第21話:プロデューサーの憂鬱と、新たな「原石」の影
いつも応援ありがとうございます。『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』、第21話をお届けします。
前巻までの日常回(?)を経て、今回はついに物語の歯車が大きく動き出すエピソードとなりました。異世界に行けなかった主人公・拓真が、現実世界を舞台にどこへ向かうのか。チート能力とトラブルメーカーな天才たち、そして新たに現れた「規格外の原石」をどう料理していくのか、今後の展開にご期待ください!
白い病室の天井ではなく、見慣れた自室の天井を見つめてから早数ヶ月。佐藤拓真は、自身のスマホ画面に映し出されたプロデュース案件のスケジュール表を深い溜息とともにスクロールしていた。
「……異世界で魔王を討伐するより、現実のSNSをバズらせる方がよっぽどハードモードなんだが?」
トラックに轢かれたものの、神様手違いによる異世界転生は叶わず。その代わりとして手に入れた【才能鑑定】のチートスキル。それを使って世の隠れ天才たちを発掘・プロデュースし、退屈だった日常を最高に面白いエンターテインメントへと変えていくのが、今の拓真の生業だ。
これまでに発掘した人材は、動画編集の鬼才や、超絶技巧を持ちながらも引きこもっていたインディーズ音楽家など枚挙に暇がない。彼らを巧みに世間に送り出し、ネット界隈は連日お祭り騒ぎだった。
順風満帆に見える裏で、新たな火種がくすぶっていた。
事務所代わりとしている近所のカフェのテラス席。そこには、最近とみに頭角を現した天才ストリート画家・蓮見がいた。彼女の才能を拓真が鑑定した際に見出されたのは【極限の没入と狂気の色彩感覚】。
「ねえ、タクマ。私、次の個展ではキャンバスじゃなくて、渋谷のスクランブル交差点の地下道全部をキャンバスにしたいの。いいでしょ?」
「ダメだ。警察沙汰になるどころか、俺の胃に穴が開く。却下」
「つまんないの。あなたのその『常識的なプロデュース』、そろそろ飽きてきた頃じゃない?」
蓮見の不敵な笑みに、拓真はこめかみを押さえる。チート能力で才能を引き出したはいいものの、天才ゆえの倫理観のぶっ飛び具合に、マネージャー役の苦労は絶えない。
街で見つけた不穏な数値
カフェをあとにし、気分転換に街を歩いていた拓真の視界に、ふとすれ違った一人の男子高校生の姿が映った。無造作な髪に、すり切れたスニーカー。何の変哲もない、どこにでもいそうな少年だ。
しかし、拓真の【才能鑑定】スキルが勝手に発動し、少年の頭上に眩いステータスウィンドウが展開される。
【氏名】如月 蓮
【潜在才能】『絶対磁場操作』
【危険度】Sランク(※未覚醒・暴走寸前)
【適性ジャンル】超常現象・ダークエンターテインメント
「……は?」
拓真は思わず足を止めた。今まで見てきた才能は、あくまで「現実世界の延長線上」にある天才的なスキル(音楽、美術、技術など)だった。しかし、目の前の少年が秘めているのは、あきらかにファンタジー、それも異世界チート級の超能力の芽生えだった。
しかも、その才能の周囲には黒く澱んだストレス値が渦巻いている。このまま放置すれば、現実世界を巻き込んだ大惨事――下手すれば本物の「異世界災害」めいた現象が、この平和な街の中心で引き起こされかねない。
「待てよ……俺が異世界に行けなかったのは、ひょっとすると」
拓真の脳裏に、一つの仮説がよぎる。
異世界を求めていた自分に、神様は別の役割を与えたのではないか。
――異世界に行けないなら、この現実世界を異世界にしてしまえばいい。
少年の背中を見つめながら、拓真の口元にニヤリと不敵な笑みが浮かんだ。
「面白くなってきたじゃないか。――プロデューサーとして、この規格外の原石、最高に派手にプロデュースしてやるよ」
トラブルの気配しかしない新たなスパイスを抱え、拓真はスマホを構え、少年を追うための足取りを強めた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
ついに登場した新キャラクター、如月蓮。今までリアル寄りだった才能の枠組みを軽く飛び越える「超常系」の天才の登場により、拓真のプロデュース活動は一気にハードモードへと突入します。日常系コメディの皮を被った、少しきな臭いダークエンターテインメントの香りも漂い始めましたが、主人公のブレない(むしろワクワクしている)スタンスは変わらず貫いていきたい所存です。
現実世界がどんどんファンタジー化していく本作、次回第22話では蓮とのファーストコンタクトと、さっそく巻き起こるトラブ...いえ、最高に面白いイベントの準備を描いていきます。
それでは、次話でお会いしましょう!感想や応援レビューなどもぜひお待ちしております!




