第五十一話 回収されるソラ
第五十一話 回収されるソラ
王国魔術院の上空に浮かぶソラの姿は、レインが知っている彼女とは明らかに違っていた。
身体を覆う黒い鎖は、単なる拘束具ではない。一本一本が空間の裂け目から伸び、ソラの肉体だけでなく、その内側にある境界情報へ直接食い込んでいる。片方の瞳は本来の金色を残しているものの、もう片方は完全な黒に染まり、その奥にはソラ自身とは別の意識が宿っているように見えた。
そして、その背後。
観測者が初めてこの世界へ形を作り始めていた。
まだ現実定着率は三%にすぎない。にもかかわらず、その存在が現れただけで王都一帯の空気が重くなり、魔力の流れそのものが歪んでいる。
レインは屋根の上から魔術院を見下ろしながら、すぐに状況を解析した。
【対象――ソラ】
【旧識別――一号】
【現在状態――強制境界同期】
【自己意思残存率――31%】
【観測者同期率――69%】
【境界情報吸収機能――起動】
【対象指定――Rain】
最後の一行を見た瞬間、レインの表情が険しくなる。
「やっぱり俺を取り込むためか」
「そう考えて間違いない」
横に立つアークが答えた。
レインは老人を睨む。
「分かってるなら、解除方法も知ってるんだろ」
「完全な方法はない」
「またそれ?」
「一号は本来、Rainの境界情報を取り込んだ後、それを内部で安定化させるために設計した個体だ。零号のように境界を受け入れる器ではない。吸収し、保持し、再構成する。そのため、一度機能が完全に起動すると、外部から単純に切り離すのは難しい」
カインが眉をひそめる。
「つまりレイより厄介?」
「性質が違う。ただし、危険度だけなら一号の方が上だ」
「何で」
「零号は境界を受け入れる。だが一号は――」
アークがソラを見る。
「他者を奪う」
その言葉に、レイの表情が強張った。
零号として造られた自分。
一号として造られたソラ。
どちらも、人として生きるためではなく、Rainに関する実験のために作られた。
レインは視線をソラから外さずに聞く。
「ソラ本人の意思がまだ三十一%残ってる。それなら、そこを広げればいい」
ユウトが頷いた。
「魔王機能を剥がした時と同じ発想だな」
「ただし今回は、相手から何かを外すだけじゃない」
ノアがすぐに補足した。
「ソラの吸収機能そのものは本人の一部だ。それを壊せばソラ自身まで壊れる可能性がある」
レインはそこで黙った。
レイの時は、本人と魔王機能を分離すればよかった。
ユウトの時は、人間と境界の接続を切り離した。
しかし。
ソラは違う。
彼女の能力そのものが。
彼女を拘束している。
「じゃあ、能力を消すんじゃなくて」
レインが呟く。
「本人に使わせる?」
ノアが見る。
「どういう意味だ」
「今は観測者がソラの吸収能力を使ってる。だったら、その主導権をソラ本人に戻す」
カインが少し考えてから頷いた。
「なるほど。能力を奪うんじゃなくて、所有者を戻す」
「そう」
ユウトが腕を組む。
「理屈は通る。問題は、どうやって観測者より先にソラへ接続するかだ」
レインは答える。
「俺がやる」
「却下」
ノアが即座に言った。
「早いな」
「相手の目的がRain回収だと分かっている状態で、お前が直接接続するのは危険すぎる。最悪の場合、その瞬間に吸収される」
レインは言い返そうとしたが、カインまで横から口を挟む。
「僕も反対」
「お前まで?」
「今回は君が餌だからね」
ユウトも続く。
「私も反対だ」
レインは三人を見た。
「じゃあ誰がやる」
カインが自分を指す。
「僕」
「駄目」
今度はレインが即答した。
「何で」
「お前も元はRainだろ」
「でも今は独立個体」
「観測者から見れば回収対象かもしれない」
「それは君も同じ」
「だから駄目なんだよ」
二人が睨み合う。
その横でノアが額を押さえた。
「似た者同士で無限に続けるな」
ユウトも小さく息を吐く。
「本当に分裂した意味があるのか疑いたくなる」
レイが、そのやり取りを見ながら静かに言った。
「私が行く」
全員が振り返る。
「レイ?」
「ソラは私を知ってる」
「それだけじゃ危険だ」
レインが止める。
しかしレイは首を横に振った。
「私も命令されてた。身体が勝手に動くのも、声が聞こえるのも、自分じゃない考えが入ってくるのも分かる」
