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世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


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第三十六話 世界に拾われなかった者たち

第三十六話 世界に拾われなかった者たち


ソラが消えた場所には。


何も残っていなかった。


光も。


魔力の残滓も。


足跡さえ。


完全に。


消えている。


「……転移痕までない」


ノアが地面を見る。


「追えない?」


レインが聞く。


「普通の転移なら」


「ある程度は」


「残る」


「でも」


ノアは首を横に振る。


「これは違う」


アレンも。


静かに言う。


「強制帰還です」


「帰還?」


「はい」


「完成個体は」


「登録された管理領域へ」


「直接戻されます」


レイン。


「場所は」


アレン。


少し迷う。


「王国魔術院地下」


「ただし」


一拍。


「正確な座標は」


「私も知りません」


ガルドが眉をひそめる。


「お前も出入りしてたんだろ」


「出入りではありません」


「では?」


「運ばれていました」


全員。


黙る。


アレンは。


淡々と続ける。


「目隠し」


「感覚遮断」


「移動中は」


「意識を落とされます」


リリア。


「場所を」


「知られないため?」


「そうです」


レイン。


「徹底してるな」


アレン。


「研究施設なので」


「普通です」


ミア。


小さく。


「全然普通じゃないです」


アレン。


少しだけ。


笑う。


「今は」


「そう思います」


◇◇◇


ベルク鍛冶師組合。


警鐘は。


すでに止まっていた。


だが。


街中。


騒然。


一号。


いや。


ソラ。


街一つ。


止めた。


その事実。


誰も。


理解できていない。


幸い。


死者。


なし。


怪我人も。


ほぼなし。


ただ。


突然。


全員。


数十秒間。


動けなくなった。


「呪いか」


「魔王軍か」


「古代兵器?」


噂。


勝手に。


広がる。


レインたちは。


ドレイクの工房。


奥。


集まっていた。


ドレイク。


腕組み。


「説明してもらおうか」


レイン。


「何を」


「全部だ」


「長いですよ」


「構わん」


「俺たちは」


ドレイク。


レインを見る。


「街ごと止めるような奴に」


「工房へ入られた」


「しかも」


エマを見る。


「二百年ぶりの神造鍛冶師まで」


「巻き込まれている」


「知らんでは」


「済まさん」


レイン。


何も言えない。


正論。


ノア。


「全部話す必要はない」


「ノア」


「でも」


ノア。


ドレイクを見る。


「最低限」


「危険性は伝えるべきだ」


ドレイク。


「俺が判断する」


レイン。


少し考える。


そして。


頷く。


「分かりました」


◇◇◇


レインは。


話せる範囲を。


話した。


アビス。


境界。


零号。


完成個体。


王国魔術院。


アレン。


ソラ。


自分の。


一部。


ただし。


内部レベル。


父親。


そこまでは。


話さない。


ドレイク。


最後まで。


黙って聞く。


そして。


長い。


ため息。


「……面倒だな」


レイン。


「俺もそう思います」


「お前が言うな」


エマ。


小さく。


「すみません」


ドレイク。


「お前が謝るな」


「でも」


「私が」


「この人たちと関わったから」


ドレイク。


エマを見る。


「逆だ」


「何が」


「お前は」


「こいつらと関わったから」


「神造鍛冶師になった」


エマ。


黙る。


ドレイク。


ガルドの新しい盾。


見る。


「その盾」


「街で一番の鍛冶師でも」


「作れん」


エマ。


「……」


「片腕だから」


「無理だと言われていたな」


「はい」


「俺も」


「そう思っていた」


エマ。


顔。


上げる。


ドレイク。


「間違っていた」


短い。


言葉。


でも。


エマには。


十分。


「……はい」


声。


少し。


震える。


ドレイク。


レインを見る。


「それで」


「この娘を」


「どうする」


レイン。


「本人が決めます」


エマ。


驚く。


「私?」


「ああ」


