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世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


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第三十三話 上限のない仲間たち

第三十三話 上限のない仲間たち


「俺たち、全員、世界最強になれるぞ」


レインの言葉に。


誰もすぐには反応できなかった。


ガルド。


リリア。


セラ。


ミア。


ノア。


そして。


新しく《アレン》という名前を得た十二号。


全員が。


レインを見ている。


「……どういう意味だ」


最初に口を開いたのは。


ノアだった。


レインは。


視界に浮かぶ表示を見つめる。


【パーティー固有能力】


《リベレーション》


【効果】


パーティーメンバーの才能上限を撤廃する。


【対象】


レイン・アーク


ガルド・バルガス


リリア


セラ


ミア


ノア・グレン


アレン


「そのままの意味だ」


レインが答える。


「俺たち全員」


「才能の上限が消えた」


沈黙。


ミアが。


ゆっくり手を挙げる。


「質問です」


「何」


「才能の上限って」


「何ですか?」


「そこからか」


「はい」


ガルドが笑う。


「俺もよく分かってねえぞ」


「なら私だけじゃないですね!」


「安心するな」


レインは。


少し考えて。


説明する。


「この世界では」


「人間の才能にも限界がある」


「職業適性」


「能力成長」


「魔法適性」


「全部」


「一定以上には上がらない」


リリアが頷く。


「最高評価がA」


「ああ」


「じゃあ」


セラ。


「私たちは」


「Aより上へ行ける?」


「たぶん」


全員。


「たぶん?」


「表示には上限撤廃としか書いてない!」


ガルドが。


呆れた顔。


「またそれか」


「俺の能力は説明不足なんだよ!」


アレンが。


少し首を傾げる。


「確認しても?」


「何」


「レイン」


「あなた自身は」


「もともと上限がありませんでしたね」


「ああ」


「では」


アレン。


仲間を見る。


「今」


「私たちも」


「あなたと同じ状態になった?」


レインは。


少し考える。


「完全に同じではないと思う」


「理由は?」


「俺は」


「レベル上限そのものがない」


「お前たちは」


「才能上限が消えた」


「レベルまで消えたかは分からない」


ノア。


「つまり」


「強さの伸びしろが」


「無限になっただけかもしれない」


「そういうこと」


ガルド。


「十分おかしいだろ」


「おかしいですね」


ミア。


「世界最高の盾より」


「上へ行けるってことですよね」


ガルド。


「そうなるな」


「世界最高の錬金術師より」


「上」


ミア。


自分の手を見る。


「……爆発も」


「世界最高になる?」


「そこは上限残っててほしい」


全員が笑った。


◇◇◇


笑いが。


少し収まる。


アレンだけは。


自分の手を見つめていた。


「……才能上限」


レインが気付く。


「どうした」


アレン。


「私は」


「完成個体として」


「能力を与えられてきました」


「境界反転」


「空間短縮」


「因果干渉」


「強力です」


「でも」


一拍。


「一度も」


「才能を育てたことがありません」


レインは黙って聞く。


「私は」


「完成していると言われました」


「それ以上」


「成長する必要はない」


「命令されたことを」


「実行できればいい」


アレン。


少しだけ。


笑う。


「それが」


「今さら」


「上限がなくなったと言われても」


「何を目指せばいいのか」


「分かりません」


レインは。


少し考えた。


そして。


「簡単だ」


アレン。


「簡単?」


「ああ」


レイン。


仲間を見る。


「自分で決めろ」


アレンの表情が変わる。


「名前と同じだ」


「今までは」


「誰かに決められてきた」


「なら」


「今度は」


「自分で決めればいい」


アレン。


「でも」


「何を」


「分からないなら」


レイン。


笑う。


「試せばいい」


ミアが。


大きく頷く。


「失敗していいんですよ!」


アレンが。


ミアを見る。


「失敗?」


「はい!」


ミア。


胸を張る。


「私は」


「失敗の専門家です!」


ガルド。


「自慢するな」


「でも」


ミア。


「失敗して」


「次に直せばいいんです」


「レインさんに」


「そう教わりました」


アレンは。


レインを見る。


「本当に?」


「ああ」


「同じ失敗をしなければ」


「新しい失敗は何回でもいい」


アレン。


しばらく。


考える。


「変わったルールですね」


ノア。


「こいつのパーティーは」


「大体そうだ」


リリア。


「でも」


「居心地はいいですよ」


セラ。


「私も」