そしてソラを見上げる。
「だから、ソラに一番近いところまで行けると思う」
レインは迷った。
レイは魔王機能を外されたばかりだ。
境界適合率はまだ高い。
それを利用できる可能性はある。
だが同時に。
もう一度観測者へ触れれば、再接続される危険もある。
「成功率」
レインが解析する。
【レイ→ソラ】
境界接触。
成功率――72%。
【観測者再接続危険率――28%】
「七十二」
ノアが聞く。
「悪くない」
「でも再接続が二十八%」
レイが答える。
「行く」
「簡単に言うな」
レインが強く言う。
「もしまた魔王に戻ったら」
「その時は」
レイがレインを見る。
「また助けて」
レインは言葉を失った。
以前のレイなら。
助けてとは言わなかった。
逃げて。
そう言っていた。
今は。
自分から。
助けを求めた。
レインは、しばらく彼女を見た後。
「分かった」
と答えた。
「でも一人では行かせない」
◇◇◇
作戦はすぐに組み立てられた。
目的はソラの撃破ではない。
観測者との同期率を下げ、本人へ能力の主導権を戻す。
そのためには、ソラへ近づき、直接本人へ呼びかける必要がある。
ただし、王国魔術院周辺にはすでに多数の魔導兵が倒れており、なお動ける者たちも混乱している。彼らの中にはソラを敵と判断して攻撃しようとしている者もいた。
ノアは王都の屋根や塔の位置を確認しながら、素早く役割を決めていく。
「レイとカインがソラへ接近する。レインは後方から全域支援。ユウトはアーク監視」
「私?」
ユウトが少し驚く。
「戦えないだろ」
「レベル8だからな」
「なら監視役が妥当」
アークが平然と答える。
ユウトは老人を睨んだ。
「逃げたらどうする」
「追えるのか」
「……その時はレインを呼ぶ」
「最初からそうしろ」
ノアは無視して続ける。
「ルークはソラの記録を読む。過去に一号がどういう状態で制御されていたか、何でもいいから探せ。セラとミアはアレンを守りながら王国側の攻撃を止める」
セラが頷く。
「ソラを狙う人たちの未来も見ます」
「頼む」
ミアは治療を続けながら手を挙げる。
「アレンさん、まだ意識戻りません!」
レインが見る。
【アレン】
生命危険――低。
境界損傷――中。
意識障害――継続。
「命は大丈夫」
「でも」
「今は任せる」
ミアは頷く。
レインは次にソラを見上げた。
彼女の周囲では、黒い鎖がさらに増えている。
【観測者同期率】
69%。
↓
72%。
「急ぐ」
ノアも頷く。
「開始」
◇◇◇
レインが《全域支援》を発動した瞬間、全員の身体へ淡い光が広がった。
速度。
防御。
反応。
魔力効率。
そして。
意識共有。
真職業《後衛》を得てから、レインの支援は単純な能力強化ではなくなっている。
仲間が何を見ているのか。
何を感じているのか。
どこへ動こうとしているのか。
それを完全に読むわけではない。
ただ。
繋がる。
「行くよ」
カインが屋根を蹴った。
レイも続く。
二人は隣の塔へ飛び移り、そのまま魔術院中央棟へ近づいていく。
ソラが反応した。
「Rain」
黒い瞳が、レインのいる場所を正確に捉える。
その瞬間。
ソラの右手が上がった。
巨大な黒い槍。
空中。
形成。
レインの解析。
【境界圧縮槍】
対象――Rain。
命中時。
境界情報吸収開始。
「俺を狙ってる!」
ノアが即座に叫ぶ。
「予定通り! 右へ三歩!」
レインは従う。
黒槍。
放たれる。
屋根。
貫通。
爆発。
レインのすぐ横。
石。
吹き飛ぶ。
「近い!」
ノア。
「死んでない」
「そういう問題じゃない!」
しかし。
この攻撃。
意味。
ある。
ソラの意識。
レインへ。
向いている。
その間に。
カインとレイ。
接近。
あと五十メートル。
「ソラ!」
レイが叫ぶ。
反応。
ない。
「ソラ!」
二度目。
金色の瞳。
僅かに。
動く。
「零……号?」
声。
ソラ。
本人。
レイ。
「違う」
ソラ。
一瞬。
顔。
歪む。
「じゃあ」
「レイ」
「……」
「私が選んだ名前」
その瞬間。
ソラの黒い鎖。
一本。
揺れた。
【観測者同期率】
72%。
↓
70%。
レイン。
「効いてる!」
カイン。
「なら続ける!」
レイ。
ソラへ。
さらに近づく。
「ソラも」
「選んで」
でも。
観測者。
すぐ。
介入。
――一号。
――命令を継続せよ。