「仲間になるか」


「ベルクに残るか」


「別の工房へ行くか」


「全部」


「自分で決めていい」


エマ。


「……」


レイン。


「ただ」


「俺たちは」


「明日」


「未攻略迷宮へ行く」


「その後」


一拍。


「王国魔術院へ」


アレン。


表情。


変わる。


「直接?」


「ああ」


「危険です」


「知ってる」


「ソラを取り返すんですよね」


「それもある」


「他に?」


レイン。


「俺のことを」


「知ってる奴が」


「あそこにいる」


アレン。


少し。


黙る。


「……そうですね」


父親。


十八年前。


アレンが。


殺した男。


その裏。


王国魔術院。


レイン。


もう。


避けられない。


◇◇◇


「なら」


ドレイク。


立ち上がる。


「迷宮へ行く前に」


「一つ」


「見せたいものがある」


レイン。


「何を」


ドレイク。


工房。


奥。


巨大な棚。


その裏。


隠し扉。


鍵。


三つ。


順番。


開ける。


ギィィ。


地下階段。


「ついて来い」


全員。


警戒。


ノア。


《生還経路》。


「危険なし」


ガルド。


「こういう時」


「一言あるだけで助かるな」


ミア。


「私も欲しいです」


ノア。


「何を」


「爆発生還経路」


ガルド。


「まず爆発させるな」


地下。


暗い。


階段。


長い。


下。


古い。


倉庫。


いや。


保管庫。


壁。


武器。


防具。


何百。


どれも。


古い。


でも。


魔力。


残る。


レイン。


解析。


【装備群】


製造年代。


200~800年前。


品質。


B~A。


「すごい……」


エマ。


目。


輝く。


ドレイク。


さらに。


奥。


一つ。


台座。


布。


かかっている。


「これだ」


布。


取る。


剣。


いや。


折れている。


半分。


刀身。


途中。


失われている。


柄。


ボロボロ。


それでも。


異様。


レイン。


解析。


【対象装備】


――解析不能。


「……」


また。


解析不能。


でも。


人ではない。


装備。


初めて。


ドレイク。


「二百十三年前」


「最後の神造鍛冶師が」


「聖剣を作る前に」


「打った剣だ」


リリア。


「勇者の聖剣の」


「前?」


「ああ」


ドレイク。


「失敗作」


エマ。


「失敗作?」


「本人が」


「そう呼んだ」


「名前は」


ドレイク。


剣を見る。


「《名無し》」


レイン。


妙な。


違和感。


名前が。


ない。


アレン。


名前を。


持たなかった。


ソラ。


番号しか。


なかった。


そして。


この剣。


名無し。


レイン。


手。


伸ばす。


「触っていいですか」


「待て」


ドレイク。


止める。


「誰が触っても」


「何も起きん」


「でも」


「神造鍛冶師だけは」


「違う」


エマ。


「私?」


ドレイク。


「ああ」


エマ。


右手。


剣へ。


触れる。


その瞬間。


カァァン――。


工房でも。


聞いた。


澄んだ。


音。


でも。


今度は。


地下全体。


響く。


剣。


光。


そして。


レインの視界。


【解析権限】


一時開放。


「……!」


表示。


【名称】


未命名。


【製作者】


初代神造鍛冶師。


【完成度】


17%。


【状態】


封印。


「完成度17%?」


エマ。


「見えるんですか?」


「ああ」


「何が」


「これ」


「失敗作じゃない」


ドレイク。


表情。


変わる。


「何?」


レイン。


表示。


見る。


【製造目的】


境界外存在への対抗。


全員。


静止。


「……境界」


アレン。


「この剣」


レイン。


「境界の敵を」


「倒すために」


「作られてる」


ドレイク。


「そんな記録は」


「残っていない」


「でも」


レイン。


さらに。


【中止理由】


製作者死亡。


【継承条件】


神造鍛冶師。


【再製造】


可能。


エマ。


息。


呑む。


「私が」


「完成させられる?」


レイン。


「そう出てる」


エマ。


剣。


見る。


片腕。


自分。


二百年前。


途中で。


終わった。


神造鍛冶師。


その続きを。


自分が?


