62話 ヴィジオンの中で
時間は23時になっていたのだが咲夜は、本拠地に戻って設計の作業をしていた。機体に関しての設計は終盤に入っており計器やそれに関連するケーブルの配線図や操縦に関連する設計が残っていたがどこまで咲夜たちがどこまで自身で作るかで難易度が変化する。
「ふう、こんだけ書いても一機分にしかならないのか」
「ねえ、ちょっといい」
咲夜が戻ってきた時には知佳はログアウトしており置手紙が咲夜の机に「飛行艇の続きをやる」とだけ書かれた手紙が置いてあったので知佳が戻って来ると思っていなかった咲夜は、肩を上げた。
「びっくりした」
「そんなに驚くこと?」
「そりゃ、ログアウトしてたやつが急に起きてくるんだから驚くだろ」
「そう、ねえプロペラの設計は終わってるの?」
「エンジン作ったときに作ってるから終わってるけど」
「そう」
「どうしたんだ」
「プロペラ改良したほうがいろいろ便利だから」
「そういうことか。付け替えは問題ないぞ少し手間だがエンジンには装着されていないし」
「なら、今から見てもらえない」
「わかった」
咲夜は、想定よりの早くログアウトすることになったがさほど問題は無かった。
ーーー
ログアウトすると目の前に知佳がいた。咲夜が来てからは自室でログインしている知佳だが長くログインするつもりはなかったようなのでこの部屋からログインしたようだった。
「それで形状はどうするんだ」
「元々は、4枚の機体でしょ」
「ああ、それを5枚のカーボン複合材に変える」
「それでどうなるんだ」
「燃費、速度とかがいろいろ上がる」
「デメリットは」
「設計の難易度が上がる」
知佳は、いつもの様に机に情報を映し出すと原型のプロペラに関する情報と変更予定のプロペラの2種類が表示されたのだが明らかに後者の方が情報が多くさらにプロペラの角度が変化する機構が付け足されておりさらに複雑化していた。
「これ、追加の量多くない」
「仕方ない、ブレードだけでも結構な量になる」
「まあ、覚えるしかないんだろうけど」
「そう」
咲夜は、渡されたタブレットでどんなことが書かれているのか確認した。中には設計図だけでなく空気の流れを計算したものまで入っており明らかにこのために作ったものではないように感じた。
「おい、もしかしてだが」
「ばれた」
「だよな」
「だって、こっちの方が実験できるし」
知佳は、今設計している水上機に使うプロペラの実験をしたいようだった。確かに実験をするには、丁度良い機会だがそれでも問題が発生する可能性もあるので隠したかったようだが咲夜は、知佳に言われた際にどのような機体かを確認しておりその機体も可変することが出来ることをおぼえていた。
「まあ、良いがいろいろめんどくさいぞ」
「仕方ない」
「そうは、言うがな」
知佳のこのような行動は今に始まった話ではないので諦めてさらに確認したのだがさほど覚えるのに苦労するような仕組みではなかった。
「出来そう?」
「できるとは思うが、それよりコックピットはどうするんだ」
「どうするんだとは」
「設計が全く進んでないし、どこまで自分たちで作るかが問題だな」
「そう言うことね、ちょっと貸して」
知佳にタブレットを戻すと何やら操作をしてから咲夜に戻した。そこには、コックの計器や配置までが詳しく書かれており進めて行くと各計器まで詳しく書かれていた。
「これ、フルで自分たちで作るのか」
「うん、できそうだけど一部はヴィジオンのを使う」
「ここまでできてるのにか」
「仕方なくて、ここは使わざる負えなかった」
知佳は、計器全体が映る画面に変えると明らかに昔の機体なのにそこだけは最新の機器だった。
「何これ?」
「管制に関係するパーツみたいで結構先まで買うしかないと思う」
「わかった、そのほかは自分たちでやるのか」
「うん」
「これ、また新しく設計図書かないといけないパーツが多いな」
「それは、仕方ない」
「分かった、今週中にプロペラには取りかかるけどコックピットは、早くても来週だな」
「それは、わかってる」
「まあ、来週がテストだからまだ助かったな」
「そうね」
「後で、それ送っておいて」
「もう、送ってる」
「ありがとう」
「うん」
