第四十九話 零号救出
第四十九話 零号救出戦
第三鉱山へ向かう道は、以前来た時とはまるで別の場所のように変わっていた。
空はまだ昼だというのに薄暗く、雲の切れ間から差し込む光まで灰色に見える。山道のあちこちには黒い亀裂が走り、そこから漏れ出した境界の魔力が、周囲の草木を不自然な方向へ曲げていた。
レインたちが第三鉱山へ近づくにつれて、魔物の数も増えていく。
ただし、襲ってこない。
道の両側。
岩の上。
森の中。
オーガ、ゴブリン、魔狼、悪魔族、見たことのない異形の魔物までが、レインたちを無言で見つめていた。
「……気味が悪いね」
カインが周囲を見ながら言った。
レベルはすでに12まで上がっている。灰月迷宮での経験値共有に加え、ベルクの防衛戦でもかなり成長した。それでも、以前のカインが持っていた境界側の力と比べれば、まだ赤子に近い。
だが。
見る力だけは残っていた。
「こいつら、僕たちを見てるんじゃない」
レインが聞く。
「じゃあ何を見てる」
カインは第三鉱山の方向を指した。
「零号の反応を見てる。正確には、魔王権限から命令が来るのを待ってる」
ユウトの顔が険しくなる。
「間違いない。魔王軍の統率構造だ」
レインは横を歩くユウトを見る。
人間へ戻ったばかりの元魔王。
レベルは現在3。
戦闘能力だけなら、この一行で最弱に近い。
それでも。
魔王というものを最も知っている。
「お前の時も、こんな感じだった?」
「似ている。ただ、私の場合はもっと時間がかかった。最初に魔族が私の周囲へ集まり始め、その後、私の感情とは無関係に命令が伝わるようになった」
「自分が命令してないのに?」
「ああ。私は最初、それを自分の意思だと思っていた」
レインが眉をひそめる。
ユウトは続けた。
「人間を憎んでいる。世界を壊したい。Rainを連れていきたい。その全部を、自分で考えていると思っていた。だが今振り返れば、少しずつ思考へ混ぜられていたんだろう」
「零号も」
「おそらく」
ルークが、少し前を歩きながら振り返った。
「でも、零号は泣いてた」
「分かってる」
レインは弟を見る。
《記録保持者》。
ルークは、今起きている出来事だけでなく、世界に残った情報の痕跡を見ることができる。それは未来視とも解析とも違う。
嘘をついた本人さえ忘れた過去。
改変された記憶。
消された存在。
そういったものの残滓を拾う。
「零号は自分で門を開けたわけじゃない」
「ああ」
「じゃあ助けられるよね」
レインは少しだけ黙った。
確約はできない。
ユウトを人間へ戻した時とは条件が違いすぎる。
零号は境界適合率100%を越えている。
世界機能としての《魔王》を直接載せられた。
レゾナンスが通用するかも分からない。
それでも。
「助ける」
レインは答えた。
ルークが少し安心したように前を向いた。
ノアは、そのやり取りを聞きながら地形を確認している。
「レイン」
「何」
「ここから先、普通に正面から入るのはやめる」
「理由」
「魔物が増えすぎている」
第三鉱山の入口まで、残り約二キロ。
ノアの《戦場設計》では。
【第三鉱山周辺敵性反応】
推定――1,840。
「……増えたな」
レインが呟く。
「さっきまで千くらいだった」
「境界門の開放が続いてる」
カインが険しい顔をした。
「今、6%」
「見えるのか」
「感覚だけ。ただ、間違いないと思う」
レインの《完全戦場解析》でも、第三鉱山周辺の空間密度が異常な勢いで変化している。
「門を先に閉じる?」