「ここで初めて」


「失敗しても怒られないって」


「知りました」


アレンは。


五人を見る。


それぞれ。


一度は。


捨てられた者たち。


それなのに。


今。


誰も。


俯いていない。


「……そうですか」


小さく。


笑う。


「なら」


「少し」


「試してみます」


レイン。


「何を」


「後衛を」


◇◇◇


ベルクまで。


残り一日半。


一行は。


敵部隊から離れ。


森の奥へ移動した。


ノアが。


進路を変える。


「主要街道は避ける」


「王国魔術院が先回りする可能性がある」


レイン。


「ベルクに入るのも危険か?」


「街の入口次第」


セラ。


未来視。


「今のところ」


「危険な未来は見えません」


「ただ」


「何」


「私たちがベルクに入った後」


「誰かが」


「街へ来ます」


ガルド。


「追手?」


「分かりません」


「顔は?」


セラ。


首を横に振る。


「見えないです」


レイン。


「時間は」


「明日の夜くらい」


ノア。


「なら」


「一日で用事を済ませる」


ミア。


「盾ですね!」


ガルド。


「最優先だ!」


「あと」


ノア。


「迷宮」


ベルク北方。


十年以上。


攻略されていないDランク迷宮。


「レイン」


「何」


「そこ」


「経験値稼ぎに使えるかもしれない」


レインの表情が変わる。


「理由」


「Dランク」


「でも攻略されていない」


「つまり」


ノア。


「強い魔物がいるんじゃない」


「攻略方法が特殊」


「戦闘リスクは低い」


「でも」


「未攻略補正がある可能性が高い」


レイン。


解析。


【迷宮攻略経験値】


未踏破区域。


高。


初回攻略。


特別加算。


「……当たり」


ノアが。


少し笑う。


「やっぱりな」


ガルド。


「なら」


「さっさと行こうぜ」


リリア。


「でも」


「まず装備です」


ガルド。


「そうだ」


ミア。


目を輝かせる。


「新しい盾」


「作りましょう!」


「普通ので頼む」


「はい!」


一拍。


「たぶん!」


「何でたぶんなんだ!」


◇◇◇


その日の夜。


小さな洞窟。


野営。


レインが料理。


リリア。


食器。


セラ。


薪。


ノア。


見張り配置。


ガルド。


盾の残骸。


ミア。


設計図。


アレン。


何もしていない。


いや。


何をすればいいのか。


分からない。


「アレン」


レインが呼ぶ。


「はい」


「暇?」


「……はい」


「じゃあ」


包丁。


渡す。


「野菜切って」


アレンが。


固まる。


「私が?」


「ああ」


「戦闘訓練では」


「ないですよね」


「料理」


「なぜ」


「パーティーだから」


「……」


アレンは。


包丁を見る。


十八年間。


武器なら。


何千回も握った。


剣。


短剣。


槍。


暗器。


でも。


包丁。


野菜。


初めて。


「どう切るのですか」


レイン。


「適当に」


「さっき」


「支援を適当にするなと言われました」


「料理は多少適当でも大丈夫」


「基準が分かりません」


ガルド。


笑う。


「考えすぎだ」


アレン。


人参。


置く。


包丁。


構える。


レイン。


「待て」


「何です?」


「何で戦闘姿勢なんだ」


「刃物なので」


「人参は襲ってこない」


「分かっています」


「じゃあ殺気を消せ!」


アレン。


深呼吸。


包丁。


下ろす。


トン。


人参。


真っ二つ。


さらに。


トン。


トン。


トン。


速い。


異常に。


速い。


レイン。


「おお」


ミア。


「すごい!」


アレン。


僅かに。


得意そう。


だが。


次の瞬間。


まな板。


真っ二つ。


「……」


全員。


沈黙。


アレン。


包丁を見る。


「失敗しました」


レイン。


「新しい失敗だ」


ミア。


嬉しそうに。


「合格です!」


ガルド。


「何の合格だよ」


アレン。


しばらく。


壊れたまな板を見る。


そして。


笑った。


本当に。


小さく。


「失敗って」


「こういうものなんですね」


レイン。


「今まで」


「失敗したことないのか」


「許されませんでした」


「失敗した個体は」


「廃棄されます」


空気が。


少し変わる。


リリア。


手を止める。


セラも。


アレンは。


平然と続ける。


「だから」


「失敗しないように」


「作られました」


レイン。


「でも」


「今は」


アレン。


壊れたまな板を見る。


「失敗しても」


「廃棄されない」


レイン。


「ああ」


「怒られない?」


「まな板代は請求する」


アレン。


「……」


ミア。


「そこは怒るんですね」


「物は大事にしろ」


ガルド。


笑う。


「普通だな」


その時。


レインの視界。


