第28話:デジタル界の魔王、強襲スカウト作戦
いつもお読みいただきありがとうございます。『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』、第28話をお届けします。
前話で登場したデジタル界の天才少女・九条奏と、主人公・拓真のスカウト交渉を描いた今回。フィジカルの超能力、アートの狂気に続き、ついに情報テロリスト級のデジタルチートがチームに加わりました。現実世界を舞台にしたエンターテインメント計画がいよいよ最高潮へと向かう展開をお楽しみください!
「おいおい、嘘だろ……これ、マジで国家のメインフレームをハッキングする寸前じゃねえか」
雑居ビルの屋上。夜風が吹き抜けるなか、佐藤拓真は手元のタブレット画面を覗き込み、冷や汗を拭いながら呟いた。
その隣で、ヘッドホンを首にかけた少女――九条奏は、めんどくさそうにチュッパチャップスの棒を舌で転がしながら、ノートパソコンのキーボードをリズミカルに叩いていた。
数日前、スクランブル交差点で【才能鑑定】のチートスキルによって発見した「情報テロリスト級」の天才。彼女を自らのアジトへと半ば強引に連れ出し、プロデュースの網にかけるための交渉が、今まさに始まろうとしていた。
「ねえ、おじさん。……おじさんって言う歳でもないか。アンタ、さっきから私の画面を覗き込んで何なの? セキュリティの壁が厚すぎて退屈だから、今から大手メガバンクの口座残高を全部1円に書き換えて遊ぼうと思ってたんだけど」
奏の言葉は冗談に聞こえないだけの狂気を孕んでいた。彼女の頭上で輝くステータス【絶対情報改変】は、デジタル世界において神に等しい権限を振るうことができる。一歩間違えば、日本経済が数分で崩壊しかねない危険な才能だ。
「やめておけ。そんなセコい犯罪で捕まったら、俺のプロデュース計画に泥を塗ることになる」
「は? プロデュース? アンタ、昨夜ネットを騒がせてた『リアルファンタジー個展』の裏の仕掛け人だろ? 動画は見たけど、あんな生ぬるいお遊戯、私には関係ないね」
奏は鼻で笑い、画面から視線を外そうとした。
しかし、拓真は慌てず騒がず、ポケットから別のタブレットを取り出して、彼女の目の前にスライドさせた。
そこ映し出されていたのは、先日行った地下道ゲリラ個展のアーカイブ映像――ではなく、「世界中のあらゆるセキュリティを無力化し、全てのメディアをジャックする架空のサイバー侵略計画」のシナリオボードだった。
「……これ、なに?」
奏の動きが、ぴたりと止まった。退屈そうだった瞳に、わずかに鋭い光が宿る。
「お前はネットの裏側で一人、退屈を潰すために世界を壊そうとしてる。だがな、隠れてこっそり世界をハッキングするのと、世界中の人間を巻き込んで『リアルとデジタルの境界線を完全にぶっ壊すエンターテインメント』を仕掛けるの、どっちが面白い?」
拓真はニヤリと笑い、奏の肩に手を置いた。
「俺のプロデュースにかかれば、お前のそのハッキング能力は犯罪の道具なんかじゃない。全世界の常識をバグらせる、最高の『デジタル魔王降臨ショー』に仕立て上げてやるよ」
しばらくの沈黙。
奏は拓真の顔をじっと見つめ、やがてフッと悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「……へえ。私の才能を『犯罪』じゃなくて『エンタメ』として飼いならすつもり? いい度胸じゃん」
彼女はノートパソコンをパタンと閉じ、椅子から軽やかに立ち上がった。
「乗ったわ。その代わり、私の想像を超える最高に刺激的な景色を見せてよね、プロデューサーさん」
こうして、超能力の如月蓮、天才画家の蓮見に加え、デジタル界の魔王・九条奏までが拓真のプロデュースチームに揃い踏みした。
フィジカル、アート、そしてデジタル――現実世界をファンタジーに染め上げるための最強の布陣が整った今、拓真が仕掛ける次なる大掛かりな「狂宴」の幕が、まさに開こうとしていた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
デジタル界の魔王・九条奏を仲間に引き入れ、拓真のプロデュースチームは「フィジカル」「アート」「デジタル」という最強にして最悪の三本柱が揃い踏みしました。個性のぶつかり合う天才たちがこれから現実世界をどう引っかき回していくのか、作者自身もワクワクしながら執筆しています。
すべてのピースが出揃い、物語はいよいよ最大規模の次なるフェーズへ突入します。現実世界を完全にファンタジーへと変える拓真たちの暴走(?)劇を、次回以降もぜひお見逃しなく!
それでは、次回の第29話もお楽しみに!感想や温かいレビュー、いつも本当にありがとうございます!