「無理です」


反射。


言葉。


レイン。


「まだ」


「何もしてない」


エマ。


「でも」


「聖剣を作った人の」


「途中の剣です」


「そうだな」


「私」


「昨日まで」


「見習いでした」


「そうだな」


「片腕で」


「そうだな」


「……」


レイン。


「だから?」


エマ。


止まる。


レイン。


「昨日まで」


「何だったかは」


「関係ない」


一拍。


「今」


「できるかどうか」


「それだけ」


エマ。


剣を見る。


ミア。


横。


「一緒にやりましょう!」


エマ。


「でも」


「これは」


「普通の錬金じゃ」


「分かってます!」


「分かってるんですか?」


「全然!」


「……」


ミア。


笑う。


「だから」


「一緒に調べます!」


エマ。


少し。


笑う。


「変な人」


ガルド。


「こいつら」


「全員そうだ」


レイン。


「お前もな」


◇◇◇


その時。


アレン。


剣。


見つめる。


顔色。


変わる。


「レイン」


「何」


「この紋章」


柄。


小さな。


刻印。


レイン。


見る。


【境界】


【こちら】


【あちら】


また。


同じ。


アレン。


指。


震える。


「知っています」


「どこで」


「王国魔術院」


「どの場所」


アレン。


記憶。


探る。


「地下」


「完成個体研究区画」


「この紋章」


「全ての扉に」


「ありました」


レイン。


「じゃあ」


「王国魔術院は」


「二百年前から」


「境界を知っていた?」


アレン。


「それだけではありません」


「何」


アレン。


剣の。


紋章。


下。


小さな。


数字。


消えかけ。


エマ。


目を凝らす。


「……十八?」


レイン。


身体。


止まる。


18。


十八年前。


父親。


保護機構。


最終更新。


十八年前。


アレンが。


父を殺した年。


「偶然?」


リリア。


レイン。


「分からない」


だが。


表示。


【追加情報】


製造記録。


最終更新。


――18年前。


全員。


黙る。


ドレイク。


「二百年前の剣だぞ」


「なぜ」


「十八年前に」


「更新されてる」


レイン。


表示。


さらに。


【最終接触者】


情報破損。


復元。


1%。


3%。


7%。


そして。


文字。


一部。


【――イン・アーク】


レイン。


呼吸。


止まる。


「……アーク」


自分の。


姓。


アレン。


顔色。


変わる。


「レイン」


「この文字」


「何」


「私は」


「見たことがあります」


「どこで」


アレン。


唇。


僅かに。


震える。


「あなたの父親の」


「研究記録」


レイン。


一歩。


近づく。


「父親の名前」


「言えないって」


「そうでした」


「でも」


アレン。


剣の文字。


見る。


「記憶封印を」


「直接刺激しない形なら」


「もしかすると」


レイン。


「何が分かる」


アレン。


ゆっくり。


答える。


「あなたの父親は」


一拍。


「鍛冶師ではありません」


「でも」


「この剣の」


「完成計画に」


「関わっていました」


レイン。


無言。


エマ。


剣。


握る。


「じゃあ」


「この剣を」


「完成させれば」


レイン。


見る。


エマ。


続ける。


「お父さんのことも」


「分かるかもしれない?」


レイン。


表示。


【継承製造】


開始可能。


【必要条件】


神造鍛冶師。


境界素材。


所有者。


そして。


【設計情報】


欠損。


復元条件。


――実レベル60。


レイン。


止まる。


現在。


52。


あと。


8。


「……またレベルか」


ガルド。


「何?」


レイン。


「この剣」


「俺が60になれば」


「設計情報を」


「一部復元できる」


ノア。


目。


変わる。


「なら」


「迷宮へ行く理由が」


「増えた」


レイン。


頷く。


レベル100。


だけではない。


まず。


60。


父親。


剣。


ソラ。


全部。


繋がり始める。


◇◇◇


ドレイク。


腕組み。


「エマ」


「はい」


「決めろ」


「何を」


「ここに残るか」


「こいつらと行くか」


エマ。


剣を見る。


壊れた。


名無し。


未完成。


自分。


片腕。


未完成。


似ている。


そんな。


気がした。


「私」


長い。


