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世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


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第三十二話 六人目の追放者

第三十二話 六人目の追放者


「お前、後衛の才能があるぞ」


十二号は。


人生で初めて。


意味が分からないという顔をした。


「……後衛?」


「ああ」


「私が?」


「そうだ」


周囲には。


王国魔術院の追跡部隊。


残り二十一人。


完全に。


戦闘中である。


十二号は。


しばらくレインを見つめ。


「レイン」


「何だ」


「あなたは」


一拍。


「馬鹿なのですか?」


「何でだ!」


「今する話ではありません!」


「俺もそう思う!」


ガルドが叫ぶ。


巨大な金属板で。


敵の剣を受けながら。


「勧誘は後にしろ!」


「でも逃げられるだろ!」


「逃げません!」


十二号。


「じゃあ今しかない!」


「そういう問題ではありません!」


リリアが。


思わず笑いそうになる。


「レインさん!」


「右から来ます!」


セラ。


未来視。


「三人!」


レインの表情が変わる。


「十二号!」


「はい!」


「話は後だ!」


「最初からそうしてください!」


◇◇◇


敵。


二十一人。


平均レベル。


40前後。


冒険者なら。


一人でも。


上位パーティーの主力。


それが。


二十一。


しかも。


訓練された集団。


正面から戦えば。


危険。


だが。


こちらも。


さっきまでとは違う。


十二号がいる。


そして。


レインは。


十二号の本当の才能を知った。


【十二号】


【潜在適性】


後衛支援士。


【才能評価】


S。


「十二号!」


「何です!」


「境界能力を使うな!」


十二号が。


敵の剣を避けながら。


レインを見る。


「正気ですか?」


「使えば身体に負担がかかる!」


「今はそんなことを――」


「それに!」


レイン。


敵の魔法を避ける。


「お前の本当の才能は」


「そっちじゃない!」


「……」


十二号。


一瞬。


止まる。


敵。


槍。


「危ない!」


ガルド。


金属板。


ドン!


槍を弾く。


「話しながら止まるな!」


「すみません!」


ガルド。


十二号を見る。


「お前」


「意外と素直だな!」


「今それを言いますか!」


「似た者同士じゃねえか!」


「誰とです!」


ガルド。


レインを指す。


十二号。


「……」


レイン。


「何で黙る!」


◇◇◇


「ノア!」


「分かってる!」


戦場設計。


敵。


二十一。


味方。


七。


ノアの視界。


線。


無数。


「中央を割る!」


「リリア!」


「はい!」


《アイス・ウォール!》


ドォン!


巨大な氷壁。


敵部隊。


左右へ分断。


右。


九。


左。


十二。


「セラ!」


「右!」


矢。


三本。


敵。


回避。


だが。


矢は。


敵を狙っていない。


木。


縄。


切断。


巨大な倒木。


ドォォン!


右側。


通路。


封鎖。


「右九人を隔離!」


ノア。


「左十二だけ相手にする!」


レイン。


支援。


《身体強化》。


ガルド。


《魔力効率》。


リリア。


《感覚強化》。


セラ。


《思考加速》。


ノア。


《精密操作》。


ミア。


そして。


十二号。


レイン。


一瞬。


止まる。


さっき。


十二号を支援した。


境界適合率が上がった。


危険。


なら。


別の支援。


【対象】


十二号。


【適性検索】


攻撃強化。


危険。


身体強化。


危険。


魔力強化。


危険。


では。


何を。


その瞬間。


表示。


【潜在才能連動】


可能。


「……これだ」


レイン。


十二号へ。


《才能解放補助》。


発動。


十二号の身体。


光。


だが。


境界文字は。


出ない。


「これは……」


十二号が。


自分の手を見る。


【境界適合率】


82%。


変化なし。


代わりに。


【後衛支援適性】


封印解除。


1%。


十二号。


目を見開く。


「何を」


「お前の」


レイン。


「本来の力を」


「少しだけ開けた」


十二号の視界。


変わる。


仲間。


レイン。


ガルド。


リリア。


セラ。


ミア。


ノア。


全員の状態。


見える。


「……これは」


レイン。


笑う。


「どうだ」


「後衛の景色は」


十二号。


言葉を失う。


これまで。


十二号が見ていたもの。


敵。


標的。


距離。


殺害手順。


命令。


それだけ。


だが。


今。


違う。


ガルド。


左腕。


疲労。


リリア。


魔力消費。


セラ。


集中力低下。


ミア。


右足。


軽い捻挫。


ノア。


思考負荷。


レイン。


――。


十二号の目が。


止まる。


レインだけ。


情報量が。


異常。


見えない。


「レイン」


「後!」


「え?」


十二号。


反射的に。


手を伸ばす。


《速度補助》。


レイン。


身体。


一瞬。


軽くなる。


敵の剣。


回避。


「……!」


十二号自身が。


驚く。


レイン。


笑う。


「できたじゃないか」


十二号。


自分の手を見る。


「私が」


「支援を?」


「ああ」


「攻撃ではなく」


「ああ」


「誰かを」


一拍。


「守った?」


その言葉。


十二号の表情が。


変わる。


十八年前。


命令。


殺せ。


自分の手。


血。


レインの父。


倒れる。


それ以来。


十二号の力は。


壊すためにしか。


使われなかった。


でも。


今。


同じ手で。


一人を。


助けた。


「……」


「十二号!」


レイン。


「ぼーっとするな!」


「はい!」


十二号。


初めて。


自分の意思で。


仲間を見る。


「ガルド!」


「おう!」


《耐久補助》。


ガルドの身体。


軽く光る。


「おお!?」


敵。


三人。


同時攻撃。


ドドドン!