ソラ。
身体。
震える。
「Rainを」
「回収」
「する」
レイ。
「それ」
「ソラがしたいこと?」
ソラ。
答えない。
「私は」
レイ。
「世界を壊せって」
「言われた」
「でも」
「嫌だった」
ソラ。
黒い瞳。
揺れる。
レイは続ける。
「ソラは?」
「私は」
声。
止まる。
観測者。
強制。
【同期率】
70%。
↓
74%。
カインが境界干渉を発動する。
「邪魔させない!」
黒い鎖。
一本。
止まる。
だが。
今のカイン。
レベル18。
力。
足りない。
「重い!」
レイン。
すぐ。
《才能共鳴》。
カイン。
出力。
上昇。
境界干渉。
3.2%。
5.8%。
7.1%。
「まだ!」
レイン。
さらに。
《全域支援》。
集中。
カイン。
8.6%。
鎖。
二本。
止まる。
ソラ。
顔。
歪む。
「カイン」
「知ってる?」
「僕?」
ソラ。
金色の瞳。
カインを見る。
「Rain」
「違う」
カイン。
即答。
「僕はカイン」
ソラ。
「Rainの」
「半分」
「だった」
カイン。
笑う。
「今は全部僕」
レイ。
横。
「私も」
「零号じゃない」
「レイ」
ソラ。
二人を見る。
元々。
自分と同じ。
実験。
個体。
でも。
今。
自分の名前。
持つ。
自分の意思。
ある。
「ソラ」
カイン。
言う。
「君は一号?」
ソラ。
答え。
出ない。
「それとも」
カイン。
「ソラ?」
金色。
瞳。
大きく。
開く。
「……ソラ」
同期率。
74%。
↓
65%。
「下がった!」
レイン。
そして。
ルーク。
突然。
叫ぶ。
「兄さん!」
「何!」
「見つけた!」
ルークの瞳が強く光っている。
「ソラの最初の記録!」
レイン。
「何がある!」
「一号になる前!」
全員。
反応。
アークの表情も変わる。
「一号になる前?」
「この子」
ルーク。
苦しそう。
でも。
読む。
「生まれた時から」
「一号じゃない!」
レイン。
息。
止まる。
「どういうこと」
ルーク。
「名前」
「元々」
「ある」
ソラ。
身体。
大きく。
震える。
観測者。
――停止せよ。
ルーク。
耳。
押さえる。
「嫌!」
レイン。
《精神支援》。
「ルーク!」
「読める!」
「名前!」
ルーク。
叫ぶ。
「ソラじゃない!」
全員。
止まる。
「本当の」
「名前!」
ソラ。
瞳。
揺れる。
「私」
ルーク。
一気に。
記録。
引き出す。
【実験体一号】
登録前個体。
出生記録。
王都。
女性。
名称――。
「……サラ!」
その瞬間。
ソラ。
いや。
一号。
身体。
完全に。
止まった。
「サラ」
レイが。
呼ぶ。
ソラ。
金色の瞳。
涙。
浮かぶ。
「誰」
「あなた」
「違う」
「記録に」
ルーク。
叫ぶ。
「書いてる!」
「サラ・フェリス!」
アーク。
顔。
変わる。
「その名前は……」
レイン。
「知ってる?」
「王国魔術院の」
老人。
低い声。
「研究員の娘だ」
「何」
「母親が」
「境界実験に」
「反対していた」
レイン。
嫌な。
予感。
アーク。
続ける。
「事故で」
「母子ともに」
「死んだと」
「聞いていた」
ルーク。
首。
横。
「違う」
「母親」
「死んだ」
「でも」
「子供」
「生きてた」
アーク。
「誰が」
ルーク。
読む。
そして。
顔。
青くなる。
「……兄さんのお父さん」
レイン。
「父さん?」
「助けた」
アーク。
完全に。
黙る。
ルーク。
続ける。
「でも」
「その後」
「誰かが」
「連れていった」
全員。
アーク。
見る。
老人。
長い。
沈黙。
「私だ」
レイン。
「……」
アーク。
「一号へ」
「したのは」
「私だ」
空気。
凍る。
◇◇◇
ソラ――サラの黒い鎖が、一気に暴れ始めた。
【観測者同期率】
65%。
↓
80%。
本人の記憶が戻り始めたことに。
観測者。
危険。
感じた。
――一号。
――記録を削除。
レイン。
「させるか!」
《世界接続》。
発動。
対象。
サラ。
でも。
弾かれる。
【対象側自己認識】
不安定。
【名称競合】
ソラ。
一号。
サラ。
三つ。
「名前が」
レイン。
「多すぎる!」
ノア。
「なら」
「本人に」
「決めさせろ!」
レイン。
見る。
「ソラ!」
反応。
「サラ!」
反応。
二つ。
名前。
どちら。
彼女。
選ぶ?
