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つつがなく 〜湯灌にまつわる二十の小話〜  作者: 藤紫


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4/20

4話目『低気圧』

その日は朝から曇り空でございました。天気予報では夕方から雨になるとのこと。故人様を偲ぶ涙雨でしょうか。

コンビニの駐車場でおにぎりを食べながら、なんとなく頭痛を感じていました。低気圧のせいでしょうか。短い休憩が終わり、湯灌車を運転して斎場へ向かいます。次の故人様は脳梗塞で亡くなられた40代の男性。ポツポツとフロントガラスの上で水玉が弾け始めました。斎場へ近づく頃には、頭に何かを突っ込まれているような痛みになっておりました。

『ちょっと、大丈夫?ひどい顔色だし、汗もすごいよ』

助手席からかけられた声もなんだか遠く聞こえます。

『ちょっと頭痛が…』

『そこのコンビニで止めて。運転変わるよ。』

『すいません』


施行が始まり、故人様の洗髪を行っておりますと、視界が霞むようになってまいりました。

ご遺族様は早すぎる死を悼んでおられましたが、喪主様であられる奥様だけは、強い視線で故人様の顔、というより頭部をご覧になっていらっしゃったように記憶しております。記憶も曖昧になりがちな痛みの中で、あの奥様の目だけが、妙に頭に残る一日でございました。

斎場の外では雨が降り続いておりました。


斎場から遠ざかるにつれひどくなる雨に反比例して、頭痛は治まって参りました。


低気圧による頭痛がひどかった一日でございました。


それでは、次に斎場へ参ります……

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