第四十八話 零号、魔王となる
第四十八話 零号、魔王となる
第三鉱山の最深部で、零号は静かに目を開いた。
首元には、これまで彼女を縛り続けてきた黒い首輪があった。命令に逆らえば身体を焼き、逃げようとすれば意識を奪い、自分が何者なのかを考えることさえ許さなかった枷。それが今、誰かに触れられたわけでもないのに、中央から細い亀裂を走らせている。
一度。
二度。
黒い雷が首輪の表面を走り、そのたびに零号の身体が大きく震えた。
だが、以前とは違った。
痛みに耐えているのではない。
彼女自身の身体から溢れ始めた何かに、首輪の方が耐えられなくなっている。
【境界適合率】
104%。
108%。
112%。
本来なら百を越えるはずのない数値は、止まるどころか加速していた。
「……痛くない」
零号が、自分でも不思議そうに呟く。
これまで首輪が作動するたびに、身体の内側を焼かれるような苦痛があった。だが今は、黒い雷が皮膚へ触れる前に消えていく。
そして。
パキン。
あまりにも小さな音とともに、首輪が割れた。
零号は、足元へ落ちた黒い破片をしばらく見つめていた。
命令。
制裁。
回収。
拘束。
これまで、それが彼女の世界のすべてだった。
そのどれもが。
今はない。
「自由……?」
口にしてみる。
けれど、意味は分からない。
アレンが選んだもの。
ソラが知り始めたもの。
そして。
レインが、何度も口にしていたもの。
自分で選べ。
その言葉だけが、なぜか頭の奥に残っていた。
だが、その直後。
零号の視界へ、新しい文字が浮かぶ。
【権限移行】
旧分類――試作個体零号。
新規分類――魔王。
【世界権限】
魔族統率。
境界門形成。
魔力循環。
世界侵食。
【命令】
世界を開け。
零号は。
しばらく。
その文字を見ていた。
そして、小さく首を傾げる。
「……命令?」
自由になったはずだった。
首輪はない。
制裁もない。
なのに。
また。
命令。
彼女の表情から、ほんの少しだけ感情が消えた。
「嫌」
その一言で。
視界の文字が揺れた。
【命令拒否】
再実行。
【世界を開け】
「嫌」
【再実行】
「嫌」
三度目。
文字が赤く染まる。
【強制執行】
その瞬間、第三鉱山全体が激しく揺れた。
零号の意思とは無関係に、足元から黒い亀裂が広がり始める。岩盤を割るのではない。空間そのものを引き裂き、こちら側と境界の向こう側を繋ぐ巨大な穴が形成されていく。
そこから。
魔物の咆哮が聞こえた。
一体。
十体。
百体。
さらに、その奥には数えることすらできない気配がある。
零号は初めて。
明確な恐怖を浮かべた。
「違う」
自分が開いている。
でも。
開きたいわけではない。
「私は」
黒い亀裂がさらに広がる。
「こんなの」
両手で。
空間を押さえる。
「したくない!」
だが。
世界の命令は。
彼女の意思より強い。
【魔王権限】
完全起動。
境界門。
開放率――1%。
◇◇◇
同じ頃。
灰月迷宮。
崩れ始める最終層を、レインたちは全速力で走っていた。
「右!」
ノアの指示に従い、全員が崩落する天井を避ける。ガルドが最後尾で大盾を構え、落ちてきた巨大な岩を受け止めた。
「レイン! 出口までどれくらいだ!」
「二百メートル!」
「迷宮なのに距離が見えるのか!」
「今さらだろ!」
「確かに!」
ガルドが岩を押し返す。
ユウトは、その横を走りながら自分の身体を確認していた。
つい先ほどまで世界最高レベル50の魔王だった男。
現在。
レベル1。
完全な人間。
「身体が重い」
「レベル1だからな」
レインが答える。
「昔は普通に走れたはずなのに」
「三百年くらい魔王やってたからじゃない?」
カインが言う。
「お前もレベル9だろ」
「僕は成長中」
「俺も人間として再出発したばかりだ」
「無職として?」
「それを言うな」
こんな状況でも。
会話が成立する。