カイン。
レイ。
すぐ。
理解。
「ソラ!」
カイン。
叫ぶ。
「名前!」
「自分で!」
レイ。
「どれが」
「あなた!」
ソラ。
頭。
押さえる。
「私は」
観測者。
――一号。
ルーク。
「サラ!」
アーク。
黙る。
レイン。
「ソラ!」
三つ。
声。
頭。
中。
混ざる。
「私は」
泣く。
「分からない!」
レイン。
「分からなくていい!」
ソラ。
見る。
「今は!」
レイン。
叫ぶ。
「全部」
「お前の名前だ!」
全員。
一瞬。
止まる。
レイン。
続ける。
「サラは」
「昔の」
「お前!」
「一号は」
「他人に」
「付けられた番号!」
「ソラは」
「今の」
「お前!」
「全部」
「消す必要」
「ない!」
観測者。
――矛盾。
レイン。
「矛盾してて」
「いい!」
ソラ。
泣く。
「どれが」
「本当?」
レイン。
「お前が」
「選べ!」
「一つでも」
「全部でも!」
ソラ。
身体。
震える。
そして。
少しずつ。
声。
戻る。
「私は」
一号。
違う。
「サラ」
昔。
でも。
「ソラ」
今。
長い。
沈黙。
「私は」
彼女。
顔。
上げる。
「ソラ」
同期率。
80%。
↓
54%。
「でも」
続く。
「サラも」
「私」
同期率。
54%。
↓
41%。
「一号は?」
カイン。
聞く。
ソラ。
少し。
笑う。
「それは」
一拍。
「いらない」
同期率。
41%。
↓
27%。
レイン。
「来た!」
◇◇◇
観測者。
初めて。
明確な。
怒り。
見せる。
人型。
大きく。
膨らむ。
現実定着率。
3%。
↓
6%。
↓
9%。
――不良個体。
――廃棄。
ソラ。
黒い鎖。
全部。
締まる。
レイ。
「駄目!」
カイン。
境界干渉。
最大。
レイン。
支援。
でも。
観測者。
強い。
現実。
九%。
だけ。
それでも。
違う。
世界外。
存在。
ルール。
外。
「アーク!」
レイン。
叫ぶ。
老人。
見る。
「何を」
「お前」
「こいつ」
「作ったんだろ!」
アーク。
「……」
「責任」
「取れ!」
ユウト。
アークを見る。
老人。
しばらく。
動かない。
レイ。
「今さらでも」
「するんでしょ」
アーク。
その言葉。
刺さる。
そして。
老人。
一歩。
前。
「分かった」
レイン。
初めて。
アークの。
世界登録。
変化。
【対象――アーク】
【世界登録――なし】
↓
【自己登録申請】
レイン。
「何してる」
アーク。
「私も」
「この世界に」
「戻る」
ユウト。
「戻る?」
「三百年以上」
「私は」
「世界外存在として」
「生きてきた」
「観測者と」
「同じ?」
「近い」
「でも」
アーク。
「今」
「選ぶ」
老人。
レイ。
ソラ。
見る。
「人間として」
「責任を取る」
【世界登録申請】
承認条件。
存在名称。
自己意思。
現実定着核。
アーク。
自分。
胸。
手。
置く。
「名称」
「エリアス・アーク」
レイン。
初めて。
本名。
知る。
「エリアス」
老人。
「地球で」
「使っていた」
「名だ」
【個体名】
エリアス・アーク。
【種族】
人間――再定着中。
【現実定着率】
0%。
↓
4%。
老人。
顔。
苦痛。
歪む。
「こんな」
「痛いのか」
ユウト。
笑う。
「人間は大変だぞ」
「知っていたはずだが」
「三百年あれば忘れる」
レイン。
「会話してる場合じゃ」
「ない!」
エリアス。
手。
ソラ。
向ける。
「一号」
ソラ。
顔。
歪む。
エリアス。
止まる。
そして。
言い直す。
「ソラ」
初めて。
番号。
ではない。
名前。
呼ぶ。
「すまなかった」
ソラ。
目。
大きく。
なる。
「私は」
エリアス。
続ける。
「君を」
「道具として」