ノアが聞く。
レインは首を横に振った。
「零号が開いてるなら、門だけ閉じてもまた開く」
ユウトも頷く。
「それに、下手に外側から閉じれば、魔王機能が反発する。最悪の場合、零号自身を門として固定する可能性がある」
「それは駄目」
レインは即答した。
ノアは地図へ一本線を引く。
「なら目的は零号への接触。討伐じゃない。魔物軍を抜いて、本人まで辿り着く」
「千八百を倒す必要は?」
ガルドがいれば、そう聞いただろう。
今は。
代わりにカインが言う。
「ないよね」
「ない」
レインが答える。
「俺たちは魔物と戦いに来たんじゃない」
ノアが少し笑う。
「その答えなら作戦は簡単だ」
「簡単?」
「相手に戦わせなければいい」
レインが嫌な予感を覚える。
「どうやって」
ノアは鉱山の北側を指した。
「落ちる」
「……どこへ」
「旧搬入坑」
「それ」
レインが地図を見る。
「崖の下じゃない?」
「そう」
「何メートル」
「約四十」
ユウトが真顔でノアを見る。
「お前のパーティーでは、これが普通なのか」
レインは少し考える。
「最近、似たようなの何回かやった」
「入りたくないな」
「まだ誘ってない」
◇◇◇
北側の崖へ到着すると、ノアの言った意味が分かった。
正面入口付近には魔物が集中している。だが北側は、かつて鉱石を運び出していた旧搬入口が崩落しており、現在は巨大な縦穴のようになっている。
下へ落ちれば。
第三鉱山の中層へ。
直接入れる。
問題は。
高さ。
「四十二メートル」
レインが見下ろす。
カインも。
「落ちたら普通に死ぬよね」
ユウト。
「レベル3の私は確実に死ぬ」
ノアは平然としている。
「レインが支援する」
レイン。
「俺を信用しすぎじゃない?」
「今まで何回助かったと思ってる」
「そう言われると反論しにくい」
ルークが崖の下を見る。
「僕は?」
「俺が抱える」
レインが言う。
「保存体でも、落ちて壊れたら嫌だから」
「壊れるって言わないで」
「ごめん」
ユウトが呆れる。
「弟には甘いな」
「普通だろ」
カイン。
「僕には?」
「自分で飛べ」
「差がひどい」
それでも。
作戦は決まった。
レインが全員へ《全域支援》。
身体能力。
衝撃軽減。
姿勢制御。
そして。
ノアが落下位置を指定する。
「下に古い鉱石搬送台が残ってる。それを経由して落下を三段階に分ける」
ユウトが聞く。
「落下を分割?」
「一気に四十メートル落ちるから死ぬ。十五、十五、十二に分ければ生存率は上がる」
「随分雑な物理だな」
「生きれば正解」
レインが言う。
ユウトは完全に諦めた顔をした。
「Rainは昔から理屈より結果を優先するところがあった」
「今の俺じゃなくて過去の俺に言って」
「似ているから言っている」
レインは返事をせず。
ルークを抱き上げた。
「行くぞ」
「うん」
「怖い?」
「少し」
「俺も」
「兄さんも?」
「ああ」
ルークは少し嬉しそうに笑った。
「じゃあ同じ」
レインも笑う。
そして。
飛んだ。
◇◇◇
最初の十五メートル。
古い搬送台。
ドン!
足。
衝撃。
でも。
耐える。
「次!」
ノア。
崩れかけた鉄骨。
レイン。
跳ぶ。
カイン。
続く。
ユウト。
「待て!」
「今さら止まれない!」
「私はまだ心の準備が!」
落下。
ユウト。
悲鳴。
「元魔王とは思えない!」
「今は人間だ!」
二段目。
着地。
そして。
最後。
十二メートル。
レイン。
《衝撃軽減》。
最大。
全員。
着地。
ドォン!
