5話目『糧』
どんな職業も売り上げは大切です。生きている人には糧が必要でございますから。
葬儀は人が亡くなった後、葬儀社の営業担当がご遺族様と相談をして決めていきます。例え深夜に亡くなっても、ご遺族様が看病疲れで疲弊していようとも、眠れない夜を幾日も過ごしていようとも。
『こういった祭壇がございまして…』
『お棺はこれなどがよろしいかと…』
『粗供養は皆様、こちらを選ばれる方が多いですね…』
『湯灌をされますと、故人様も喜ばれるかと…』
ご遺族様は
『こういったことはよくわかりませんので、お任せいたします。』
とおっしゃる方が多くいらっしゃいました。
営業担当は少しでも高く利益が上がるよう
『故人様のために』
という言葉の元、立派な式を挙げようと致します。
湯灌を行うことが決まりますと、営業から電話がかかってまいります。それこそ、深夜であろうと、入浴中であろうと、運転中であろうと。そこで施行のスケジュールを確認し、斎場から斎場までの移動時間を考慮し、
『〇〇時からでしたら大丈夫です』
と答えます。
『もう1時間早くできないの?』
と少し苛ついた声の営業。
なんとか調整して了承の意を伝えます。
(無理なスケジュールで先輩たちに怒られるかなぁ)
なんて考えながら、深夜2時過ぎの待機携帯を見つめました。
ご遺族様、ご会葬者様、そして故人様に満足していただけるよう、営業に苛つかれ、先輩に嫌味を言われながら時間に追われ施行をして参ります。
生きている人には糧が必要でございますから。
それでは、次の斎場に参ります……