レインは。
それが少しだけありがたかった。
一ヶ月後。
第二次魔王軍侵攻。
そして。
魔王はすでにこちらにいる。
零号。
彼女と初めて会った時。
百体以上の魔物が。
たった一言で逃げた。
逃げて。
あの時。
零号は。
魔物を操っていたわけではない。
魔物の方が。
本能的に。
彼女を恐れていた。
「ユウト!」
走りながら。
レインが聞く。
「何だ!」
「魔王になった時」
「自分の意思は残ってた?」
ユウトの表情が変わった。
「突然何だ」
「零号」
「もし」
「お前と同じなら」
ユウトは。
数秒。
考える。
「私の場合は」
「最初から完全に支配されたわけではない」
「じゃあ」
「徐々に?」
「ああ」
「最初は」
「力が増える」
「身体が変わる」
「それだけだった」
「その後」
「声が聞こえるようになった」
レイン。
嫌な予感。
「観測者?」
ユウト。
「今なら」
「そうだったと分かる」
「何て言われた」
「人間は敵だ」
「この世界は間違っている」
「自分なら作り直せる」
「そして」
ユウト。
一拍。
「Rainを連れてこい」
レインの足が。
一瞬。
止まりかける。
「俺?」
「ああ」
「私は」
「魔王になってから」
「ずっと」
「お前を探していた」
「だから」
「117年前のRainが」
「現れた時」
ユウト。
少し。
苦い顔。
「嬉しかった」
「殺すために?」
「違う」
「連れて行くために」
カインが。
横から。
「アビスへ?」
「そうだ」
レイン。
頭の中で。
繋がる。
観測者。
完全なRain。
必要。
カインを戻そうとした。
そして。
零号へ。
魔王権限。
付与。
なら。
次。
狙われるのは。
「俺か」
ユウト。
「間違いない」
◇◇◇
出口。
光。
見える。
ノア。
「全員!」
「そのまま!」
迷宮。
最後。
崩れる。
ガルド。
大盾。
後方。
壁。
押さえる。
「先に行け!」
レイン。
「ガルド!」
「俺は最後でいい!」
エマが振り返る。
「盾!」
ガルドの新しい神造盾。
亀裂。
増えている。
【所有者同調率】
46%。
49%。
52%。
盾そのものが。
ガルドの意思に反応し。
形。
変わる。
以前より。
横へ広がる。
巨大な。
壁。
「おお?」
ガルド自身が。
驚く。
エマも。
「変形した……」
ミア。
「やっぱり変形機能!」
ガルド。
「お前が付けたんじゃねえだろ!」
崩落。
盾。
受ける。
ドォォン!
【神造武具】
新規能力。
《絶対退路》。
仲間が撤退中。
防御性能。
大幅上昇。
レイン。
表示。
見る。
「ガルド!」
「何!」
「今なら」
「たぶん」
「死なない!」
ガルド。
「もっと安心できる言い方しろ!」
最後。
全員。
出口。
飛び出す。
ガルド。
盾。
解除。
直後。
迷宮入口。
閉じる。
巨大な扉。
消える。
灰月迷宮。
完全攻略。
成立。
◇◇◇
外。
そこに。
アレンとルークがいた。
「兄さん!」
ルークが走ってくる。
レイン。
反射的に。
受け止める。
小さな身体。
保存体。
成長しない。
でも。
確かに。
弟。
「大丈夫だった?」
「何とか」
「ノエルは?」
レインの表情が。
少し。
柔らかくなる。
「思い出した」
ルークの目が。
大きくなる。
「本当に?」
「ああ」
「名前」
「ノエル」
その瞬間。
ルークの瞳から。
涙。
流れる。
「……そうだ」
小さな声。
「ノエル」
一度。
名前が戻れば。
記憶。
少しずつ。
繋がる。
「僕」
「いたこと」
「知ってたのに」
「名前」
「忘れてた」
レイン。
弟の頭。
軽く。
撫でる。
「俺も」
「でも」
「今度は」
「忘れない」
アレンも。
少し離れた場所で。
静かに。
その様子を見ていた。
そして。
カイン。
ルークが。
初めて。
完全な人間になったカインを見る。
「……もう一人の兄さん」
カイン。
顔。
