第21話 リテラシーゼロ
三ヶ月も続いたんだから上等かな、手毬お姉ちゃんだし。ちなみに辞めてからも男性バイトとは食事に行ってるよ、魔性の女め。
「次のバイトはどうするの? 借金持ちさんよぉ」
「配信が伸びてるから少しの辛抱だよ」
同僚を独り身にしてしまった事件を話したら、少しだけ視聴者が増えたらしい。あの件を武勇伝みたいに語る神経が分からんけど、それで喜ぶ人たちの神経も大概おかしいと思う。
「なんで伸びたの? 俺配信見てないから分かんないんだけど」
「なんかね、私の応援が刺さったらしい」
どゆこと? 応援される側でしょ、貴女。応援っていうか、尻を引っぱたかれるべきだよ。
「同僚の男の子が悶絶してる時に応援したって話したじゃん? 『立ち上がったらカッコいいよ、これ耐えてこそ男だよ』みたいな」
「あー、うん、そうだね、してたね」
応援じゃなくて煽りな。
「それで興奮を覚えた人達が常連視聴者になったわけ」
「へー、世も末だね」
分からんなぁ、詳しく聞いたのに何も分からんかったぞ。まあ視聴者が増えるのはいいことなんだけどさ。
「とはいえ収益化はできてないんでしょ? ギフトだって減ってきてるし」
減ってるとはいえ今のところはまだ、消費よりも届くペースのが早いけど。
「大丈夫、そろそろゲーム実況に手を出す予定だから」
何が大丈夫なんだろう。別にゲーム実況したから伸びるってわけじゃないし、むしろ女性目当てで来てる人はゲームなんてさほど興味ないんじゃない? 雑談の方がウケそうなもんだが。
「ゲーム買う余裕なんてあるの?」
「ふふふ、姉ちゃんに秘策ありだよ」
「そっか……」
言い出したら聞かんし、求人情報誌だけ渡して放置しよ。本当なら無理にでもバイトさせなきゃいけないんだけど、逆恨みで好感度下がっても嫌だし。
会社の昼休み、特にやることがないからスマホでボーっとSNSをチェックしてたわけだが……なんか見覚えある人がタイムラインに流れてきたんだが?
なんで? なんで無名配信者の姉ちゃんがタイムラインに? なんで時の人になってるの? めっちゃ気になるけど、昼休み終了のチャイムがなっちまった。
よし、帰ったら問いただそう。絶対悪い理由で話題になってるもん、間違いない。
「姉ちゃん、なんかネットで話題になってない?」
「同時接続数一万越えたよ、一時的にだけどね」
よほど嬉しいのか、ドヤ顔で親指を立ててきた。聞き間違いかな? 同時接続数一万越えだって? 嘘こけ、水着で配信したってそうそう一万もいかないよ。BAN覚悟で乳首でも出せばワンチャンあるかもしれんけど。
「何それ? 炎上でもしたの?」
「いやー、迂闊でござった」
あっ、マジで炎上なんだ、冗談めかしたつもりだったのに。
「何したのさ、もー」
「そんなに悪いことじゃないよ? ほら、お姉ちゃんさ、ネットで副業探してたじゃない? データ入力とか」
「してましたね」
割のいい副業が見つからない(そもそもスキルがない)とかなんとかボヤいてたのは覚えてる。何? 副業で炎上したの?
「自作ゲームのデバック、いわゆるテスターを募集してたんだよ」
「インディーズってヤツ?」
「うん。んで、ちょうどゲーム実況のネタに困ってた私がその副業を受けたと」
なるほどなぁ、タダでゲーム実況できるどころか、報酬まで貰えると。うん、うん、それは素敵なお話だね。でもさ、それってさ……。
「もしかして依頼者に無断で配信を?」
「イエス! 依頼者に配信見られて大炎上だよ」
なんでヘラヘラしてるの? えっ、これワンチャン逮捕とかない? 俺、法律に関しては無知だからアレなんだけど、普通に罰金されんじゃね?
「依頼者さんが配信中に電話凸してきてさ、あの時の私はそこまで悪いことをしたと思ってなかったから、『詫び乳いりますか? 余裕でFカップ以上ありますよ』とか冗談言ったの。そしたら凄い勢いで炎上したねぇ。あっ、依頼者さんは最終的に許してくれたよ? 配信禁止と依頼取り消しを言い渡されたけど」
そっか、依頼取り消しで済んだんだ、それならよかった。でもさ……。
……姉ちゃん、顔出ししてますよね? っていうか本名で活動してますよね? これドエライことでっせ。絶対実家晒されるやん、こんなん。下手したら俺にも火の粉が飛んでくるってばよ。




