第8話:ピアノと美咲のトラウマ
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幼なじみ・美咲のトラウマを知り、文化祭の有志ステージへの参加を提案した拓真。
「途中で指が止まる」という強い恐怖に囚われた美咲の心をほぐすため、拓真がとった驚きの特訓方法とは……!?
「有志ステージの枠、生徒会から一つ取ってきたぞ」
「ちょっとたくま! 本気で言ってたの!?」
翌日の放課後、生徒会室からエントリー用紙を持ち帰った俺に、美咲が目を丸くして詰め寄ってきた。
「当たり前だろ。言っただろ、最高の舞台を用意してやるって」
「無茶苦茶だよ……! 私、舞台に立ったら昔みたいにパニックになって、指が動かなくなっちゃうかもしれないんだよ!?」
不安と恐怖で震える美咲の手。
彼女の頭上には依然として『抑圧度:90%』の文字が重く覆いかぶさっている。他人の視線、完璧を求められるプレッシャー
それが彼女の指を縛り付ける鎖だ。
「じゃあ、まずはリハビリから始めるぞ。ついてこい」
俺が連れてきたのは、学校の裏手にある誰も来ない古い中庭だった。
木漏れ日が落ちるベンチの前に、俺は持ち込んできたポータブルキーボードを置いた。
「ここで弾くの……?」
「ああ。ここなら誰も見てない。評価する審査員も、手拍子する観客もいない。弾きたいように弾けばいい」
美咲は戸惑いながらもベンチに座り、キーボードの鍵盤にそっと指を乗せた。
ポロン――。
澄んだ音が中庭に響く。
美咲は慎重に旋律を紡ぎ始めるが、やはり曲の途中で表情が強張り、指がぴたりと途絶えてしまった。
「やっぱり……ダメ。どうしても、あのコンクールの時の視線が頭をよぎって……」
美咲が諦めたようにうつむく。だが、俺はニッと笑ってスマートフォンを取り出した。
「じゃあ、作戦変更だ。木村、準備はいいか?」
『……いつでもいけるよ、佐藤くん』
スピーカーから木村の声が流れると同時に、キーボードに繋いだ小型スピーカーから、軽快でダンサブルな電子トラックが流れ始めた。
木村が即興で作ったアレンジ伴奏だ。
「な、なにこれ……!?」
「クラシックのルールなんて知るか。美咲、そのトラックに合わせて適当に鍵盤を叩いてみろ。間違えてもいい、途中で止まってもトラックは止まらない!」
「えっ、えぇっ!?」
混乱しながらも、美咲は流れるリズムにつられて鍵盤を押した。
ひとつの音がリズムに乗り、二つ目の音が重なる。
「もっと適当でいい! 弾きたい音を弾け!」
俺の言葉に吹っ切れたのか、美咲の指先が次第に軽やかさを取り戻していく。
クラシックの厳格な譜面ではなく、彼女自身の感覚が音を紡ぎ出す。
ポロン、ポン、と跳ねるような音が中庭に満ちていく。美咲の顔から緊張が消え、いつもの明るい笑顔が戻っていた。
「……すごい! 楽しい……っ!」
その瞬間、美咲の頭上のステータスが眩しく明滅した。
『トラウマ:コンクールでのトラウマ(抑圧度:90% ⇒ 50%)』
『覚醒度:12% ⇒ 35%』
数値が大きく跳ね上がる。
美咲自身は気づいていないが、彼女が放つ音の深みと輝きが、一瞬で段違いのものへと変化した。
(よし……! ピアノを『恐怖』から『楽しさ』に書き換えてやる)
「どうだ、美咲。ピアノ、やっぱり楽しいだろ?」
「……うん!」
美咲は鍵盤から手を離し、満面の笑みで俺を見上げた。
「私、弾いてみる。文化祭のステージ……たくまが隣にいてくれるなら、頑張ってみる!」
「任せとけ」
覚醒度35%。
まだSSSの真価には届かない。
文化祭当日――本番のステージで、彼女の『神の領域』の才能が完全に解き放たれることを、俺は確信していた。
第8話(通算第8話)をお読みいただきありがとうございました!
木村くんのサポートも光り、美咲のトラウマを大きく削ることに成功しました!
覚醒度も12%から35%へと急上昇し、文化祭ステージへの準備は万端です。
次回からはついに、文化祭当日に突如巻き起こるアクシデントと、美咲のSSSランク覚醒の瞬間をお見逃しなく!