粉塵。
舞う。
数秒。
静寂。
レイン。
ルーク。
見る。
「大丈夫?」
「うん」
カイン。
「僕も聞いて」
「大丈夫?」
「遅い」
ユウト。
地面へ。
倒れている。
「……人間」
「弱い」
レイン。
「お前」
「昔」
「普通の日本人だったんだろ」
「三百年ぶりなんだ」
「慣れろ」
ノア。
すぐ。
立つ。
「来る」
全員。
切り替わる。
落下音。
大きい。
当然。
見つかる。
鉱山。
奥。
無数。
足音。
「数」
レイン。
解析。
【接近敵】
86。
ノア。
「三分以内に抜ける」
「戦わない?」
「戦えば」
「増援が来る」
「じゃあ」
「走る」
それが。
今の。
レインたち。
最も得意な。
戦い方。
◇◇◇
第三鉱山。
内部。
以前。
来た時とは違う。
壁。
黒い文字。
増えている。
【境界】
【こちら】
【あちら】
それが。
壁一面。
脈打つ。
生き物のように。
光っている。
カイン。
顔。
しかめる。
「気持ち悪い」
ユウトも。
「侵食が進んでる」
ルーク。
壁。
見る。
「ここ」
「昔は」
「普通の鉱山」
「何年前」
「十七年前までは」
レイン。
反応。
「俺が十三歳」
「そう」
ルーク。
記録。
読む。
「その頃」
「王国魔術院が」
「最初の実験」
「始めた」
ユウト。
「零号?」
「もっと前」
ルーク。
目。
細める。
「門」
「ここに」
「最初から」
「小さい亀裂」
「あった」
レイン。
「自然?」
「違う」
ルーク。
首。
横。
「誰かが」
「作った」
「誰」
ルーク。
さらに。
見る。
そして。
一瞬。
顔色。
変わる。
「兄さん」
「何」
「Rain」
レイン。
止まる。
「俺?」
「違う」
「昔の」
「117年前?」
「もっと」
「古い」
レイン。
317年前。
最初のRain。
世界。
食う。
境界。
開く。
「……最初の俺」
ルーク。
頷く。
「ここ」
「Rainが」
「この世界から」
「逃げる時に」
「開けた場所」
全員。
静止。
つまり。
第三鉱山のアビス。
最初。
317年前。
Rain自身が。
作った傷。
そこを。
王国魔術院。
見つけ。
研究。
そして。
零号。
完成個体。
全部。
始まった。
レイン。
小さく。
「俺」
「原因」
カイン。
すぐ。
言う。
「違う」
レイン。
見る。
「最初のRain」
「僕たちだけど」
「今の君じゃない」
「でも」
「それ」
「さっきガルドが」
「君に言ったのと」
「同じ」
結果と。
責任。
同じではない。
レイン。
少し。
息。
吐く。
「ありがとう」
カイン。
「気持ち悪い」
「何で」
「素直に感謝されると」
「君じゃないみたい」
「やっぱりお前嫌い」
「僕も」
◇◇◇
足音。
近づく。
魔物。
最初。
見える。
オーガ。
十。
ゴブリン。
多数。
ノア。
「右!」
全員。
曲がる。
通路。
狭い。
魔物。
追う。
レイン。
攻撃。
できない。
必要もない。
《速度支援》。
全員。
魔物より。
速く。
角。
左。
階段。
下。
ノア。
戦場設計。
「二十秒後」
「後ろ」
「崩す」
レイン。
「誰が」
カイン。
「僕」
「できる?」
「境界干渉じゃなくて」
「普通に」
「柱」
レイン。
「レベル12」
「関係ある?」
「あるよ!」
ユウト。
「私より」
「強い」
カイン。
「それはそう」
走りながら。
柱。
蹴る。
壊れない。
カイン。
「硬っ!」
レイン。
「何してる!」
「君が壊せって!」
「方法考えて!」
ルーク。
「兄さん」
「上」
カイン。
見る。
古い。
支持梁。
レイン。
支援。
《筋力強化》。
カイン。
跳ぶ。
梁。
蹴る。
ミシッ。
「もう一回!」
再度。
蹴る。
バキン!