金属板。


受ける。


「軽い!」


ミア。


目を輝かせる。


「私の盾が!」


「俺の盾だ!」


「元盾です!」


「どっちでもいい!」


十二号。


次。


「リリア!」


「はい!」


《魔力循環》。


リリア。


目を見開く。


「魔力消費が」


「減った?」


《スター・ランス!》


一発。


二発。


三発。


連射。


敵。


後退。


「セラ!」


《視覚補助》。


「……見える」


セラ。


敵の動き。


未来視。


そして。


十二号の補助。


現在と未来。


重なる。


矢。


放つ。


敵の武器だけを。


弾く。


「ミア!」


「はい!」


《投擲補正》。


「え?」


ミア。


薬瓶。


投げる。


一直線。


敵の足元。


割れる。


煙。


「私」


「こんなに投げるの上手かったですか!?」


「違います!」


十二号。


「私です!」


「すごい!」


十二号。


止まる。


褒められた。


初めて。


戦闘能力ではなく。


人を助けたことで。


「……」


レイン。


「嬉しそうだな」


「そんなことは」


「顔に出てるぞ」


「出ていません!」


出ていた。


◇◇◇


ノアが。


戦場を見る。


そして。


気付く。


「レイン!」


「何!」


「十二号と」


「同時に支援できるか!」


レイン。


一瞬。


考える。


「やったことない!」


「やれ!」


「簡単に言うな!」


「お前ならできる!」


「根拠は!」


「勘!」


「戦場設計士が勘で言うな!」


だが。


レインも。


同じことを考えていた。


支援。


一人。


それだけなら。


今までと同じ。


でも。


支援者が。


二人。


もし。


互いの支援を。


重ねられたら。


レイン。


十二号を見る。


「やるぞ!」


「何を!」


「俺がお前を支援する!」


「境界適合率が上がります!」


「才能だけだ!」


「そして」


レイン。


笑う。


「お前が俺を支援しろ!」


十二号。


固まる。


「あなたを?」


「ああ!」


「無理です!」


「何で!」


「あなたの情報が」


「多すぎて見えません!」


「適当でいい!」


「支援を適当にするなと」


「今あなたが教えたんでしょう!」


「確かに!」


ガルド。


「漫才してねえで早くしろ!」


敵。


迫る。


「十二号!」


レイン。


《才能解放補助》。


十二号。


【後衛支援適性】


1%。



3%。


「来る……!」


十二号。


レインを見る。


見えない。


情報。


膨大。


なら。


全部を見る必要はない。


一つ。


今。


必要なもの。


十二号。


目を閉じる。


レイン。


三度。


追放。


攻撃能力。


なし。


防御。


D。


それでも。


仲間を守る。


なら。


必要なのは。


「これです」


十二号。


手。


レインへ。


《支援範囲拡張》。


レインの目。


大きくなる。


自分の支援。


範囲。


一気に。


広がる。


十メートル。


二十。


五十。


百。


「……!」


【支援範囲】


×10。


「全員!」


レイン。


両手。


広げる。


《身体強化》。


《速度上昇》。


《疲労軽減》。


《魔力効率》。


《集中補助》。


《感覚強化》。


七人。


同時。


光。


ノア。


目を見開く。


「これなら」


戦場。


線。


変わる。


【勝利条件】


敵部隊無力化。


達成率。


43%。



68%。



81%。


「いける!」


◇◇◇


敵隊長。


顔色。


変わる。


「十二号!」


「何をしている!」


十二号。


レインの隣。


立つ。


「支援です」


「お前は戦闘個体だ!」


「違うそうです」


十二号。


少しだけ。


笑う。


「私も」


「今知りました」


敵。


一斉。


突撃。


ノア。


「三秒後!」


セラ。


「右四!」


リリア。


「任せて!」


ガルド。


「中央!」


ミア。


「煙幕!」


十二号。


「全員!」


支援。


レイン。


重ねる。


二重支援。


【特殊連携発生】


レイン × 十二号。


【共鳴支援】


発動。


全員。


能力。


跳ね上がる。


ガルド。


金属板。


一振り。


敵三人。


吹き飛ぶ。


「これ盾じゃなくて武器じゃねえか!」


ミア。


「変形機能つけます!?」


「だからいらん!」


リリア。


魔法。


敵の足元。


凍結。


セラ。


矢。


武器。


次々。


弾く。


ノア。


敵の逃げ道。


全部。


塞ぐ。


そして。


レイン。


敵を。


一人も。


攻撃していない。


十二号も。


一人も。


攻撃していない。


それでも。


戦況は。


完全に。


逆転していた。


敵隊長。


剣。


落とす。


周囲。


二十人。


全員。


戦闘不能。


死者。


ゼロ。


レイン。


息を吐く。


「終わりだ」


◇◇◇


静寂。


十二号は。


倒れた敵たちを見る。


誰も。


死んでいない。