引きつる。
「やっぱりその呼び方?」
「じゃあ」
ルーク。
考える。
「カイン兄さん」
カイン。
一瞬。
止まる。
そして。
少し。
照れたように。
顔を逸らした。
「それなら」
「まあ」
「いい」
レイン。
笑う。
「嬉しそう」
「違う」
「顔同じだから分かる」
「最近」
「それを言われるのが」
「一番腹立つ」
◇◇◇
だが。
その短い時間は。
すぐ終わった。
アレンが。
レインへ近づく。
「零号のこと」
「ああ」
「私にも」
「変化が分かります」
「どんな」
アレン。
空。
見る。
「完成個体には」
「互いの」
「境界反応を」
「僅かに」
「感知できる仕組みが」
「あります」
「ソラも?」
「はい」
「でも」
「今」
アレン。
顔。
険しい。
「零号の反応が」
「以前と」
「全く違う」
レイン。
「魔王?」
アレン。
驚く。
「なぜ」
「分かるのです」
レイン。
ユウトを見る。
アレンも。
初めて。
気付く。
「……誰です?」
ユウト。
「結城悠斗」
「職業」
一拍。
「無職」
アレン。
「……」
レイン。
「元魔王」
アレン。
完全に。
動きを止める。
「最初から」
「そちらを」
「言ってください」
ユウト。
「今は人間だ」
アレン。
しばらく。
ユウトを見る。
「境界反応」
「ほぼ」
「ありません」
レイン。
「戻した」
アレン。
「また?」
「また」
アレン。
ため息。
「少し」
「目を離すと」
「仲間が」
「増えますね」
ガルド。
「今のところ」
「こいつは」
「仲間じゃねえ」
ユウト。
「飯を奢らせるまでは」
「レインについて行く」
ミア。
「それ」
「仲間と」
「ほぼ同じでは?」
レイン。
「言うな」
◇◇◇
ノアが。
全員を集める。
「ふざけるのは」
「ここまで」
その一言で。
空気。
変わる。
「30日後」
「魔王軍侵攻」
「そして」
「零号が」
「魔王化した可能性」
ノア。
地面へ。
地図。
広げる。
ベルク。
ラグナ。
王都。
第三鉱山。
「まず」
「優先順位を」
「決める」
レイン。
「第一」
「零号」
ノア。
「理由」
「本人が」
「望んで」
「魔王に」
「なったとは」
「思えない」
ユウト。
「同意する」
「私も」
「最初は」
「望んでいなかった」
レイン。
「なら」
「まだ」
「戻せる」
エマ。
《レゾナンス》。
見る。
「私たちが」
「ユウトさんを」
「戻したみたいに?」
「たぶん」
レイン。
解析。
【対象】
零号。
遠隔解析。
不能。
でも。
【レゾナンス】
対応可能性。
高。
「可能性はある」
ノア。
「第二」
レイン。
「ソラ」
アレンの表情。
変わる。
「王国魔術院」
レイン。
「ああ」
「零号の魔王化と」
「関係してるかもしれない」
「第三」
ユウト。
割り込む。
「魔王軍」
ノア。
「30日後」
「準備」
ユウト。
首を横に振る。
「違う」
「何」
「魔王軍は」
「一ヶ月後に」
「突然現れる」
「わけではない」
全員。
見る。
「境界門」
「小規模なものから」
「少しずつ」
「開く」
「侵攻開始の30日前なら」
「すでに」
「先遣隊が」
「出始める」
その瞬間。
遠く。
爆発音。
ドォン――。
全員。
振り返る。
方向。
ベルク。
煙。
上がる。
セラ。
未来視。
即座。
「街!」
「魔物!」
「数」
「五十」
「違う」
さらに。
見る。
「増えます!」
ノア。
「何体」
「百」
「二百」
セラ。
顔。
変わる。
「門が」
「開いてる!」
レイン。
走り出す。
「全員!」
ガルド。
盾。
背負う。
リリア。
杖。
ミア。
薬。
エマ。
レゾナンス。
アレン。
カイン。
ユウト。
ルーク。
「ルーク」
レイン。
止まる。
弟。
見る。
「ここ」
「残れ」
ルーク。
「嫌だ」
即答。
レイン。
「危険」
「十年」
「ここに」
「一人で」
