87話 「制服のままなんだが」
知佳が後ろでシャツを着る音がして明らかに音的にベストは着てないようだった。
「大丈夫」
「本当か」
「本当」
「分かった」
咲夜は、パソコンが置いてある方に向いた。確かにそこには、服を着た知佳が居たのだが咲夜の予想通りシャツしか着ていなかった。
「なあ、上も着ろよ」
「別にいいでしょ」
「まあ、良いんだが」
「なら問題ない」
一度落ち着いてしまえば、先ほどまで何か問題がありましたかという感じになっていた。咲夜からしてみれば、自分だけ気にしているのがバカみたいに感じてしまうのだがそこは切り替えるしかなかった。
「パトカーの件どうするの?」
「リリアンに聞くしかないな」
「でも、買うかな」
「買うしかないだろうな、廃車になった車両もあるし現状、燃焼エンジンうちだけなんだろ」
「公開されてるエンジンに関してはそう」
「それに、電気だけだと距離が足りない上、充電時間がロスでしかないみたいだな」
「そこは、数を揃えるんじゃない」
「そうなると、どうしようもないな」
「どうするの」
「そうなったら、島外に売るよ。需要はあるんだし」
「あるとは、思うけど」
「それに、正式に会社運営が始まったら注文が大量に入りそうだがな」
「オークションの可能性は?」
「ないことも無いだろうけど、しばらくの間は敵なしだろうな」
「今後のことを考えるとエンジンの供給とかをするのもあり」
「それは、ありだな」
シャシーの開発のこと考えると咲夜たちのエンジンを積むことができる車両は、現状咲夜たちの車しかないのだが今後出てくるのは簡単に予想が出来るので知佳のエンジンの販売に関しては咲夜も賛成ではあった。
「カスタムパーツもいずれ販売される」
「それは、エンジンのか」
「そう、ピストンの形状とか最適化されていく」
「それは、俺達でもできないか」
「できるとは、思うけどクラスを決めて上のクラスは販売しなければいい」
「そうするか」
「厳格にする必要もない」
「確かにな、エンジン単体の提供は今後次第だな」
「うん」
エンジンに関してはここで簡単に決める話ではないということは、二人とも考えていることだった上にこのことは場面によって合わせて行動していけばいいだけなのでここで決めなかった。
「宅配バンはどうするの」
「今のところ警察車両を警察の装備とエンジン無しで製作して実車を見ながら設計する予定」
「効率悪い」
「効率だけ考えるとこっちでやった方が良いんだがな」
「警察の設計図こっちで見れるから作ろうと思えば作れるけど」
「外装も変更できるか」
「できるけど・・・・・」
「なんだ、あの顔になるのか」
「うん、簡単なのはあれだから」
「そうか」
咲夜が言っている、あの顔に関しては咲夜が昨日の夜に知佳に見せてもらった計画の車の顔だった。決して悪い顔ではないのだがあの顔に関しては曲がっている部分も少なくないので向こうで書こうと思うと少しめんどくさくはあった。
「あの外装か」
「めんどくさい?」
「めんどくさくはあるが、直線だけに鋭い角があると公道走れないだろ」
「たぶん」
直線が多いと公道を走れないというのは予測でしかなく実際はどうなのか分からないのだが、現実世界の日本では、ある規定以上の角度があるのは公道を走れないのでそれがこの世界でも同じになっているのではないかと予測していた。実際は、規定はなく詳しいルールもプレイヤーが決めて行くというのがゲーム会社の考えだったので自由だった。
「結局は向こうで俺が苦労すればいいだけか」
「そこまでではないと思うけど」
「まあ、バンに関しては知佳に任せていいんだな」
「うん、明日までに作る」
「そこまで、急ぐことではないんだが」
「速いほうがいい」
「それはそうなんだが」
確かに知佳の言う通り速い方が利益を生みだし始めるのも速い訳なのだが現状しなければならないことが多く直ぐに取り掛かれるか分からなかった。
「タンクの件どうなった」
「はい」
知佳は、咲夜の電子端末にタンクの設計図を送ってきた。普段であれは、10枚20枚の量になるのだが今回はそれほど多くなく5枚だった。
「意外と少ないな」
「所詮、金属の円柱だから」
「一部が球体だがな」
「そこは、咲夜が何とかる」
「そうなんだが、この量なら今日中に終わって製作まで行けるな」
「納品直ぐにするの」
「すぐしたいんだが今週の土曜だな」
「どうして」
「実験をしておきたい」
「どんな」
「重心の」
「機械でやってるけど」
知佳は、重心のことまで考えてAIに設計させておりその数値に関しては現実世界でも作製して販売できるレベルになっていたのだが、咲夜は公道で実験するつもりではなかった。
「砂漠に持って行く」
「なぜに」
「油田さんの環境で満タンでも問題なかったら今後大量に仕入れることができる」
「その前に、パイプラインが引かれると思うけど」
「なるとは、思うがすぐとはいかないからな」
「それにどれだけ正確化見たくないか」
「それは、そうだけど」
咲夜のみたいと言うのは、この世界がどれほど現実世界に似ているかだった。今までは、製作機を除いて現実世界とそれほど差を感じることは無かった。そうなって来ると何所までリアルなのか知りたくなるのがゲーマー兼理系の考えだった。それは、知佳もそれは知りたかった。
「まあ、内容物は水なんだがな」
「採石場で入れて行くの」
「その予定だな」
「水曜日?」
「そうだな、速くても水曜に格納庫に持って行って木曜に実験になるな」
「私も行った方が良い?」
「知佳が来ないと帰れないんだが」
「なら納品する車は運転する」
「同型の車両だから問題ないか」
「うん」
「なら、俺はアメ車で牽引か」
「そう」
「了解、他の案件は帰りに決めよう」
「分かった」
咲夜は、一息ついたといった感じで冷たくなったコーヒーを口にした。飲み干した咲夜は流石に教室に戻ることにした。
「俺は戻るけど、知佳も体育行けよ」
「あと五分だけど」
「それでもだ」
「めんどう」
「今日は、梅干しだな」
「行って来る」
知佳の唯一嫌いな食べ物を夕食にするというと知佳はそそくさと部屋を出て体育の授業に向かった。
「制服のままなんだが」
先ほどまで着ていなかったベストを着ていた。




