code07:vision06 響演
こちらを交互に見比べて。
北川が、ノートPCに目を落とす。
「で、このあと」
「通路で男女の会話が聞こえてきて。
事案に近い内容だったから尾行した」
「どのように?」
また、こちらを交互に見る。
高桐が簡潔に答えていく。
「ホテル街へ行く道だったから。
立樹とカップルを装って尾行した」
「装って……廃ビルに?」
「うちが追うのは、店から連れ出したあと、
車に乗せて現場から逃走する事案だが、
何かありそうだと思って。
男女が入ったビルに、続けて入った」
「勘が当たったというわけですね」
「ビルの5階で女性の悲鳴が聞こえた。
男が数人、騒ぐ声も。暴行だと思った。
立樹に待機して女性を保護するよう伝え、
自分が現場に突入した」
「……単独行動ですね」
「すぐ白石が来るのは分かってたから」
「加勢があるなら気持ちは分かりますが。
白石警部を待つ選択は無かったのですか」
「立樹も止めたが。
被害を防ぐ方が先だと判断した」
「腕に覚えも、おありでしょうしね」
「加勢が来て、現場はすぐに収まった。
一瞬だった」
「まもなく合流してからは滞りなく……
ただ、負傷されましたね?」
鋭いレンズが、高桐を射抜く。
涼しい顔で受け止めている。
「刃物を振り上げた男の前で、
女性が転んだから。とっさに庇った」
「高桐警視がいなければ、
女性が切られていたというわけですね」
「だと思う」
「立樹警部補は、その時は?」
三朝は女性を保護し、倉橋が
所轄へ送って言ったことを伝えた。
北川警部はキーを忙しく叩いた後。
「わかりました」
静かに言いながら、PCを閉じた。
「おふたりの単独行動……。
仕方ない部分もあるかと思いますので、
今回はこれで納めます。立樹警部補は
特に次から注意なさってください」
なんとか終わった……みたい。
少しだけほっとして。
高桐と、そのあと北川警部を見た。
そこはかとない違和感が、やはりあった。
初対面の相手に抱く違和感。
多くの場合は既視感じゃないだろうか。
どこかで会った?
覚えはない。
思い出せないが、知っている。
「監査というと緊張したかと思います。
楽にして下さい。私もちょっと解除します」
解除?
北川は眼鏡を取ってヘアクリップを外した。
まっすぐな髪が、はらりと落ちた。
違和感の正体が、判明した。
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