「いた」
ルーク。
兄を見る。
「もう」
「一人は」
「嫌だ」
レイン。
言葉。
止まる。
カイン。
横。
「連れて行こう」
レイン。
「でも」
「守ればいい」
「簡単に」
「兄さん」
ルーク。
「僕」
「保存体」
「死ににくい」
「そういう問題じゃない」
「でも」
「役に立てる」
レイン。
鑑定。
初めて。
弟。
本格。
見る。
【ルーク】
分類――保存体。
実年齢――不明。
外見年齢――10。
レベル――30。
職業――なし。
そして。
【潜在才能】
……。
レインの表情。
変わる。
「何だよ」
ルーク。
「何」
【潜在適職】
《記録保持者》。
【能力】
失われた情報を保存する。
改変された記憶を保護する。
世界記録を参照する。
一部。
過去再現。
レイン。
息。
呑む。
「お前」
「何」
「めちゃくちゃ」
「重要」
ルーク。
少し。
得意そう。
「知ってる」
レイン。
「知ってたの?」
「少し」
カイン。
「じゃあ」
「何で今まで」
ルーク。
「聞かれなかったから」
レイン。
頭。
抱える。
「うちの家族」
「そういうの」
「多すぎる」
◇◇◇
ベルクへ。
全員。
走る。
レイン。
後方。
《全域支援》。
速度。
疲労。
全員。
一気に。
上げる。
ユウト。
驚く。
「これが」
「今のRainの」
「力?」
レイン。
「攻撃」
「できないけど」
ユウト。
「知ってる」
「昔のお前も」
「最後は」
「似たところへ」
「辿り着いていた」
「じゃあ」
「何で」
「一人で」
「やってた」
ユウト。
少し。
苦笑。
「人付き合いが」
「下手だった」
カイン。
「それ」
「今も」
「変わってない」
レイン。
「お前」
「レベル9のくせに」
「喧嘩売る?」
「レベル関係ない」
ノア。
先頭。
「喋る余裕が」
「あるなら」
「もっと走れ!」
全員。
速度。
上げる。
◇◇◇
ベルク。
北門。
そこは。
すでに。
戦場。
街の上空。
黒い。
裂け目。
大きさ。
十メートル。
そこから。
魔物。
次々。
落ちてくる。
ゴブリン。
オーク。
悪魔。
飛行魔族。
今までの。
自然発生魔物。
違う。
整列。
指揮。
軍隊。
「魔王軍……」
リリア。
初めて。
目の前。
見る。
ノア。
即座。
戦場。
解析。
「住民避難!」
「ガルド!」
「門!」
「任せろ!」
「リリア!」
「上空!」
「はい!」
「セラ!」
「飛行型!」
「分かりました!」
「ミア!」
「避難経路!」
「薬じゃないんですか!?」
「煙幕!」
「はい!」
「エマ!」
「ガルドの盾!」
「強化します!」
「アレン!」
「補助!」
「了解!」
「カイン!」
「境界門!」
カイン。
上。
見る。
「僕?」
「見えるだろ!」
「見えるけど」
「今」
「レベル9!」
「レベルは」
「飾り!」
ユウト。
横。
「それ」
「この世界で」
「一番」
「言ってはいけない」
レイン。
「俺が」
「言うと」
「説得力あるだろ」
ユウト。
「確かに」
そして。
レイン。
ルーク。
見る。
「お前は」
「俺と」
「一緒」
ルーク。
「何する?」
「記録」
「門が」
「どう開いたか」
「見れる?」
ルーク。
黒い裂け目。
見る。
瞳。
光。
【記録保持者】
発動。
「……見える」
レイン。
「何が」
「零号」
全員。
動き。
一瞬。
止まる。
「この門」
ルーク。
「零号が」
「開いた」
レイン。
胸。
重い。
やっぱり。
でも。
ルーク。
続ける。
「違う」
「何が」
「零号」
「泣いてる」
レイン。
顔。
変わる。
「泣いてる?」
「うん」
「嫌だって」
「言ってる」
「でも」
「身体が」
「勝手に」
「門」
「開いてる」
ユウト。
「完全支配」
レイン。
見る。
「違う」
ユウト。
「私より」
「酷い」
「零号は」
「境界適合率が」
「高すぎる」
アレン。
