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LOVERSコード3neon―1係応援案件編―  作者: 蒼貴みかげ


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code07:vision05 審理のレンズ

 監査当日。

 高桐に続いてエレベーターに乗った。


「監査って、なに訊かれるんでしょうか」

「受けたことないのか」


 三朝はうなずいた。

 本格配属から1年少し。

 監査に引っかかった事はなかった。


「捜査について訊かれるだけだよ。

ありのまま話すだけだ」


「ありのまま……」


 それで済むんだろうか……。

 『監査』という響きだけで身構えてしまう。


 エレベーターが、5階で停まった。

 オープンオフィスに職員が散らばっている。


 カウンター前を奥へ進んで。

 『監査室・1』の扉を高桐がノックした。


「どうぞ」


 中から女性の声が返ってきた。

 

 高桐は躊躇なくドアを開け、入室した。

 入るしかないので続き、ドアを閉めた。


 小ぶりの部屋に、テーブルとイス4脚。

 A3程度の型ガラスの窓が1つ。

 

 奥の席に、ノートPCを広げた女性がいた。

 グレーのスーツに、黒スクエアの眼鏡。

 髪はまとめて、クリップで止めたスタイル。


「お呼び立てしてすみません」


 見上げるが、ニコリともしない。

 声と同じく、硬い視線――。


 高桐と同じくらいの年齢だろうか。

 少し年上に見えた。


「立樹警部補も、隣にお掛けください」


 遠慮なく椅子に座った高桐を見て。

 三朝は、女性の正面に座った。


「JPO警務部監理課、

捜査監督係の北川結衣と申します」


 スッと、三朝にだけ名刺を出した。

 『警部』と書かれている。


「はじめまして……」


「先日、おふたりが行った渋窪区

月岡町の廃ビルでの所轄事件について

お伺いしたく、お越しいただきました」


 北川警部を、三朝は。

 失礼ながら、じっと見つめてしまっていた。

 言葉は半分、耳に入っていなかった。


 薄い違和感を、また覚えていた。


「先ほど白石警部に聞き取りを行いました。

おふたりにも経緯をお話いただきます」


「どこから?」


 高桐はあくまで平然と。

 どころか、割と大きな態度で答えている。

 大丈夫なのだろうか。


「まずクラブ・アリアでの張り込み捜査。

こちらは概ね問題ないのですが、1点。

――立樹警部補」


 ぴしっと。

 音がしそうな視線で、三朝を捉える。


「張り込み終盤の23時50分頃。

ひとりでお手洗いに立たれましたよね?

これは何故ですか?」


 なぜ……と口の中だけで声がこもる。

 

「事前に、単独行動禁止の命が

出ていませんでしたか。高桐警視から」


 マンガなら目の奥が光るシーンだ。

 三朝は高桐をちらっと見て、

 また北川警部と目を合わせた。


「そのとおりです」

「では何故、席を立ったのでしょうか」

「それは……」

「白石警部は止めた、とお聞きしました。

立樹警部補の事情をお聞かせください」


 アリアのトイレ前通路が浮かんだ。

 あの時……。


「通路から……視線を感じまして」

「視線」

「誰か見ていたような気がして……

席を立っていました。申し訳ありません」


 まるでカメラレンズがズームするような間。

 北川警部は三朝の目を見通して言った。


「私に謝る必要はありません。

確認のため通路へ行ったという事ですね。

なるほど」


 北川警部は、ノートPCのキーを叩き。

 また視線を上げる。レンズのような視線。


「で、誰もいなかった?」

「はい……」


 当夜以来、何度か思い返す、アリア。

 視線の残滓だけが、消えない気配。


「では次は、おふたりにお聞きします。

通路で口論のようになりましたよね」


 高桐と少しだけ顔を見合わせ。

 また前に向き直った。


「単独行動してしまったので……」


「何かあれば白石が責任を感じると。

単独行動の危険性を指導した」


「立樹警部補は何と?」


「あの……」


 言わないとダメだろうか。

 口走りかけた、あの言葉まで。


「立樹は非を認めて謝った。

話はそれで終わりだ」


 高桐が横から言って。

 北川警部のレンズがスライドした。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

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