「作った」
「それを」
「間違っていないと」
「思っていた」
観測者。
鎖。
強まる。
「世界を救うためなら」
「許されると」
「思った」
レイ。
静か。
聞く。
「でも」
老人。
「違った」
ソラ。
涙。
流れる。
「今さら」
「そうだ」
エリアス。
「今さらだ」
「でも」
「謝る」
一拍。
「サラ」
ソラ。
身体。
震える。
「生きていて」
「よかった」
その瞬間。
【対象――ソラ】
現実側。
自己情報。
急上昇。
【観測者同期率】
27%。
↓
19%。
レイン。
「今!」
全員。
動く。
カイン。
境界干渉。
レイ。
境界適合。
ルーク。
記録保持。
エリアス。
世界外情報。
ユウト。
旧魔王境界知識。
ノア。
全体設計。
そして。
レイン。
後衛。
《世界接続》。
「ソラ!」
「何!」
「その能力」
「誰の!」
ソラ。
涙。
拭かない。
「私の!」
「Rain」
「取り込む?」
「嫌!」
「じゃあ」
「何に」
「使う!」
ソラ。
一瞬。
考える。
そして。
観測者。
見る。
「これ」
その言葉。
同時。
能力。
反転。
【境界情報吸収】
対象指定。
Rain。
↓
観測者。
レイン。
「……え?」
カイン。
「それ」
「できるの?」
ソラ。
笑う。
「私の」
「能力だから!」
観測者。
初めて。
後退。
――停止。
ソラ。
「嫌」
黒い鎖。
逆に。
観測者へ。
巻きつく。
【観測者現実定着情報】
吸収開始。
9%。
↓
8。
7。
6。
観測者。
――停止せよ。
ソラ。
「命令」
「しないで!」
5。
4。
3。
そして。
最後。
レイン。
《全域支援》。
最大。
「ソラ!」
「全部」
「取るな!」
ソラ。
驚く。
「何で!」
「お前」
「壊れる!」
吸収。
止める。
観測者。
現実定着率。
1%。
そこで。
固定。
完全。
消せない。
ソラ。
息。
荒い。
でも。
本人。
戻る。
【観測者同期率】
19%。
↓
0%。
【強制境界同期】
解除。
黒い鎖。
全部。
砕ける。
ソラ。
落下。
レイ。
飛ぶ。
受け止める。
二人。
屋根。
転がる。
「痛い……」
ソラ。
笑う。
レイ。
「生きてる?」
「たぶん」
レイン。
遠く。
叫ぶ。
「それ」
「俺の台詞!」
◇◇◇
王都に。
静寂。
戻る。
観測者。
人型。
消えた。
でも。
最後。
声。
残る。
――Rain。
――拒絶個体。
――増加。
レイン。
「悪い?」
――……。
「もっと」
「増やす」
声。
止まる。
レイン。
笑う。
「お前が」
「道具にした奴」
「全部」
「こっちに」
「連れてくる」
観測者。
――不可能。
レイン。
「やってみろ」
そして。
声。
完全に。
消える。
◇◇◇
ソラ。
回収。
ではなく。
救出。
成功。
アレンも。
ミアの治療で。
意識。
戻り始める。
レイン。
解析。
【ソラ】
現在名称――ソラ。
旧名称――サラ・フェリス。
旧識別――一号。
種族――人間。
境界適合率――61%。
レベル――50。
実レベル――68。
潜在適職――。
表示。
変わる。
【潜在適職】
《境界収集者》。
レイン。
「強いな」
ソラ。
「何が」
「お前の」
「才能」
「また」
「変なの?」
「かなり」
ソラ。
ため息。
「普通に」
「生きたい」
レイ。
横。
「私も」
二人。
顔。
見る。
そして。
笑う。
レイン。
少し。
安心。
でも。
その時。
別。
表示。
【世界境界安定率】
49%。
↓
47%。
ノア。
すぐ。
気づく。
「下がった」
レイン。
「観測者」
「追い返したのに」
エリアス。
空。
見る。
「だからだ」
「何が」
「奴は」
「直接回収を」
「諦めた」
ユウト。
「次は」
