code07:vision04 召集
半時間ほどで高桐奈守が戻り。
三朝の報告書に『承認』を出すと。
高桐がソファに招集をかけた。
「いま奈守と話してきたが。
昨夜は廃ビル以外に事件は起きなかった。
2週間の間隔に意味はなかったか、
理由があって中止したかは分からないが、
張り込みの規模は、一旦縮小しようと思う」
高桐と並んだ奈守が、こちらを見る。
「立樹も思わない?
10日ほどの張り込みで、高桐が取った
『誰かを追いかけてた』以外、
何も情報がないなんて」
「たしかに。薄いですよね」
三係総出でクラブへ通い詰めた。
聞こえたのは、単なる噂レベルの話のみ。
普通、もう少し情報があるものだろう。
「白石が解析したスマホもそうだ。
徹底的に情報が削除してあって、
こっちが追えない作為が見える。
以後、張り込みは捜査部に一任して、
俺らは組織を洗う形にしようと思う」
「第2フェーズですね……」
捜査資料が頭に浮かんでいた。
盗難車を用意し。
SNSで実行犯を募り。
手練れのプロが殺害を行い。
犯行車両は即時売却。
ネット海からは痕跡を完全消去。
どう考えても。
組織的犯罪の気配がしている。
「立樹はさ」
奈守に目を向けると。
思わぬ強い光が奥に見えた。
「被害者のスマホ、気にしてただろ。
置いた意味、あるよなって。
あれ――どう思う?」
思わずふたりを見比べ。
たまらず目を伏せた。
気軽に訊いているように聞こえるが。
尋問のプロだから、この2人は。
オレンジPCで穴が開くほど見つめ倒した。
スマホのステッカーを思い出す。
ゲーム機を持たない2人の被害者の、
なぜか共通したゲームキャラのステッカー。
――でもな。
「すごくですね」
次に脳裏に浮かんだのは。
第一事件、高架下トンネルで録れた
監視カメラ――黒衣の遺体遺棄者。
「儀式的――でしたよね。
あの防カメ映像で見た犯人。
被害者の『遺棄のしかた』が」
2人が自分を見ているのが分かる。
「遺体を置いて、しばらく座り込んで。
またゆっくり立ち上がって――
その時にスマホを置いたんでしょうね?
どういうわけか裏にむけて」
この先どう答える……?
「『返すよ』って意味だったのかなって。
胸の上に手向けるように、被害者に」
高桐奈守は、しばらく黙っていた。
光に反射した粒子の流れが見える。
ただのホコリだが。
「え、どういう意味?」
身を乗り出すように、奈守が訊いた。
実際、困って、奈守を見返す。
「スマホって『その人そのもの』――
みたいな所が、あると思うので。
犯人にとっても特別なアイテム、
なんじゃなかったのかな……と」
「……返す、か……」
高桐の呟きが、妙に耳の奥に残った。
分かっている。2人とも納得してない。
自分だって、そう思わないのだから。
いや――?
『返す』というのは、合ってる……のか?
ステッカーが偶然か、意図的か。
意図的というなら『犯人の』という事に。
それなら言えなかった。
確証のない事を安易に持ち出して、
チームに混乱が起きては、いけないから。
「なんにせよ」
高桐の目も、どこかを見ていた。
「方針転換で調整だな」
「一係か? いよいよ来るか」
以後。
上条の采配のもと、司令部による
大がかりな組織犯罪捜査体制が、
組まれる手筈が整えられて行った。
捜査部では、従来通りの捜査継続。
大きな進展はもちろんなかった。
そして2日後。
5月6日の夕方に。
JPO警務部監理課から三係へ。
監査召集が、かかったのだった。
『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。




