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初恋のお姉さんが「〝何もしてない〟のに彼氏に捨てられた」と泣きついてきたので、保護してしまった  作者: シゲ ノゴローZZ


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第5話 チップ徴収のプロ

 いくら就職させようとしても、手毬姉ちゃんの腰がごんぶとすぎてピクリとも動かない。このままでは破滅エンド待ったなしなので、仕方なくバイトをさせることにした。分かってるよ、職歴も貯金もない二十八歳はバイトなんてしてる暇ないってことぐらい。でも何もしなかったらそれこそ詰みじゃん? 何もできないニートがなんとか就職できたとしても、速攻で辞めて本格的に詰むのが見えてる。だったらアルバイトで慣らしたほうがいいでしょ、辞めたところでノーダメみたいなもんだし(辞めグセがつく可能性もあるけど、そんなこと言ってられん)。

 で……なんとか居酒屋バイトをさせることに成功したんだが……手毬お姉ちゃんの様子がおかしい。いや、おかしいのはいつものことなんだけど、おかしさのベクトルが逆というか、真っ当がゆえにおかしいというか……。


「バイト行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい」


 バイトを初めてから一週間ちょっとが経過したわけだが、今の見た? ルンルン気分でバイトに向かって行ったよ? 最初はサボって遊び呆けてるもんだと思ってたけど、手毬お姉ちゃんの実家に連絡がいってないことから、問題なく出勤してることが確定している。

 ……いや、さすがにおかしいだろ! 髪を乾かすのさえ面倒臭がる手毬お姉ちゃんが、真面目に働くなんてありえない! あっ、ちなみにお姉ちゃんの髪は、俺が乾かしてあげてるよ。うん、面倒がる理由がよく分かったよ、長髪は乾かすのマジで大変だわ。洗うのが大変ってイメージだったけど、実際は乾かす方がよっぽど面倒だと思うよ。かといって短くしろとは言えんよね、髪なんてデリケートな問題だし。

 ……面倒だけどとりあえず調査してみるか、お姉ちゃんが真面目に出勤するカラクリについて。え? 普通に働いてるだけじゃないかって? 馬鹿野郎、履歴書を書かせるだけで一苦労したんだぞ! 『虐待だ! お姉ちゃん保護法違反で、一生養わせてやる!』とか喚き散らされて大変だったんだからな。そんな女が、居酒屋みたいなしんどそうなバイトに、軽い足取りで向かえるわけないだろ!




 というわけで俺は友人に調査させた。友達をタダ働きさせるなんて酷いって? 一人飲みが好きなヤツだから、問題ないだろう。美人店員がいる店なんだから、むしろ感謝してほしいぐらいだ。


「どうだった? 調査結果は」

「結論から言うと、仕事自体は真面目にしてた」

「なぬっ!? お前っ、別の美人店員と間違えてないだろうな! 言っとくが手毬お姉ちゃんは一般的な女性とは比べ物にならない美貌だぞ」

「お姉さんはキレイなのに、お前はとことんキモいな。安心しろ、宮内って名札が着いていることを確認してる」


 おお、やるじゃん。……え? じゃあマジでお姉ちゃん、真剣に働いてるの? 洗脳されてるの? 開頭手術しちゃった? チップでも埋められた?


「あのお姉ちゃんが真面目に働くなんて……。下着を上下バラバラに着用してるお姉ちゃんが……」

「なんで知ってんだ? ああ、まあ、同じ屋根の下ならそういう関係になるわな」

「ちげーよ! 洗濯を全部押し付けられてるから知ってんだよ!」

「……居候なのに家事やってくれないのか? いや、それ以前に男に下着を洗わせるとか……お前それ男として見られてないだろ」


 ……お前を……殺すっ……。

 っとと、いかんいかん、カフェ内で殺人なんて隠蔽しようがないだろ。冷静になれよ、殺《や》るなら山で自ら穴を掘らせてそのまま……。


「んなことより、俺の報告はまだ終わってねえぞ」

「え? 真面目に働いてる以上の朗報があるのか?」

「朗報というか違法というか」

「いっ、違法?」


 お姉ちゃんが違法行為を……?

 ………………ゴメン! してそう! 普通にしてそう!


「客にチップを貢がせてるみたいだぞ」

「えっ? 日本で?」

「まあチップの受け取り自体は違法じゃないが、多分店の就業規則的にはアウトだろうな。そこまで指導してないだろうから、即クビってこたぁないだろうけど」


 お姉ちゃん外見だけは美人だもんなぁ……履歴書スッカスカのアラサーだけど。


「じゃあ違法ってなんだよ、脱税か? 年間二十万越えなきゃセーフだろ?」

「普通に越えそうだぞ?」


 ……イケない才能がお有りのようですね。よくよく考えてみれば俺に寄生してるわけだし、タカリについては天才なのかもしれない。年齢的に今からキャバ嬢とかは厳しいかもしれんが、俺から離れても食っていけるのでは? いや、それをしようとして彼氏にフラれたんだったな。


「それ以前に貰い方がいけないな」

「……と言いますと?」

「色々やってんだろうけど、俺が知ってる範囲で言うと、下着の色当てチャレンジとかやってたよ、ちなみに俺は負けて一万失った」

「……あん?」

「白か黒か聞かれてさ、黒って答えたら白のブラジャー見せられてさ……へへ、一万も失ったのに悪い気しねえや」


 ……やはり殺すべきか? というか今すぐにでも辞めさせるべきだな、不健全すぎるし、何よりも悔しい。俺以外にそういうことしないでほしい。


「でさ、さっきの加藤の話を聞いてカラクリ分かったわ」

「ん?」

「ほら、上と下で下着バラバラつってたろ?」

「あー……なるほど」


 小賢しいにも程がある……ただのグータラかと思えば、戦略だったのかよ。たしかに言われてみれば不思議だったんだよな。下着の上下バラバラな女性っておそらく、床に散らばってる服を適当に手に取る怠け者だろ? 手毬お姉ちゃんの場合、俺がキチンと畳んで、上下揃えた状態で収納してるわけじゃん? だったらバラバラになるわけないじゃん、逆に面倒じゃん。つまり下着ギャンブルのために……。

 うん、とりあえずバイト辞めさせようかな、うん。こんなことしてたらその内絶対にトラブルになるし、ストーカー客が現れてもおかしくない。何より俺が嫉妬で頭の血管プッツンしちゃう。


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