「100%を」
「越えています」
ユウト。
顔色。
変わる。
「それなら」
「彼女は」
「魔王に」
「されたんじゃない」
「何」
「魔王という」
「世界機能を」
「直接」
「載せられた」
レイン。
「戻せる?」
ユウト。
答えない。
「ユウト」
「……分からない」
初めて。
そう。
言った。
「私とは」
「構造が」
「違いすぎる」
レイン。
零号。
思い出す。
逃げて。
嫌。
命令。
首輪。
そして。
「分からないなら」
一拍。
「やってみる」
ユウト。
レインを見る。
「失敗したら」
「世界が」
「終わるかもしれない」
「成功したら」
「零号が」
「戻る」
「それだけで」
「やる?」
レイン。
即答。
「ああ」
ユウト。
しばらく。
黙る。
そして。
小さく。
笑う。
「やっぱり」
「お前だな」
◇◇◇
魔物。
三百。
門。
さらに。
広がる。
ノア。
叫ぶ。
「話は後!」
「まず」
「ここを」
「守る!」
レイン。
後方。
立つ。
今。
自分たちは。
世界最強。
ではない。
まだ。
遠い。
未来。
魔王軍。
本隊。
30日後。
でも。
始まった。
レイン。
《全域支援》。
全員。
繋ぐ。
ガルド。
盾。
街。
守る。
リリア。
空。
魔法。
セラ。
矢。
ミア。
煙幕。
ノア。
戦場。
エマ。
武具。
アレン。
二重支援。
カイン。
境界。
ユウト。
レベル1。
「俺」
「何する?」
レイン。
一瞬。
考える。
「住民」
「逃がせ」
ユウト。
「元魔王に」
「避難誘導?」
「今」
「無職」
「だろ」
ユウト。
「それ」
「便利に」
「使いすぎだ!」
走る。
住民。
方向。
指示。
それを見て。
レイン。
少し。
笑う。
百年前。
世界を滅ぼしかけた魔王が。
今。
子供を抱いて。
避難させている。
世界。
変えられる。
なら。
零号も。
きっと。
◇◇◇
戦闘。
十五分。
魔物。
残り。
百。
三十。
十。
そして。
最後。
ガルド。
大盾。
オーク。
押し返す。
リリア。
地面。
凍らせる。
セラ。
武器。
射抜く。
攻撃。
倒す。
ではない。
無力化。
ノア。
「終わり!」
ベルク。
静寂。
門。
まだ。
空。
開いている。
レイン。
見る。
「カイン」
「閉じられる?」
「試す」
カイン。
両手。
門。
向ける。
【境界干渉】
出力。
レベル9。
0.9%。
足りない。
レイン。
支援。
《才能共鳴》。
カイン。
出力。
0.9。
1.4。
2.1。
「もう少し!」
アレン。
横。
《支援範囲拡張》。
レイン。
さらに。
カイン。
4%。
門。
縮む。
十メートル。
八。
五。
三。
でも。
止まる。
「閉じない!」
レイン。
ルーク。
見る。
「原因」
「分かる?」
ルーク。
門。
記録。
読む。
「向こう側」
「誰か」
「押さえてる」
レイン。
「誰」
ルーク。
顔。
青くなる。
「ソラ」
アレン。
完全に。
止まる。
「一号?」
「ソラ」
レイン。
言い直す。
ルーク。
頷く。
「ソラが」
「門を」
「向こう側から」
「閉じようとしてる」
「じゃあ」
「味方」
「うん」
でも。
「その後ろ」
ルーク。
震える。
「王国魔術院」
「人」
「たくさん」
「何してる」
ルーク。
一拍。
「ソラを」
「殺そうとしてる」
アレン。
走り出す。
「待て!」
レイン。
「行きます!」
「どこに!」
「王国魔術院!」
「今から?」
「ソラが!」
レイン。
腕。
掴む。
アレン。
怒り。
初めて。
露わ。
「離してください!」
「一人で」
「行くな!」
「でも!」
「俺も」
「行く!」
アレン。
止まる。
レイン。
全員を見る。
ベルク。
救援。
必要。
でも。
ソラ。
今。
危険。
零号。
魔王。
そして。
30日。
全部。
同時。
ノア。
すぐ。
判断。
「分ける」
レイン。
「パーティーを?」