「何を」
エリアス。
表情。
険しい。
「世界側を」
「壊す」
レイン。
「どうやって」
その瞬間。
王都。
地面。
大きく。
揺れる。
魔術院。
鐘。
鳴る。
遠く。
別。
街。
ベルク。
《リベレーションⅡ》。
ガルド。
反応。
「レイン!」
「どうした!」
「門だ!」
「また?」
「違う!」
ガルド。
声。
緊迫。
「一個じゃねえ!」
レイン。
視界。
世界地図。
勝手に。
開く。
一。
二。
五。
十。
二十。
各地。
黒い。
点。
増える。
【境界門】
同時開放。
31箇所。
【第二次魔王軍】
先遣侵攻。
全面開始。
【本格侵攻推定】
21日。
↓
14日。
レイン。
「二週間」
ノア。
「短すぎる」
ユウト。
「でも」
「まだ」
「本隊は」
「来ていない」
エリアス。
静か。
「違う」
全員。
見る。
「観測者は」
「本隊を」
「こちらへ」
「送るのではない」
レイン。
「じゃあ」
エリアス。
「こちら側の」
「魔物と」
「人間を」
「魔王軍へ」
「変える」
空気。
変わる。
「それなら」
ノア。
「軍勢を」
「境界越しに」
「運ぶ必要がない」
「そう」
「二週間で」
「世界中」
「敵に」
「できる」
レイン。
地図。
見る。
31。
門。
拡大。
その中。
一つ。
異常。
反応。
王都。
北。
小さい。
村。
【世界機能付与】
開始。
【対象】
人間。
【付与職業】
魔王兵。
レイン。
顔。
変わる。
「まずい」
ノア。
「どうする」
今。
ここ。
一班。
ベルク。
一班。
王都。
再合流。
必要。
14日。
短い。
でも。
レイン。
以前。
違う。
一人で。
全部。
やろうと。
しない。
「集める」
ノア。
「何を」
「仲間」
レイン。
言う。
「俺たちだけじゃ」
「世界」
「守れない」
ユウト。
「冒険者?」
「それも」
「王国軍?」
「それも」
「魔族は」
レイン。
少し。
考える。
「話せる奴は」
「全部」
ノア。
「敵味方」
「関係なく?」
「観測者に」
「選択」
「奪われるなら」
レイン。
地図。
見る。
「選べる奴」
「全部」
「味方にする」
カイン。
笑う。
「大きく出たね」
レイン。
「世界最強」
「作るなら」
「それくらい」
そして。
視界。
新しい。
能力。
表示。
【真職業《後衛》】
条件達成。
多勢力。
接続可能。
【新規能力】
《連合支援》。
レイン。
目。
見開く。
【効果】
パーティー外。
同盟対象。
支援可能。
【条件】
対象が。
自ら。
共闘を。
選択。
レイン。
笑う。
「ちょうど」
「いいの」
「来た」
ノア。
「何」
レイン。
みんな。
見る。
「世界中」
「仲間に」
「できる」
その時。
アレン。
弱い。
声。
「……それ」
全員。
見る。
目。
開いた。
「兄さん」
レイン。
「大丈夫?」
「死んでません」
「よかった」
「でも」
アレン。
起き上がろうと。
する。
「一つ」
「問題」
「何」
アレン。
ソラを見る。
次。
レイ。
そして。
レイン。
「十二号まで」
「いる」
レイン。
「知ってる」
「違います」
アレン。
息。
整える。
「十三号」
全員。
止まる。
エリアス。
顔。
変わる。
「十三号など」
「作っていない」
アレン。
「いました」
「どこ」
アレン。
答える。
「王宮」
レイン。
「……」
「名前は」
アレン。
一拍。
「国王です」
誰も。
すぐには。
言葉。
出なかった。
そして。
王都中心。
巨大な。
王宮。
最上階。
一人。
男。
玉座。
座る。
目。
開く。
片方。
黒。
【未登録実験個体】
十三号。
【現職】
国王。
【境界同期】
開始。
――第五十一話 了――




