第27話:地下道パニック、そして「三人目」の気配
いつもお読みいただきありがとうございます。『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』、第27話をお届けします。
地下道での大盛況なゲリラ個展を終え、順調に活動の幅を広げる拓真たち。しかし、彼のプロデュース欲はまだまだ止まりません。今回は、新たな才能の気配を察知した拓真の前に、これまでのフィジカル・アートとは一線を画す「危険すぎるデジタル系の天才」が姿を現す展開を描きました。現実世界を巻き込むカオスなスカウト劇の始まりをお楽しみください!
「――ここまでやっておいて何だが、本当に警察や特務機関が突入してこなかったな」
渋谷の地下道から地上へと戻ってきた如月蓮は、冷や汗を拭いながら深いため息をついた。
先ほどのゲリラ個展の配信は、同時接続者数が数十万人を超える伝説的なバズを記録し、ネットのサーバーを一時ダウンさせるほどの熱狂を生み出した。政府の管理下にあるとはいえ、あそこまで派手に能力を暴走させればお叱りを受ける覚悟はしていたのだが、スマホの通知に国家機関からの警告文はない。
「当たり前だ。今の俺たちはただの暴走集団じゃなくて、国に利用価値を認められた『公認の特異エンターテインメント枠』だからな。それに、桐島のおっさんも画面の向こうでポップコーン片手に楽しんでる頃さ」
拓真は涼しい顔でスマホをスワイプし、天井知らずに跳ね上がったチャンネルの収益画面を眺めてニヤリと笑った。
その隣で、天才画家・蓮見は使い古されたスプレー缶をカラカラと鳴らしながら、満足げに鼻を鳴らす。
「ふん、私の色彩とあのガキの超能力のセッション、悪くなかったわよ。次は何をやる気? タクマ」
「焦るな。だが、そろそろ次のステップに進む時期だな」
拓真は足を止め、夜の人混みで賑わうスクランブル交差点を眺めた。
二人の天才を発掘し、現実世界をファンタジーに染め上げる第一段階は順調に進んだ。しかし、拓真の野望はこんなものでは終わらない。世界を完全に「面白く」するためには、もっと多角的で、もっとぶっ飛んだジャンルのピースが必要だった。
街がざわめく、新たなノイズ
その時、拓真のポケットの中で、愛用の【才能鑑定】のチートスキルが微かに熱を帯びた。
視界の端に、特定の人物を指し示すような淡い光の波紋が広がる。それは普段の生活圏内では感じたことのない、異質で、しかし極めて強烈な才能のシグナルだった。
(ん……? この波動は……今までの奴らとは系統が違うな?)
拓真は足を止め、シグナルの発信源へと視線を向けた。
交差点の反対側、ネオンが眩しい雑居ビルの電光掲示板の下に、一人の少女が立っていた。
制服の着こなしは乱れ、ヘッドホンを首にかけ、退屈そうにスマホをいじりながらも、その指先は常人には真似できないほどの超高速で画面をフリックしている。
拓真の脳内に、彼女のステータスウィンドウが強制的に展開された。
【氏名】九条 奏
【潜在才能】『絶対情報改変』
【危険度】Aランク(※ネット社会の神・暴走一歩手前)
【適性ジャンル】情報テロリズム・バーチャル支配
「……マジかよ」
思わず拓真の口から呟きが漏れる。
フィジカルの超能力者(蓮)、アートの狂気(蓮見)に続き、今度は「ネットの世界そのものを書き換える」ような、デジタル特化のチート級天才が目の前に現れたのだ。
しかも、彼女の頭上に渦巻くストレス値は、現代のネット社会に対する強烈な絶望と退屈を示している。このまま放置すれば、彼女は世界中のインフラや金融システムをハッキングし、リアルな世界崩壊テロを引き起こしかねない。
「どうしたの、タクマ。そんな顔して」
蓮見が怪訝そうに覗き込み、蓮も警戒したように視線を向ける。
拓真はニヤリと不敵な笑みを深く刻み込み、二人にスマホを向けた。
「おい、二人とも。退屈する暇はなさそうだ。……今から、三人目の『規格外』をスカウトしに行くぞ!」
現実世界をファンタジーの闘技場に変える拓真のプロデュース計画は、いよいよネットの深層――デジタル領域へとその魔手を広げ始めるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
超能力少年・如月蓮、天才画家・蓮見に続き、ついに三日目のピースとなり得る「情報テロリスト級」の天才少女・九条奏と遭遇した今回。ネット社会そのものを書き換えるようなヤバい才能を、拓真がどうやってプロデュースの網に絡め取るのか、見どころが満載のフェーズに突入していきます。
フィジカルからデジタルへ、現実世界をファンタジーに変える拓真の野望はさらに加速していきます。次回第28話でのスカウト作戦も、一筋縄ではいかない波乱の予感……!?
それでは、次回の第28話もお楽しみに!感想や温かいレビュー、いつも本当にありがとうございます!




