第30話:リアル・インフィニティ・フェス、開幕の狼煙
前書き
いつもお読みいただきありがとうございます。『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』、第30話をお届けします。
ついに集結した三人の天才たちが牙をむく、最大規模のイベント『リアル・インフィニティ・フェス』の開幕を描いた今回。東京の空を文字通りの異世界へと書き換える圧巻のスペクタクルと、世界中を巻き込んでいく狂騒の瞬間をお楽しみください!
「――これより、全チャンネルおよび都内主要ビルの電光掲示板をジャックします。プロデューサー、カウントダウンをどうぞ」
東京・渋谷にある一等地の高層ビル、その最上階のサーバー室。九条奏が軽やかにキーボードを叩き終えると、モニターの数値が不気味な緑色から鮮烈な真紅へと切り替わった。
彼女の背後では、佐藤拓真が腕時計に目を落とし、静かに息を吸い込む。
「よし。世界を退屈から救う時間だ。――3、2、1、スイッチを入れろ」
その瞬間、東京の空気が音を立てて歪んだ。
街頭の大型ビジョン、スマホの画面、個人のテレビ、そして地下鉄の案内モニターに至るまで、日本中のあらゆるデジタルデバイスが一斉にブラックアウトし、次の瞬間――巨大な異世界の紋章のような幾何学模様が映し出された。
一般歩行者たちが一斉に足を止め、呆然と空を見上げる。
「なんだこれ……!? 画面が全部乗っ取られたぞ!」
「おい、見てみろ、空が……!」
人々が指差したその先。夕暮れに染まりつつあった東京ドームの上空の空気が、まるでガラスが割れるかのようにパズルのピースごと剥がれ落ち、その向こう側から、現実にあるはずのない「巨大な紫色の双月の影」と「黄金色の竜のシルエット」が実体を持って浮かび上がったのだ。
もちろん、それは本物の竜ではなく、奏のハッキングによる超高精度ホログラムと、如月蓮の【絶対磁場操作】による大気中の光の屈折、そして蓮見の圧倒的な色彩感覚が融合して作り上げた、人類史上最大の超常イリュージョン――『リアル・インフィニティ・フェス』の幕開けの狼煙だった。
政府の狼狽と、狂乱のネット社会
「――報告します! 都内全域の電波塔およびネットワークが、謎の信号に完全に掌握されました! これはテロか、それとも――っ!」
首相官邸の緊急対策室。内閣情報調査室の桐島がモニターに映し出された「東京上空の竜」の映像を見つめながら、頭を抱えて唸っていた。
しかし、その表情に恐怖の色はない。むしろ、どこか呆れたような、そして底知れぬ感心を混じせた笑みが浮かんでいた。
「……やりやがったな、佐藤拓真。国を相手に大立ち回りをしたと思ったら、今度は日本中を巻き込んでリアルファンタジーの舞台を作り上げやがった」
一斉に鳴り響く緊急通報の電話と、インターネット上で爆発的に拡散していくパニックと歓喜の入り混じった投稿の嵐。
SNSのトレンドは数秒で「#リアル世界崩壊」「#東京上空の竜」「謎のプロデューサー」といったワードで埋め尽くされ、サーバーはもはやお祭り騒ぎを超えて一種のトランス状態に突入していた。
「見てみなよ、プロデューサー殿。世界中が私たちの掌の上で盛大に踊り狂ってるわ」
サーバー室の窓際で、奏が不敵な笑みを浮かべながらタブレットをスワイプする。
その隣には、大役をやり遂げて少し息を弾ませる蓮と、自分の描いた巨大な幻影アートの出来栄えに満足げに腕を組む蓮見が立っていた。
ガレージの片隅で始まった小さな企てが、わずか数ヶ月で東京の空を書き換え、世界中の現実を侵食した。
拓真は夜空に浮かぶ偽りの竜を見上げながら、冷めた缶コーヒーを一気に飲み干した。
「まだ序章にすぎない。ここからが、この退屈な現実を最高に面白くするための本番だ」
異世界に行けなかった男と、規格外の才能を持つ三人の天才たちが仕掛ける、世界を揺るがす大いなる悪戯は、いよいよ最高潮のクライマックスへと突き進んでいくのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
ネットワークジャックと超能力、そして空間アートの奇跡的なシンクロにより、東京の空に巨大な「竜」を降臨させた拓真たち。政府も巻き込んだ前代未聞の大規模フェスの幕開けは、まさにこれまでの総決算にふさわしい盛り上がりとなりました。
退屈な現実世界を誰よりも最高に面白いエンタメに変えるため、拓真のプロデュース劇はまだまだ止まりません。ここからさらに加速していく物語の結末に向けて、次回以降もどうぞご期待ください!
それでは、次回の第31話もお楽しみに!感想や温かいレビュー、いつも本当にありがとうございます!




