙は何よ!」
あ、リゼルがキレた。珍しい……、って、リゼルを怒らせると後が怖いっていうの、分かってるでしょうが。フェンの馬鹿……。
「……いやいや、今日は普通の、属性魔法の授業だから……。
実技中心だよ、うん!」
慌ててリゼルの機嫌を取り始めたフェン。さすが、野生の獣。危険を察知したか……。
* *
そして、岩山の昨日と同じ場所に到着。
他の人影はないし、動物も魔物もいない。草木すら生えていないから、魔法を撃っても問題ない。
「え~、では、今日は属性魔法の練習をするぞ!
説明しながらの実践だから、退屈しないと思うぞ。
じゃあ、まずは属性魔法の基本中の基本、火魔法の初級である、ファイアーボールから!」
「フェン、自分も見たことも使ったこともないって言ってなかった?」
ごく当たり前のように先生役をしているフェンに、そう突っ込むと……。
「い~んだよ、細けぇこたー!」
キレ気味に怒られた。
……いや、いいんだけどね。教えてほしいと言ったのは、私の方なんだから……。
「これは、魔力を炎の塊にして敵にぶつける魔法だ。多分、物質としての実体、つまり可燃物があるというわけじゃない……んじゃないかと思う……」
「どうしてそんなに自信が無さそうなの? ただの想像なの? それとも妄想?」
「それって、魔力をそのままぶつけるのと変わらないんじゃないの?」
「うるさいわっ!!」
あ、リゼルと私からの突っ込みに、フェンがキレた……。
「ごめん! 続けて……」
「とりあえず、最後まで説明して……」
私の謝罪に続いて、リゼルも申し訳なさそうな顔でフェンに先を促した。
「全く、もう……。
じゃあ、とりあえず俺が言う通りにやってみて。
右手を、手の平を上にして前に出す。そしてその手の平の上に、炎の塊を出すイメージを……。
あ、直接手の平の上に出しちゃ駄目だぞ! 熱くて火傷しちゃうからな。
慣れると、自分が魔法で出した炎は熱く感じなくて、火傷もしないらしいんだけど……」
「「それって、どこ情報よっ!!」」
リゼルとハモった……。
いや、どうして自分も見たことも使ったこともない魔法のことを、そんなに詳しく語れるのよ!
……妄想? 全部あんたの妄想なの?
まぁ、フェンが言う通り、それはいったん置いておこう。
今の私達に必要なのは使える魔法なのであって、その知識の出所なんかどうでもいい。何なら、出所が天使や悪魔だって構いはしない。
リゼルを一人前に育て、幸せにしてやるためならば、地獄の鬼にだって喧嘩を売ってやる!!
「……やるわよ……」
私の言葉に、リゼルが黙って頷いた。
「ぬぬぬ……」
「うぬぬ……」
「「ぐぬぬぬぬぬぬ……」」
そして私の手の平の上に、熱い光の玉が現れて……。
「……普通の魔力弾だな」
そりゃそうか。
いつも魔力の塊を作り出していたんだ。力を込めて念じれば、魔力塊ができるに決まってるよ!
「「「……駄目じゃん!」」」