「ああ」
「初めて」
「でも」
ノア。
地図。
出す。
「今は」
「それが」
「最適」
「ベルク」
「魔王軍先遣隊」
「追加」
「来る可能性」
「王都」
「ソラ」
「第三鉱山」
「零号」
三つ。
場所。
三つ。
問題。
「全員で」
「一つずつ」
「回る時間は」
「ない」
レイン。
嫌。
一人で。
決めたくない。
だから。
聞く。
「みんな」
「どう思う」
ガルド。
「ベルク」
「俺」
「残る」
エマ。
「私も」
「盾」
「直す」
リリア。
「私も」
「広範囲魔法なら」
「街の防衛」
「向いてます」
セラ。
「私は」
「王都」
「未来視」
「必要かもしれません」
ミア。
「私も」
「ソラさんの」
「制御装置」
「壊せるかも」
アレン。
「当然」
「王都」
カイン。
「僕は」
「零号」
全員。
見る。
「境界」
「一番」
「分かるのは」
「僕」
ユウト。
「私も」
「零号へ」
レイン。
「理由」
「魔王を」
「経験した」
「なら」
「彼女へ」
「話せることが」
「ある」
ノア。
「俺は」
「レイン」
「一緒」
レイン。
「何で」
「お前が」
「どこへ行くか」
「一番」
「危険だから」
「ひどいな」
「事実」
そして。
ルーク。
「僕も」
「兄さん」
レイン。
「危険」
「記録」
「必要でしょ」
確かに。
◇◇◇
班。
決まる。
ベルク防衛。
ガルド。
リリア。
エマ。
王都潜入。
アレン。
セラ。
ミア。
第三鉱山。
レイン。
ノア。
カイン。
ユウト。
ルーク。
レイン。
全員。
見る。
「一つだけ」
「何」
ガルド。
「無理」
「するな」
ガルド。
笑う。
「お前が言うな」
リリアも。
「同感です」
ミア。
「レインさんに」
「一番」
「言われたくありません」
レイン。
「俺」
「そんな?」
全員。
「そんな」
少し。
笑う。
でも。
すぐ。
真剣。
レイン。
「三日」
ノア。
「何が」
「三日後」
「ベルクで」
「一度」
「合流」
ノア。
考える。
「妥当」
「それまで」
「生きる」
ガルド。
「簡単だ」
レイン。
「そう?」
「お前と」
「別行動なら」
「危険度」
「下がりそうだ」
レイン。
「ひどい」
でも。
全員。
笑う。
そして。
それぞれ。
方向。
違う。
初めて。
《リベレーション》。
分かれる。
レイン。
不安。
ある。
でも。
以前。
違う。
仲間を。
信じる。
それも。
後衛。
仕事。
◇◇◇
出発。
直前。
レインの視界。
【リベレーションⅡ】
特殊条件。
遠隔支援。
解放。
「……」
レイン。
止まる。
【パーティーメンバー】
一定距離以上。
離脱時。
支援効果。
30%。
維持。
レイン。
笑う。
「何」
リリア。
「離れても」
「支援」
「少し」
「残る」
ガルド。
盾。
持ち。
笑う。
「なら」
「安心だな」
レイン。
「俺が」
「じゃない」
ガルド。
「俺たちが」
その言葉。
レイン。
少し。
嬉しい。
「じゃあ」
「行こう」
三班。
分かれる。
ベルク。
王都。
第三鉱山。
そして。
第三鉱山。
零号。
黒い門。
前。
一人。
膝。
ついている。
身体。
魔王。
力。
増える。
境界門。
開放率。
5%。
彼女。
泣いている。
「レイン」
誰も。
いない。
それでも。
名前。
呼ぶ。
「あの時」
「逃げてって」
「言ったけど」
手。
震える。
「今度は」
一拍。
「来て」
魔王軍。
背後。
無数。
並ぶ。
零号。
必死に。
自分を。
押さえる。
「私を」
「止めて」
そして。
遠く。
レイン。
同じ瞬間。
足。
速める。
理由。
説明。
できない。
でも。
聞こえた。
気がした。
「待ってろ」
一拍。
「今度は」
「逃げない」
30日後の決戦へ向けて。
世界最強となるパーティーの。
最初の分岐戦が。
始まった。
――第四十八話 了――




