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つつがなく 〜湯灌にまつわる二十の小話〜  作者: 藤紫


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6話目 『通信簿』

葬儀は人生最後の通信簿。そんな風に思うことがございます。


その告別式は斎場で一番大きな式場を使って行われました。


『その花はこれより中に、それは…とりあえず外で…』


喪主様は届く供花や花輪の並び順に苦慮していらっしゃいました。なにせ供花が葬儀会場内に収まらないのですから。会社名の書かれた供花や花輪が次々に届けられ、所狭しと並んでおります。

やっとお花を並べ終えたのは開式5分前。喪主様はハンカチで額を押さえながら席につかれました。


告別式が始まります。僧侶の数は5名。静かな会場のなかに厳かに入ってこられます。


会場が静か……。


親族を除けば、会葬者は僧侶と同じくらいの人数でございました。誰も座らないパイプ椅子が整然と並んでいます。

焼香の儀もすぐに終わってしまい、僧侶の読経がいつもより長く感じました。

式が終わると、受付では喪主様が余ってしまった粗供養の返品について話していらっしゃいました。


その会場内に収まらないほどの、会社名の書かれたお花が届いたこの方の人生は、お仕事第一だったのでしょうか。


一方、一番小さなお部屋にご安置させていただいたお婆ちゃん。


『婆ちゃん、無宗教だから』


と祭壇もなく、どちらに安置させていただこうか確認すると


『部屋の真ん中につれてきてくださる』

『お棺の周りにぐるっと円状に椅子を並べてくださるかしら』

『母さんが好きだったからBGMに童謡を』


とのこと。

お部屋の真ん中に故人様が、その周りを囲むようにご親族の皆様方。それを包むように童謡のオルゴール曲が流れておりました。故人様は学校の先生だったようで、親族以外にも、教え子の方たちが、途切れることなく訪れておりました。


『婆ちゃん、お疲れ様。』

『センセイ、私、孫ができたんだよ。私もセンセイと一緒でおばあちゃんになっちゃった。』

『ありがとうございました。』


優しい言葉が繰り返され、喪主様は目尻をハンカチで押さえておられました。

教え子の方々からこんなに慕われていらっしゃるこの方も、もしかしたらお仕事第一だったのかもしれません。

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