崩落。
後ろ。
魔物。
止まる。
ユウト。
「今ので」
「戦闘しないと言えるのか」
ノア。
「敵を攻撃していない」
「理屈が」
「ずるいな」
◇◇◇
さらに。
下へ。
そして。
空気。
変わる。
冷たい。
音。
ない。
レイン。
覚えている。
零号と。
最初に。
対面した。
場所。
近い。
【周辺魔物反応】
急減。
86。
54。
12。
0。
ユウト。
「近い」
レイン。
「分かる?」
「魔王の周囲には」
「許可された個体しか」
「近づけない」
カイン。
「じゃあ」
「ここから」
「零号の領域」
ルーク。
立ち止まる。
「兄さん」
「何」
「声」
「聞こえる」
レイン。
耳。
澄ます。
何も。
でも。
ルーク。
記録。
ではない。
今。
起きている。
声。
「ごめんなさい」
ルーク。
言う。
「誰が」
「零号」
「何て」
「ごめんなさい」
「何度も」
レイン。
胸。
重い。
さらに。
進む。
巨大な。
広間。
そして。
見えた。
◇◇◇
零号。
一人。
中央。
膝。
ついている。
灰色の髪。
白い服。
でも。
背中。
黒い。
六枚。
翼。
ユウト。
百年前。
魔王。
同じ。
頭。
二本。
角。
でも。
顔。
零号。
泣いている。
その後ろ。
巨大な。
境界門。
開放率。
8%。
向こう。
魔王軍。
無数。
待つ。
「零号」
レイン。
呼ぶ。
彼女。
肩。
震える。
ゆっくり。
顔。
上げる。
黒い瞳。
一瞬。
灰色。
戻る。
「……来た」
レイン。
「遅くなった」
「ううん」
零号。
笑おうとする。
でも。
泣いてる。
「来てくれた」
そして。
次の瞬間。
瞳。
完全。
黒。
空気。
爆発。
「下がれ!」
ユウト。
叫ぶ。
零号。
一瞬で。
レイン。
目の前。
拳。
でも。
レイン。
前回と。
違う。
自己支援。
緊急。
ではない。
真職業。
《後衛》。
自分への。
直接強化。
制限。
ある。
でも。
ノア。
予測。
カイン。
境界。
二人。
同時。
「右!」
レイン。
身体。
逸らす。
拳。
頬。
掠める。
地面。
後ろ。
消し飛ぶ。
ドォォォン!
レイン。
「相変わらず」
「強すぎ!」
零号。
黒い瞳。
「逃げて」
声。
二重。
一つ。
命令。
一つ。
本人。
「逃げて!」
レイン。
「嫌だ!」
零号。
攻撃。
次。
蹴り。
ノア。
「下!」
レイン。
しゃがむ。
頭上。
衝撃。
カイン。
後ろ。
境界干渉。
「零号!」
彼女。
一瞬。
見る。
カイン。
似ている。
自分。
境界。
でも。
人間。
「僕も」
カイン。
叫ぶ。
「向こうから」
「こっちに」
「来た!」
零号。
手。
止まる。
「……どうやって」
声。
本人。
レイン。
逃さない。
「仲間が」
「助けた!」
カイン。
言う。
「君も」
「戻れる!」
零号。
目。
灰色。
戻る。
でも。
すぐ。
黒。
【魔王権限】
強制執行。
彼女の右手。
上がる。
境界門。
8%。
9%。
「止めろ!」
ユウト。
レイン。
「どうやって!」
「本人へ」
「話せ!」
「話だけ?」
「魔王機能と」
「本人を」
「分離するには」
「自己認識が必要だ!」
レイン。
理解。
カイン。
同じ。
名前。
存在理由。
ユウト。
人間へ。