沈黙。


そして。


レインを見る。


「一つ」


「条件があります」


レイン。


「何」


「工房」


「工房?」


「旅に」


「持っていけません」


「当たり前だ」


「でも」


エマ。


真剣。


「必要です」


ミア。


目。


輝く。


「移動工房!」


ガルド。


嫌な予感。


「待て」


ミア。


「作れます!」


「何を!」


「車輪付き!」


ガルド。


「お前」


「車輪好きだな!」


エマ。


「馬車を」


「改造すれば」


「簡易炉くらい」


「積めます」


ミア。


「錬金釜も!」


ガルド。


「爆発する馬車は嫌だぞ!」


ノア。


「生還経路が」


「常時必要になりそうだな」


アレン。


「私が」


「運転しましょうか」


レイン。


「できるの?」


「できません」


「何で言った!」


アレン。


「失敗してもいいと」


「それを便利に使うな!」


笑い。


地下。


響く。


エマ。


笑う。


そして。


決める。


「行きます」


ドレイク。


「そうか」


「はい」


「私は」


エマ。


名無しの剣。


見る。


「この剣を」


「完成させたい」


一拍。


「それに」


ガルドの盾。


見る。


「みんなの武器も」


「作りたい」


レイン。


手。


差し出す。


「よろしく」


エマ。


右手。


握る。


【仲間獲得】


エマ・ベルク。


【パーティー人数】


8。


【職業】


神造鍛冶師。


【潜在才能】


S。


そして。


《リベレーション》。


発動。


【才能上限】


解除。


エマ。


身体。


淡く。


光る。


【神造鍛冶師】


上限A。



上限――。


消失。


エマ。


「……何か」


「変な感じ」


レイン。


笑う。


「たぶん」


「これから」


「もっと変になる」


ガルド。


「言い方考えろ」


◇◇◇


翌朝。


ベルク北門。


新しい。


大盾。


ガルド。


背負う。


エマ。


荷物。


ミア。


錬金道具。


異常に多い。


ノア。


地図。


リリア。


杖。


セラ。


弓。


アレン。


包丁。


腰。


レイン。


見る。


「なぜ包丁」


アレン。


「昨日」


「料理を手伝えと」


「戦闘装備にするな」


「護身用です」


「人参から?」


「人参は襲ってこないと」


「教わりました」


レイン。


「そこは覚えてるんだな」


八人。


ベルク北方。


未攻略迷宮。


向かう。


目的。


第一。


ガルドの新装備実戦試験。


第二。


エマの神造能力確認。


第三。


レイン。


実レベル60。


そして。


その先。


王国魔術院。


ソラ。


「行くぞ」


レイン。


歩き出す。


だが。


その時。


セラ。


止まる。


「待って」


レイン。


「どうした」


未来視。


セラ。


顔。


変わる。


「迷宮」


「何」


「入口で」


「誰か」


「待ってます」


ノア。


「敵?」


「分かりません」


「何人」


「一人」


アレン。


「王国魔術院?」


セラ。


首。


横。


「違うと思います」


「顔が」


「見えます」


レイン。


「誰」


セラ。


少し。


困惑。


「子供」


「子供?」


「男の子」


「何歳くらい」


「十歳」


「一人で?」


「はい」


そして。


セラの声。


低くなる。


「でも」


「変です」


「何が」


「その子」


未来。


見る。


「私たちが来る前から」


「レインさんの名前を」


「知っています」


全員。


止まる。


レイン。


嫌な予感。


「何て言ってる」


セラ。


聞く。


未来の少年。


迷宮入口。


一人。


座る。


そして。


レインが来る。


顔を上げる。


笑う。


「遅かったね」


そして。


少年は。


こう言った。


「兄さん」


レイン。


完全に。


固まった。


「……兄?」


レインには。


兄弟はいない。


少なくとも。


そう。


記憶している。


だが。


視界。


その瞬間。


新しい。


警告。


【記憶領域】


家族情報。


異常反応。


【兄弟関連情報】


状態。


――封印。


レイン。


声が。


出ない。


父親だけでは。


なかった。


自分には。


もう一人。


忘れさせられた。


家族がいる。


――第三十六話 了――

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