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第4章 第4話 宣言

天才(変態)たちによる【勘違いブラックコメディ】の幕開けへようこそ!

 

※本作はカクヨミでも同時連載中ですが、そちらの方が数話ほど物語の更新が先行しています。

「牢獄を脱出した二人の、悪ふざけの続きが早く読みたい!」という方は、ぜひ先行しているカクヨミ版のページでも一気読みしてみてください!

 

▼カクヨミ版『牢獄のアルティザン』

https://kakuyomu.jp/works/2912051606683262649

第4章 第4話 宣言




―5種類成長コンプリート硬貨が世に出る前の話。




◇


 


教会の頂点に君臨する、総本山のとある一室。


 


重々しい静寂と、氷のように冷たく重い空気がその部屋を満たしていた。円卓を囲むのは、教会の絶対権力を握る数名の最高幹部たち。


 


そしてその中に、クスターフ領を管轄する、あのハゲ司教の姿もあった。


 


「……なぜじゃ。なぜ我が教会の誇る『免罪符』と『溶ける奇跡の像』のお布施が、これほどまでに激減しているのだぁ!」


 


最高幹部の一人が、怒りに震える声で大理石の机を叩いた。教会の経済基盤を揺るがす大問題である。


 


報告を求められた司教は、待ってましたと言わんばかりに神妙な顔をして一歩前へ出た。


 


「その件ですが、すでに調べはついております。……とある異端者に異端審問をかけた際、その男が懐に忍ばせていた『物』がこちらにございます」


 


コツン、と長いテーブルの真ん中に、一枚の小さな銅のメダルが置かれた。


 


「な、何じゃこれは……っ!?」


 


覗き込んだ幹部たちの顔が、一瞬にして驚愕と怒りで真っ赤に染まった。


 


メダルに刻まれていたのは、あと10年ほど経って見事に成長し、豊満な双丘を恥ずかしそうに両腕で隠している、あの領主の娘の完全なる全裸レリーフである。


 


「出処は判明しております。……クスターフ領にございます。なんでも領内にとどまらず、他領の貴族たちや領民にまで爆発的な人気を博しており、今や誰もがこぞってお守りとしてこれを買い求め、常に懐に握りしめているとか。さらに領主直属の近衛騎士たちにいたっては、これの純銀製の特注メダルを誇らしげに首から下げて戦場を駆けているとの噂にございます!」


 


「不敬っ……! 神への冒涜である!!」


 


「この銅の全裸メダルを持つ者は、他領の者であっても全員異端として処刑し、その財産を没収する!」


 


「クスターフ領、領主、それから全領民は『異端』であるッ!!!」


 


幹部たちの地鳴りのような怒号が部屋に響き渡った。


 


「よろしい。では、神の鉄槌を下すべく、全軍クスターフ領へ進軍せよ!」


 


総本山の最高命令が下され、司教は神妙に頭を下げてそれを拝聴した。


 


うつむいた司教の口元は、邪悪な歪みをもってニタリと釣り上がっている。内なる笑いがどうしても止らない。


 


(くっくくく……! 聖母の奇跡や溶け像などどうでもよい。まとめて異端として処刑し、莫大な利権をすべて私のものにしてくれるわ……!)


 


◇


 


教会総本山の放った一言が、大陸全土に未曾有の大パニックを巻き起こした。


 


『あの銅の全裸メダルを持つ者は、他領の者であっても全員異端として処刑し、その財産を没収する!』


 


公式に世界へと宣言された、この大弾圧に対し、メダルを密かにお守りとして懐に忍ばせていた他領の貴族や男たちは、一斉に恐怖、そして激怒した。


 


「ふざけるな! 教会の強欲ハゲどもめ、俺たちから『10年後の希望(推しメダル)』を奪い、そのうえ財産まで合法的に毟り取る気か!」


 


「俺たちのヴィーナスを、あんな無粋な連中に渡してなるものかァァァアアッッ!!」


 


危機感を募らせた他領の有力貴族や騎士たちは、なんと『10年後メダル』の聖地であるクスターフ領主・ジョナス様の元へと次々と集結。血走った目で直訴を始めた。


 


「ジョナス殿! 我ら他領の有志も、あの至高のレリーフと我が家の財産を死守するため、共に戦おう!」


 


こうして、本来ならバラバラであるはずの諸侯たちが、ただ一枚のエロメダルへの執念によって固い絆で結ばれ、歴史上およそ類を見ない【大陸全土の変態貴族・ファン同盟軍】が結成されてしまったのである。


 


彼らの掲げる軍旗には、もちろんあの10年後のアリアのシルエットが誇らしげに描かれていた。


 




◇





「なぁルッカ。なんか工房の外が、近衛騎士だけじゃなくて、他領の見たこともないガチムチな騎士たちで溢れかえってきたぞ」




ロッシュは筆を握ったまま、窓の外を怪訝そうに見つめた。




「みんな一様に目を血走らせて、地鳴りみたいな声で『10年後ォォォ!』って叫んでるんだが」




「あー、なんか今年の祭りの規模、どんどんデカくなってんな」




ルッカは新しい真鍮バネのネジを回しながら、気怠げに生あくびを噛み殺した。




「まぁ、どこのどいつが神輿を担ごうが俺らには一切関係ないし。……よし、二度寝するか」




「だな」




――そんな、全世界を巻き込んだ超大規模な全面バカ戦争の幕が開けようとしているとは、夢にも思わない変態芸術家ふたりであった。





最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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(次回も、楽しみにお待ちください!)


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