戻る。
全部。
自分。
決める。
零号。
でも。
彼女。
名前。
ない。
「零号!」
「……」
「お前」
攻撃。
避ける。
「名前!」
零号。
顔。
歪む。
「ない」
「決めろ!」
「分からない!」
拳。
レイン。
ギリギリ。
避ける。
「何でもいい!」
「分からない!」
「じゃあ」
レイン。
息。
切れる。
「好きなもの!」
零号。
攻撃。
止まらない。
「ない!」
「嫌いなもの!」
「命令!」
一瞬。
全員。
止まる。
零号自身も。
言った。
「……命令」
レイン。
「それだ」
「何が」
「お前」
「命令」
「嫌いなんだろ!」
零号。
瞳。
揺れる。
「嫌」
「じゃあ」
「今」
「自分で」
「何したい!」
零号。
口。
開く。
でも。
魔王。
力。
阻害。
「私は」
黒。
灰。
黒。
灰。
「私は」
レイン。
待つ。
攻撃。
来ても。
避ける。
ノア。
生還経路。
誘導。
ユウト。
「無理するな!」
レイン。
「今!」
零号。
涙。
「私は」
一拍。
「誰も」
「傷つけたくない」
その瞬間。
境界門。
開放。
9%。
停止。
ユウト。
目。
見開く。
「通った!」
レイン。
「次!」
「名前!」
零号。
「分からない」
レイン。
「自分で!」
「……」
時間。
ない。
魔王権限。
再び。
強まる。
【強制世界侵食】
再開。
レイン。
零号。
見る。
灰色。
髪。
冷たい。
でも。
初めて会った時。
笑った。
「すごい」
レインを。
見て。
言った。
そこ。
人間。
零号。
だった。
「じゃあ」
レイン。
「一つだけ」
「俺から」
「候補」
ユウト。
「自分で決めさせろ!」
「候補!」
「決めるのは本人!」
零号。
レイン。
見る。
「何」
「レイ」
カイン。
「僕と」
「似てない?」
レイン。
「零号の」
「零」
「レイ」
「そのまま?」
ルーク。
「ミアみたい」
レイン。
「言うな」
零号。
ほんの。
少し。
笑う。
魔王。
状態。
なのに。
笑った。
「レイ」
「嫌なら」
「別の」
零号。
首。
横。
「嫌じゃない」
「じゃあ」
「自分で」
レイン。
言う。
「選ぶ?」
零号。
ゆっくり。
頷く。
「私」
一拍。
「レイにする」
世界。
震える。
【個体名】
零号。
↓
レイ。
【自己定義成立】
魔王権限。
同期率。
100%。
↓
91%。
ユウト。
「下がった!」
カイン。
「まだ!」
レイン。
次。
「レイ!」
名前。
呼ぶ。
零号。
いや。
レイ。
目。
灰色。
戻る。
「何」
「こっちに」
「残りたい?」
「……」
「命令」
「なくして」
「自分で」
「生きたい?」
レイ。
涙。
でも。
今度。
迷わない。
「生きたい」
境界門。
9%。
↓
8。
魔王権限。
91。
↓
78%。
ユウト。
「いける!」
「レゾナンス!」
エマ。
いない。
レイン。
止まる。
レゾナンス。
エマ。
ベルク。
今。
ここ。
ない。
「……剣」
ノア。
「持ってきてない?」
「エマが」
「持ってる」
カイン。
「どうする!」
レイン。
考える。
レゾナンス。
魔王機能。
分離。
必要。
でも。
ない。
なら。
別。
方法。
自分。
後衛。
攻撃。
できない。
でも。
繋ぐ。
世界。
