第5話:体育教師のステータス
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無事にハッキング事件を影から解決し、木村との絆を深めた拓真。
今回ターゲット(?)となるのは、全校生徒から恐れられている「鬼」こと体育教師・黒岩!
一見ただのスパルタ教師に見える彼の頭上に浮かんでいた、驚愕のステータスとは……!?
「おい! 拓真、お前また準備運動で手を抜いてたろ!」
グラウンドに、竹を割ったような怒声が響きわたる。
体育教師の黒岩剛。日焼けした肌に鋭い眼光、そして筋肉でパンパンに膨らんだジャージ姿。
生徒たちからは「鬼の黒岩」と恐れられている体育科の学年主任だ。
「すいません、黒岩先生。まだ事故の病み上がりでして……」
俺が頭をかきながら適当に言い訳をすると、黒岩先生は「チッ」と盛大に舌打ちをした。
「なら無理はするな。だがな、体調管理も自己責任だぞ。見学してろ!」
口調は荒いが、体調に配慮して見学を許してくれるあたり、ただの理不尽なスパルタではない。
ベンチに腰を下ろし、体操服の胸元で汗を拭いながら、俺は黒岩先生の頭上に浮かぶ文字を「鑑定」した。
『才能:長距離走・マラソン 潜在レベル:S 覚醒度:40%』
『トラウマ:右膝の故障・夢の挫折(抑圧度:85%)』
(……え?)
俺は思わず二度見した。
そこには普通の教師には見られない、特別なステータスが表示されていた。しかも潜在レベルはS。
美咲のSSSや木村のSに匹敵する、世界レベルの才能の持ち主だ。
(黒岩先生が……マラソンのSランク? 覚醒度が40%ってことは、才能を開花させきれずに辞めたってことか……?)
授業が終わり、生徒たちが着替えのために体育館や部室へと向かう中、黒岩先生は一人グラウンドに残り、ラグビーボールやパイロンを片付けていた。
その時、ふと先生が右膝を軽くさすり、苦々しい表情を浮かべたのを俺は見逃さなかった。
気になった俺は、放課後、職員室へ向かう黒岩先生の後を追った。廊下の角で、彼が同僚の先生と話している声が漏れ聞こえてくる。
「黒岩先生、今年の市民マラソン大会のゲストランナーの件ですが……」
「断ったはずだ。俺はもう走らん」
「ですが、元・オリンピック強化指定選手だった先生が走っていただけるとなれば、大会も盛り上がりますし――」
「断ると言ったら断る! 俺に陸上の話をするな!」
黒岩先生はそれだけ吐き捨てると、ドカドカと重い足音を立ててその場を立ち去っていった。
(元・オリンピック強化指定選手……!)
繋がった。
黒岩先生はかつて、日本のトップとして世界を目指していたアスリートだったのだ。
右膝の怪我によって夢を絶たれ、覚醒度40%のまま陸上の世界から去った。
そして今もなお、諦めきれない夢と過去のトラウマに縛られている。
「抑圧度85%か……」
俺は腕を組み、深く考え込んだ。
異世界なら、呪いに苦しむ元・最強の騎士を救い出すような展開だ。
目の前に、自分の才能に蓋をして苦しんでいる大人がいる。
(プロデューサーとして……見過ごすわけにはいかないな)
俺の胸の中で、新たな「クエスト」の鐘が鳴り響いていた。
第5話をお読みいただきありがとうございました!
鬼教師・黒岩先生の過去と、Sランクの才能『マラソン』が判明しました。
夢を絶たれた元アスリートの傷を、拓真はどうやって癒やすのか……!?




