第29話:三人の天才、集結と前夜祭
いつもお読みいただきありがとうございます。『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』、第29話をお届けします。
フィジカル、アート、デジタルの三大天才が拓真のもとに集結し、ついにチームが出揃った今回。ガレージという名の拠点に響く喧騒と、彼らが企てる「次の一手」の全貌が明かされる前夜祭を描きました。狂気とワクワクが最高潮に達する熱い展開をお楽しみください!
都内某所。佐藤拓真が用意した広々としたガレージ兼アジトは、今や「現実世界をファンタジーに染め上げる拠点」として異様な熱気を帯びていた。
「おい、なんだこの狭い部屋は。私のデジタル機材を置くスペースが全然足りないんだけど?」
「文句言うなよ九条。俺の浮遊する鉄骨の訓練スペースが圧迫されてるんだからこっちはもっと迷惑だぞ」
「うるさいガキどもね。二人とも、私の描いた壁画の上で言い争うのだけはやめなさいよ。足元汚れるでしょ」
デスクトップのモニターを睨みつけるデジタル界の魔王・九条奏。
苛立ちながらも宙に小さな磁場の歪みを作り出す超能力少年・如月蓮。
そして、壁一面に毒々しくも美しい色彩を塗りたくっている天才画家・蓮見。
個性が強すぎて一歩間違えれば大爆発を起こしかいな爆弾(天才)たちが、拓真の采配の下で同じ空間に揃い踏みしていた。その光景を、拓真は冷たい缶コーヒーを片手に、満足げな笑みを浮かべて眺めていた。
「喧嘩するなよ。お前たちの才能が綺麗に化学反応を起こせば、この世界をもっと面白くできるんだからさ」
拓真が声をかけると、三人は一斉にやれやれといった表情を浮かべつつも、どこか楽しそうな光をその瞳に宿していた。
最強の布陣で挑む「次の一手」
「で、プロデューサー殿。これだけの戦力を集めて、次は何をやらかす気なわけ?」
ヘッドホンを首にかけた奏が、キータッチを止めずに振り返る。
拓真はガレージの中央に置かれた大きなホワイトボードの前に立ち、黒いマーカーをカチッと音を鳴らして抜いた。そこには、日本中、いや世界中のメディアを巻き込むための途方もない計画図が描かれていた。
「次のステージは、『リアル・インフィニティ・フェス』だ」
ホワイトボードに力強く書き殴られた文字を見て、蓮がピクリと眉をひそめる。
「フェス……? 音楽イベントとかか?」
「いや、音楽だけじゃない。蓮の超能力による物理現象、蓮見の圧倒的な空間アート、そして九条のネットワークジャックによる全地球規模のAR(拡張現実)演出。この三つを完全にシンクロさせ、東京ドーム及びその上空を、文字通りの『異世界』に書き換える」
拓真の言葉に、ガレージの空気が一瞬でピリリと張り詰めた。
国の特務機関ですら管理しきれないほどの規模のバカげた計画。だが、彼らの胸中には「できるわけがない」という否定の感情は微塵もなかった。むしろ、退屈を嫌う天才たちの血が騒ぎ始めていた。
「……ねえ、それ、私のハッキングで政府の衛星回線も完全にジャックしちゃっていいわけ?」
奏の口元に、悪びれない笑みが浮かぶ。
「当然だ。どうせやるなら、世界中の衛星をバグらせて、現実の空に本物のドラゴンでも映し出してやれ」
拓真が不敵に笑い返すと、蓮見が筆をクルリと回してフンと鼻を鳴らした。
「いいわよ。私の色彩が、あの退屈な東京の空を完全に塗り替えてあげる。覚悟しなさいよね、タクマ」
異世界転生はできなかった。
目の前には最高に狂っていて、最高に面白い仲間たちがいる。
現実世界をファンタジーの舞台へと変えるための歴史的な前夜祭は、今、この小さなガレージから静かに、しかし確実に幕を開けようとしていた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
超能力少年・蓮、天才画家・蓮見、そしてデジタル界の魔王・奏。タイプの全く違う三人の天才たちが一つの場所に集まり、いよいよ物語は最大規模のクライマックスに向けて動き出しました。
彼らが仕掛ける「リアル・インフィニティ・フェス」とは一体どんなものになるのか。世界を巻き込む一大スペクタクルの一歩手前、最高に昂る空気感を楽しんでいただけたなら幸いです。
現実世界を完全なるファンタジーに染め上げる歴史的イベントの開幕まであと少し。次回の第30話もお楽しみに!感想やレビュー、温かい応援をいつも本当にありがとうございます!