仲間。
戦場。
全部。
後ろから。
繋ぐ。
【真職業】
《後衛》。
【固有能力】
《世界接続》。
レイン。
その文字。
初めて。
明確。
見る。
「……これ」
ノア。
「何」
「試す」
ユウト。
「何を!」
「俺」
「世界と」
「繋げる」
「誰を」
レイン。
レイを見る。
「こいつを」
◇◇◇
《世界接続》。
発動条件。
対象。
自己意思。
存在名称。
現実世界側。
受容。
レイ。
名前。
ある。
意思。
ある。
残り。
世界側。
受容。
どう。
する。
レイン。
パーティー。
見る。
カイン。
ユウト。
ルーク。
ノア。
アレン。
いない。
でも。
遠隔。
リベレーションⅡ。
繋がっている。
ベルク。
ガルド。
リリア。
エマ。
王都。
アレン。
セラ。
ミア。
全員。
パーティー。
「仲間」
レイン。
呟く。
ノア。
理解。
「パーティー登録?」
「ああ」
カイン。
「でも」
「レイは」
「まだ」
「仲間になるって」
「言ってない」
レイン。
見る。
「レイ」
「何」
「俺たちと」
「来る?」
レイ。
驚く。
「私」
「魔王」
「今は」
「そう」
「人」
「傷つける」
「今は」
「命令」
「されてる」
「そう」
「だったら」
レイン。
笑う。
「命令」
「なくなったら」
「どうする」
レイ。
考える。
初めて。
未来。
自分で。
考える。
「……分からない」
「じゃあ」
「探せばいい」
アレン。
ソラ。
カイン。
エマ。
全員。
同じ。
レイ。
長い。
沈黙。
そして。
「行きたい」
「どこ」
「レインたちと」
レイン。
「じゃあ」
手。
出す。
「仲間」
レイ。
震える。
手。
伸ばす。
触れる。
その瞬間。
【新規パーティーメンバー】
レイ。
【旧識別】
零号。
【現在状態】
魔王。
【潜在適職】
――未解析。
【才能評価】
規格外。
【リベレーションⅡ】
対象追加。
遠く。
ベルク。
ガルド。
一瞬。
身体。
光る。
「何だ?」
エマ。
「新しい」
「誰か」
王都。
アレン。
止まる。
「……零号?」
セラ。
「仲間に」
「なった?」
ミア。
「レインさん」
「また?」
三か所。
同時。
繋がる。
そして。
レイン。
《世界接続》。
発動。
◇◇◇
レイ。
身体。
光。
世界。
彼女。
拒絶。
する?
【世界適合判定】
魔王機能。
外部。
境界由来。
本人。
現実世界由来。
矛盾。
レイン。
《後衛》。
支援。
対象。
レイ。
「分けろ」
何に。
言う。
自分。
能力。
世界。
分からない。
でも。
意思。
明確。
「レイと」
一拍。
「魔王を」
「別にしろ!」
世界。
反応。
黒い翼。
レイ。
背中。
震える。
ユウト。
「来る!」
翼。
一枚。
剥がれる。
黒い。
塊。
門。
向こう。
引かれる。
レイ。
叫ぶ。
「痛い!」
レイン。
手。
離さない。
「ごめん!」
「痛い!」
「俺も!」
「レインさん」
ノア。
「痛くないだろ」
「気持ち!」
「黙れ!」
二枚。
三枚。
角。
黒い。
消える。
でも。
魔王権限。
抵抗。
【強制統合】
【魔王機能】
対象。
再固定。
レイ。
身体。
また。
黒く。
「駄目!」
カイン。
境界干渉。
押さえる。
「レイン!」