咲夜は、この後寝るまで知佳が、作った設計図と睨めっこして覚えていた。一方で知佳は、機体の設計ではなくエンジンの設計をやっていたのだが、形状は分かっても細かな寸法が分から良い上に制御するためのプログラムも必要となるのでやることは満載だった。
ーーー
咲夜は、あの後も設計図を覚え続けいつも寝ている時間まで覚えていた。覚えることに関しては難易度は高くないのだが、角度が一定ではないので断面図を覚えるしかないのだがその量も多いので1つのパーツにしては初めてなぐらい時間が掛かっていた。
「どれくらい覚えたの?」
「後4分の1」
「結構覚えてる」
「可変機構はまだ覚えてないからプロぺは、今日中に覚えれると思うから今夜からは手を付けようと思えば付けれる」
「そう、先に1枚だけ作って」
「アルミとかでいいか」
「うん」
「了解、設計図が出来たら作っとく」
「わかった」
「それより帰らなくても良いのか」
「待つ」
「分かった」
テスト週間でコースによっては午前で授業が終わっており知佳は終わったのだが咲夜のコースは後、1限授業を受けてから帰ることが出来るのだが知佳はこの部室で咲夜の授業が終わるまで待つみたいだった。
「待っても良いが何するんだ」
「何もしない」
「そうか」
「そう」
「水上機のやつ何もできないのか」
「できないことも無いけど遅いから嫌」
「そうか、もう少しで授業始まるから戻るな、帰りはどうする」
「ここ居る」
「迎えに来るわ」
「分かった」
咲夜は、教室に戻った。と言っても授業中は、暗記時間にしているので教師の話は余り聞いていないのだがそれでもテストに関係することも話しているときがあるので時たま聞いてはいた。そんな、面白くない授業のおかげか知佳の家でやるときよりは順調に作業が進んでいた。授業が終わるころには断面図が残り2枚になっており家に帰るまでの電車で終わる量だった。
ーーー
授業も終わり部室に戻ると知佳が鍵を閉めていた。
「支度は、済んでたか」
「うん」
「帰るか」
鍵は、部活が集結している棟の玄関に収めるだけだった。その鍵も納めて最寄り駅まで歩いていた。
「どこまで行ったの?」
「後、2枚だな」
「断面図で」
「ああ、でも書き写さないといけないから予定通りになりそう」
「分かった。出来たら部屋の机に置いといて」
「それは、良いけどそうするんだ」
「飾る」
「飾るのか。まあ良いやそれで機体に関しては作るのか?」
「あの機体は作っても良いけど」
「良いけど、やっぱり金額か」
「うん、1機作ったら5億Gは掛かると思う」
「それぐらいで済むか?俺は、7~8億Gは掛かると思うだが」
「作ってみないと正確な金額は出ない」
「そうだな、そっちはどうだ」
「微妙」
知佳の作業に関しては機体は、造形も断面も他の航空機から作成しているので順調ではないが比較的AIを使うことで順調ではあった。それに対してエンジンは、まったく進んでおらずこちらもAIを使うことで何とか進んでいたのだがそれでも順調とは言えなかった。
「1番の問題は何だ」
「配線」
「配線か、それはヴィジオンの中のあれで出来ないのか」
咲夜のあれは、ヴィジオンがある程度の初期の補助のために準備していた物ことで咲夜が作った車両に関しては現状使用しており同じように航空機にも用意されていることは咲夜は確認していた。
「できると思うけど小型機で使わないのならあまり使いたくはない」
「そうか、でも配線はAIとかに相談してやるか専門資料しかなくないか」
「そう」
「エンジン自体の構造は終わったのか」
「終わってないけど、さっき専門誌に断面図と言うか各パーツを同じエンジンを詳しく説明してる本があったから買った」
「そうか、なら問題ないな」
「あとセンサーの問題もある」
「それは、厄介だな」
「だから実験で、小型機使いたい」
「分かった結局、作る上にあいつは実験機になるのか」
「3機は作りたい」
「内訳は」
「自家用が2機、実験機が1機」
「さっきまでの金額の話はどこ行った」
「知らない」
小型機は、作るか作らないかだったのが結局実験機と言う初めての機体に関しては重大な使命を負わされて作製することになった。現実世界では、膨大な資金を投じてやるものにも関わらず。