【アレン】


潜在才能解放率。


3%。



4%。


「……」


レイン。


思わず。


笑う。


戦闘ではない。


料理。


たった。


まな板一枚。


それだけで。


才能が。


少し開いた。


たぶん。


強くなるというのは。


こういうことなのだ。


戦うだけじゃない。


自分で選ぶ。


失敗する。


笑う。


仲間と暮らす。


その全部。


成長。


「アレン」


「はい」


「明日も料理手伝え」


アレン。


少し。


驚く。


「また?」


「ああ」


「今度は」


「まな板を壊すな」


「努力します」


ミア。


「そこは成功しますって言うんですよ!」


アレン。


ミアを見る。


「あなたに」


「言われたくありません」


一瞬。


全員。


静かになる。


そして。


爆笑。


ミア。


「ひどい!」


アレンも。


自分で言って。


少し驚いている。


でも。


笑っていた。


◇◇◇


翌日。


昼。


ベルクの街。


山間。


煙突。


鍛冶場。


至るところから。


金属を打つ音。


カン。


カン。


カン。


ガルド。


目を輝かせる。


「いい街だ」


ミア。


もっと。


目を輝かせる。


「最高です!」


レイン。


「爆発させるなよ」


「分かってます!」


「本当に?」


「たぶん!」


「不安だ」


ノア。


周囲を見る。


「予定通り」


「追手なし」


セラ。


未来視。


「今も大丈夫です」


一行。


街へ入る。


その瞬間。


レインの視界。


【特殊反応】


「……?」


人。


通り。


鍛冶師。


商人。


冒険者。


その中。


一人。


座っている。


少女。


年齢。


十六くらい。


小柄。


金色の髪。


片腕。


ない。


左腕。


肩から。


完全に。


失われている。


それでも。


右手だけで。


小さな剣を。


研いでいる。


周囲。


誰も。


気にしていない。


レイン。


解析。


【名前】


エマ・ベルク。


【職業】


鍛冶師見習い。


【レベル】


8。


【現在評価】


F。


普通。


だが。


その下。


【潜在才能】


解析。


一秒。


二秒。


レインの目。


大きくなる。


【潜在才能】


――S。


「……」


アレン。


気付く。


「どうしました」


レイン。


少女を見る。


【真の適職】


《神造鍛冶師》


【特殊才能】


《魂装》


《成長武具》


《所有者同調》


そして。


最後。


【身体欠損】


左腕。


【適性】


問題なし。


レイン。


「……見つけた」


ガルド。


嫌な予感。


「何を」


レイン。


少女を指す。


「鍛冶師」


ミア。


「盾作ってもらうんですか?」


「違う」


一拍。


レイン。


笑う。


「仲間候補」


ガルド。


頭を抱える。


「街に入って」


「まだ五分だぞ!」


レイン。


気にしない。


少女。


エマ。


その前。


一人の鍛冶師が。


怒鳴る。


「また失敗か!」


剣。


地面へ。


投げる。


「片腕で」


「まともな剣が打てるわけないだろ!」


エマ。


俯く。


「すみません」


「もういい」


鍛冶師。


吐き捨てる。


「今日で工房を辞めろ」


周囲。


視線。


誰も。


止めない。


エマ。


一言。


「……はい」


荷物。


少ない。


まとめる。


その姿。


レイン。


昔の。


自分を見る。


追放。


無能。


役立たず。


もう。


何度も。


見た。


レイン。


少女の前へ。


歩く。


ガルド。


「やっぱり行くのか」


「ああ」


リリア。


笑う。


「レインさんですから」


セラ。


頷く。


ミア。


「今度は私の仲間ですね!」


ノア。


「まだ加入してない」


アレン。


レインを見る。


そして。


少しだけ。


笑う。


「こうやって」


「集めたんですね」


レイン。


「何を」


「私たちを」


レイン。


一瞬。


止まる。


そして。


「そうかもな」


エマ。


荷物。


抱える。


レイン。


声。


「ちょっといい?」


少女。


顔を上げる。


「……何ですか」


レイン。


迷わず。


言う。


「君」


「世界最高の鍛冶師になれるぞ」


エマ。


完全に。


固まった。


後ろ。


ガルド。


小声。


「初対面で」


「それ言うの」


「そろそろやめた方がいいぞ」


ミア。


「私は好きです!」


ノア。


「お前は聞かれてない」


エマ。


レインを見る。


そして。


真顔で。


言った。


「……怪しい宗教ですか?」


レイン。


「違う!」


アレン。


初めて。


声を出して。


笑った。


――第三十三話 了――

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