「足りない!」
ユウト。
「私も!」
「レベル3!」
「元魔王だ!」
ユウト。
レイの。
反対側。
手。
掴む。
「聞け!」
レイ。
「何」
「私は」
「百年以上」
「お前と」
「同じものに」
「操られた!」
魔王機能。
揺れる。
ユウト。
叫ぶ。
「でも」
「今」
「人間だ!」
レイ。
目。
ユウト。
見る。
「戻れる?」
「ああ!」
「本当に?」
ユウト。
一瞬。
レインを見る。
レイン。
頷く。
「戻れる!」
ユウト。
「保証する!」
レイン。
「お前」
「俺みたいなこと」
「言うようになったな!」
「今それ言うな!」
レイ。
少し。
笑う。
その瞬間。
魔王。
同期率。
78%。
↓
61。
「今!」
ノア。
レイン。
《世界接続》。
最大。
カイン。
境界。
ユウト。
旧魔王情報。
ルーク。
世界記録。
そして。
遠く。
パーティー全員。
支援。
微量。
流れ込む。
ガルド。
守る意思。
リリア。
魔力。
エマ。
神造。
アレン。
支援。
セラ。
未来。
ミア。
定着。
距離。
関係ない。
《リベレーションⅡ》。
全員。
繋がる。
レイン。
理解。
これ。
後衛。
本当。
能力。
自分が。
強い。
ではない。
全員。
いる。
から。
世界へ。
干渉。
できる。
「レイ!」
「何!」
「自分で!」
「最後!」
「決めろ!」
「魔王」
「やる?」
レイ。
泣きながら。
叫ぶ。
「やらない!」
「世界」
「壊す?」
「壊さない!」
「誰か」
「殺す?」
「嫌!」
「じゃあ」
「何になる!」
レイ。
一瞬。
止まる。
そして。
大声。
「分からない!」
レイン。
笑う。
「それでいい!」
世界。
光。
爆発。
【自己定義】
魔王。
拒否。
【世界機能】
分離。
【魔王権限】
解除。
黒い翼。
全部。
消える。
角。
消える。
境界門。
一気。
9%。
5%。
2%。
でも。
完全。
閉じない。
向こう。
巨大。
声。
初めて。
怒り。
――Rain。
――また。
――奪うのか。
レイン。
「奪ってない」
声。
向こう。
止まる。
「本人が」
「選んだ」
――選択。
――不要。
レイン。
表情。
変わる。
それ。
王国魔術院。
同じ。
完成個体。
命令。
道具。
観測者。
全部。
同じ。
「だから」
レイン。
低い声。
「お前は」
「駄目なんだ」
――何。
「人を」
「道具としか」
「見てない」
観測者。
沈黙。
レイン。
門。
向こう。
見る。
「30日後」
「来るんだろ」
――……。
「待ってる」
ノア。
「おい」
レイン。
「何」
「挑発」
「するな」
「でも」
レイン。
続ける。
「その時」
「お前も」
「選ばせる」
――私に。
――選択は。
――ない。
レイン。
「ある」
一拍。
「知らないだけだ」
境界門。
閉じる。
最後。
声。
――Rain。
――お前は。
――必ず。
――戻る。
レイン。
「戻らない」
門。
完全。
消失。
◇◇◇
静寂。
第三鉱山。
普通。
暗い。
岩。
空気。
それだけ。
魔王軍。
気配。
ない。
レイ。
その場。
倒れる。
「レイ!」
レイン。
支える。
呼吸。
ある。
身体。
人間。
解析。
【個体名】
レイ。
【種族】
人間。
――?
