第六話 初めての依頼
翌朝。
レインたちは冒険者ギルド《アルト支部》へ向かっていた。
新しく結成したパーティー《リベレーション》。
メンバーは三人。
後衛のレイン。
魔法使いのリリア。
そして盾役のガルド。
誰が見ても、奇妙な編成だった。
「……何か足りませんね。」
リリアが苦笑する。
「前衛がいない。」
ガルドも腕を組む。
「敵を倒す役がいないな。」
普通なら、剣士か槍使いを探すところだ。
しかしレインは首を横に振った。
「まだ増やさない。」
「え?」
「仲間は数じゃない。」
「本当に必要な人だけを迎える。」
ガルドは小さく笑った。
「変わったリーダーだ。」
「今までそんなことを言う奴はいなかった。」
⸻
ギルドに入ると、周囲の冒険者がまた笑い始めた。
「あれが昨日の落ちこぼれパーティーか。」
「攻撃役ゼロ。」
「今日で解散だな。」
受付嬢のミリアは心配そうな顔をする。
「依頼を受けますか?」
「はい。」
レインは掲示板へ向かう。
依頼書を一枚ずつ丁寧に見ていく。
薬草採取。
荷馬車護衛。
ゴブリン討伐。
ワイルドボア討伐。
リリアが首を傾げた。
「ゴブリン討伐でいいんじゃないですか?」
レインは首を横に振る。
「ダメだ。」
「どうしてですか?」
「今の俺たちじゃ勝てない。」
その言葉にガルドは驚く。
普通なら無理でも挑戦する。
冒険者とはそういうものだった。
しかしレインは違った。
「勝てる戦いしかしない。」
「それが俺たちのルールだ。」
レインは一枚の依頼書を手に取った。
⸻
【薬草採取】
報酬:銀貨三枚
危険度:F
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周囲から笑いが起こる。
「子どもの依頼かよ。」
「三人で薬草採取?」
「情けない。」
レインは気にしない。
「これにします。」
受付嬢は安心したように微笑んだ。
「ありがとうございます。」
「実は最近、森で薬草が減って困っているんです。」
⸻
一時間後。
三人は森へ入った。
「薬草なんて久しぶりだ。」
ガルドが辺りを見回す。
リリアも草むらを探し始める。
しかしレインだけは動かない。
じっと森全体を見渡していた。
「レインさん?」
「薬草を探さないんですか?」
「いや。」
「探してる。」
そう言った瞬間だった。
レインの視界に青い文字が浮かぶ。
【薬草】
北東120メートル
品質★★★★☆
さらに別の表示。
【毒草】
南15メートル
採取禁止
レインは思わず目を見開く。
(これも見えるのか。)
潜在才能鑑定は、人だけではなかった。
薬草の品質。
鉱石。
素材。
すべて見える。
「こっちだ。」
レインは迷いなく歩き出す。
十分後。
そこには大量の薬草が群生していた。
リリアが驚く。
「すごい!」
「どうして場所が分かったんですか?」
レインは笑う。
「勘かな。」
ガルドは感心したように頷いた。
「お前、探索も得意なのか。」
「昔から地図を作る係だったから。」
それは半分本当だった。
今まで荷物持ちとして歩き回った経験。
そして、見えるようになった青い文字。
その二つが合わさり、誰よりも早く素材を見つけられるようになっていた。
⸻
帰り道。
突然、茂みが揺れた。
ガサッ。
ワイルドボア。
通常より一回り大きい。
「しまった!」
リリアが後ずさる。
ガルドが前へ出る。
「俺が止める!」
しかし武器はただの鉄の盾。
攻撃力はほとんどない。
レインの視界に再び文字が浮かぶ。
【個体名】
ワイルドボア
【弱点】
右前脚
突進直後3秒
「ガルド!」
「三歩前へ!」
「右へ半歩!」
「盾を斜め!」
ガルドは反射的に動く。
ドォォン!!
ワイルドボアの突進が盾にぶつかった。
だが、真正面ではない。
力が横へ流れた。
巨体が大きく体勢を崩す。
「今だ!」
リリアの炎が命中する。
《ファイアボルト》!!
弱点へ直撃。
ワイルドボアは悲鳴を上げて倒れた。
静寂。
ガルドは呆然と立っていた。
「……今の。」
「何で避けられた。」
レインは少し考えてから答える。
「何となく。」
もちろん違う。
見えていたのだ。
敵の弱点も。
最適な動きも。
戦い方も。
(俺の能力は……。)
(人を見るだけじゃない。)
(戦いそのものを支援する能力なんだ。)
レインはまだ気付いていなかった。
《潜在才能鑑定》の本当の力。
それは才能を見ることではない。
仲間が最も輝ける”未来”を選び、その未来へ導くこと。
この能力こそが、後に世界中から「神の軍師」と恐れられる伝説の始まりだった。




