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第8章


僕の意識は、薄暗い部屋から、色彩豊かな夢の世界へと誘われた 。壁には鮮やかな大漁旗が飾られ、部屋全体が祭りかのように賑やかな雰囲気に包まれている 。そこは、僕自身のソムニウム、深層意識が作り出した空間だった 。僕は、この奇妙な夢の世界を探索しながら、僕の眼窩に組み込まれたAI、アイボウと共に、記憶の深淵に隠された「メンタルロック」を解除しようとしていた 。


メリーゴーランドの惨劇の凶器がアイスピックであり、それがみずきの手に握られていたこと、そしてみずきが最有力容疑者であるという事実は、僕の心を重く圧し潰していた 。ボスは、6年前の事件と今回の事件は模倣犯である可能性を示唆したが、それが国家機密に関わるため、これ以上は話せないと頑なに主張した 。僕は、みずきが被害者の娘であることを知り、僕自身の失われた記憶と事件の繋がりを感じていた 。


アイボウは、僕の突然の拒絶に苛立ちを覚え、命令だと告げた 。アイボウは僕の言葉に抵抗したが、僕が「かわいげのない奴め」と呟くと、彼女は僕の評価への不満を露わにした 。僕が「最近ちょっと運動不足でな」と彼女の姿を見て呟くと、アイボウは「ふざけてるのか…?」と問い返した 。


僕の意識は、アイボウとの出会いの記憶へと引き戻された 。それは、今から5年前、エンジニアのピュータから、僕の左目にAIが組み込まれることになった日だ 。そのAIの正式名称は「AI-Ball」だが、「アイボウ」と呼んでほしいと言われた 。それは、最先端のナノテクノロジーと「ウジャトシステム」というメインプログラムが組み込まれた、自律制御型の優秀な人工知能だという 。ピュータの言葉が記憶の中で響く。「以来、こいつは俺の左目に棲みついている」 。アイボウは、僕の左の眼窩に組み込まれ、僕の視覚と意識に直接接続されているのだ 。彼女の仕事は情報収集と分析、そして無線通信を用いてネットワークにアクセスし、様々なコンピュータをハックすることだという 。左の眼窩にいるときは、人工神経を介して会話するため、声を使わず脳内で直接コミュニケーションが取れるというその能力は、捜査において極めて有効な手段となるだろう 。


僕は、アイボウに改めて、なぜこの夢に出てきたのかを問い詰めた 。彼女はボスに報告したいことがあったと答え、僕に話してからボスに伝えるよりも、二人同時に聞いてもらう方が効率が良いと考えたようだ 。僕はその考えに「結果的には大幅なタイムロスにつながってると思うが?」と皮肉を込めて呟いたが、アイボウは「だったら黙って聞け」と僕をいなした 。


そして、アイボウは、驚くべき事実を告げた。「通報者が誰なのか判明した」 。ボスが「えっ…?」と驚き、僕も「なんだと…?」と息を呑んだ 。通報者。事件の第一発見者。その人物こそが、事件の真実を知る鍵となるはずだ 。アイボウは、二人の反応を無視するように、淡々と続けた。「通報に使われた公衆電話の場所はわかっていた」 。それは、廃墟と化した遊園地『ブルームパーク』の近くにあった 。アイボウは周辺にある監視カメラの映像を調べた結果、通報者が誰なのかが判明したという 。夜ともなれば人通りの少ないその場所で、午後9時過ぎに通報があったというその人物の顔は、警視庁のデータベースに登録されている相貌だった 。


僕は「何者だ…?」と問い、アイボウは「真下応太。男性。24歳」と明確な情報を提示した 。彼の顔が僕の視覚に鮮明に映し出されたが、僕には見覚えがなかった 。アイボウは住所をマップにプロットしたと告げ、僕は真下応太に話を聞きに行くという次の任務を理解した 。



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