レイン。
「疑問符?」
ユウト。
「完全には」
「戻ってない?」
カイン。
見る。
「境界適合」
「まだ」
「高い」
レイン。
【境界適合率】
67%。
大きく。
下がった。
でも。
普通。
ではない。
レイ。
目。
開く。
灰色。
「……私」
「魔王?」
レイン。
「違う」
「零号?」
「違う」
レイ。
少し。
不安。
「じゃあ」
レイン。
笑う。
「レイ」
その名前。
彼女。
目。
閉じる。
「……うん」
そして。
小さく。
笑う。
「私」
「レイ」
◇◇◇
その瞬間。
レインの視界。
大量。
表示。
【魔王機能分離】
成功。
【特殊条件達成】
世界機能への。
本人意思による。
拒否。
【経験値】
規格外。
【実レベル】
70。
↓
74。
「……四つ」
ノア。
「また?」
「ああ」
カイン。
レベル。
12。
↓
18。
ユウト。
3。
↓
8。
ルーク。
30。
変化なし。
【リベレーションⅡ】
遠隔。
全員。
成長。
ベルク。
ガルド。
盾同調。
52%。
↓
58%。
リリア。
魔力。
上昇。
エマ。
神造覚醒率。
30%。
↓
34%。
王都。
アレン。
後衛適性。
4%。
↓
9%。
セラ。
未来視。
強化。
ミア。
錬金。
精度。
上昇。
そして。
レイ。
【レベル】
50。
【表示上限】
50。
【実レベル】
……。
レイン。
止まる。
「レイ」
「何」
「お前」
表示。
再解析。
【実レベル】
83。
全員。
「……」
カイン。
「僕」
「18」
ユウト。
「私は8」
ノア。
「比較するな」
レイン。
「俺」
「74」
レイ。
不安そう。
「高いの?」
レイン。
苦笑。
「俺より」
「高い」
レイ。
目。
大きくなる。
「私」
「強い?」
「めちゃくちゃ」
少し。
考えて。
「でも」
レイン。
付け加える。
「今は」
「戦わなくていい」
レイ。
「……」
その言葉。
彼女にとって。
初めて。
言われた。
強い。
なら。
戦え。
殺せ。
命令。
いつも。
それ。
だった。
でも。
戦わなくていい。
レイ。
少し。
泣く。
「何で」
レイン。
「何が」
「何で」
「優しいの」
レイン。
困る。
「普通?」
カイン。
「君が言うと」
「説得力ない」
ユウト。
「同意」
レイン。
「二人とも」
「置いてくぞ」
◇◇◇
その時。
ルーク。
突然。
第三鉱山の奥。
見る。
「兄さん」
「何」
「まだ」
「何か」
「いる」
全員。
構える。
レイン。
解析。
魔物。
なし。
境界。
閉鎖。
でも。
ルーク。
《記録保持者》。
奥。
見る。
「ずっと」
「ここ」
「いた」
「誰」
「王国魔術院でも」
「魔王軍でも」
「ない」
アレン。
いない。
でも。
完成個体。
零号。
レイ。
彼女。
反応。
「知ってる」
レイン。
「誰」
レイ。
怖い顔。
「私を」
「最初に」
「作った人」
全員。
空気。
変わる。
「王国魔術院じゃない?」
ノア。
レイ。
首。
横。
「その人が」
「魔術院に」
「教えた」
「境界を」
「人に」
「入れる方法」
レイン。
背筋。
冷える。
「名前」
レイ。
「知らない」
「顔」
「覚えてる」
「どんな」
レイ。
奥。
暗闇。
指す。
「今」
「そこにいる」
全員。
見る。
足音。
ゆっくり。
近づく。
一人。
老人。
白い。
ローブ。
杖。
ない。
武器。
ない。
でも。
レインの解析。
最初から。
失敗。
【対象】
解析不能。
老人。
レイを見る。
「失敗したか」
声。
静か。
レイ。
震える。
レイン。
前。
出る。
「誰だ」
老人。
レイン。
見る。
そして。
少し。
笑う。
「Rain」
「ようやく」
一拍。
「会えた」
レイン。
「俺を知ってる?」
「もちろん」
老人。
「私は」
一歩。
「三百十七年前」
さらに。
「最初に」
一拍。
「お前を」
「この世界へ」
「呼んだ人間だ」
全員。
完全に。
止まった。
レインの視界。
【Rain第一記録】
317年前。
未確認人物。
照合。
開始。
そして。
老人。
名前。
初めて。
表示。
【個体名】
アーク。
レイン。
息。
止まる。
「……アーク?」
自分。
仮姓。
レイン・アーク。
父親が。
付けた。
その名。
老人。
笑う。
「そう」
「お前の父親が」
「なぜ」
「アークという姓を」
「与えたと思う」
レイン。
答えられない。
老人。
ゆっくり。
言う。
「私を」
一拍。
「忘れないためだ」
――第四十九話 了――