自分も。


誰も。


殺していない。


「……こんな」


レイン。


「何?」


「戦い方が」


十二号。


「あるんですね」


「ある」


「敵を倒さなくても」


「勝てる?」


「ああ」


十二号。


自分の手を見る。


十八年間。


殺すための手。


初めて。


違う使い方をした。


レイン。


十二号の前へ。


「それで」


「何でしょう」


「さっきの話」


十二号。


嫌な予感。


「パーティーに入れ」


「……」


「お前は」


「後衛支援士として」


「俺たちに必要だ」


十二号。


少し困った顔。


「私は」


「あなたの父親を殺した男ですよ」


「忘れてない」


「王国魔術院の実験体です」


「知ってる」


「追われることになります」


「もう追われてる」


「境界能力も不安定です」


「ミアが何とかする」


ミア。


「え?」


「できるだろ」


「やります!」


「即答ですか!?」


ガルド。


笑う。


「諦めろ」


リリアも。


笑う。


「レインさん」


「こうなると」


「しつこいですから」


セラ。


頷く。


ノア。


「戦力としても」


「価値は高い」


十二号。


全員を見る。


理解できない。


自分は。


敵だった。


レインを。


殺そうとした。


その父親を。


殺した。


それなのに。


「なぜ」


十二号。


「そこまで」


レインは。


少し考えた。


そして。


答える。


「俺たち」


「全員」


仲間を見る。


「捨てられた奴ばかりなんだ」


ガルド。


無能な盾。


リリア。


制御不能の魔法使い。


セラ。


役立たずとされた射手。


ミア。


失敗ばかりの錬金術師。


ノア。


仲間を死なせると恐れられた戦場設計士。


そして。


レイン。


三度。


追放された後衛。


「お前も」


レイン。


十二号を見る。


「王国魔術院に」


「捨てられた」


十二号。


言葉が。


出ない。


確かに。


そうだった。


命令に従わなかった瞬間。


処分対象。


完成個体。


最高傑作。


そう呼ばれていた。


でも。


必要なくなれば。


殺される。


「だから」


レイン。


手を差し出す。


「六人目だ」


十二号。


その手を見る。


「……六人目」


「俺を除いてな」


「追放者」


「そういうこと」


十二号。


長い。


長い。


沈黙。


そして。


手を伸ばす。


だが。


途中で。


止める。


「一つ」


「条件があります」


レイン。


「何だ」


「私の名前」


十二号。


胸。


【XII】


を見る。


「これは」


「名前ではありません」


レイン。


頷く。


「そうだな」


「私は」


「自分の名前を」


「知りません」


零号と。


同じ。


番号だけ。


人間なのに。


名前を。


与えられていない。


「なら」


レイン。


少し考える。


「自分で決めろ」


十二号。


驚く。


「あなたが」


「付けるのでは?」


「何で俺が」


「普通は」


「こういう時」


「仲間が名前を付けるものでは?」


「どこで覚えたんだ」


「本です」


「変な本読むな」


ミア。


手を上げる。


「私付けたいです!」


ガルド。


「やめとけ」


「何でです!」


「絶対変なのになる」


「なりません!」


「じゃあ何だ」


ミア。


考える。


「じゅうに君」


「却下」


全員。


即答。


「ひどい!」


十二号が。


小さく。


笑った。


そして。


しばらく。


考える。


「では」


空。


朝。


夜が。


終わり始めている。


東。


薄い光。


十二号は。


それを見る。


「アレン」


レイン。


「アレン?」


「はい」


「理由は?」


十二号。


少しだけ。


微笑む。


「ありません」


「初めて」


「自分で選ぶので」


レインも。


笑う。


「いい名前だ」


十二号。


いや。


アレン。


レインの手を。


握る。


その瞬間。


レインの視界。


【新規パーティーメンバー】


登録。


【個体名】


アレン。


【旧識別番号】


十二号。


【職業】


後衛支援士。


【潜在才能】


S。


【現在才能解放率】


3%。


そして。


その下。


新しい表示。


【特殊条件達成】


追放者六名。


【パーティー固有能力】


解放。


レインの表情。


変わる。


「……何だこれ」


全員。


「何?」


表示。


【固有能力】


《リベレーション》


レインが。


目を見開く。


自分たちの。


パーティー名。


それと。


同じ。


【効果】


パーティーメンバーの。


才能上限を。


撤廃する。


レイン。


声が。


出ない。


この世界。


才能にも。


上限がある。


F。


E。


D。


B。


A。


最高。


A。


だが。


《リベレーション》。


その意味。


上限撤廃。


つまり。


レインだけではない。


ガルドも。


リリアも。


セラも。


ミアも。


ノアも。


アレンも。


全員。


世界最高のAを。


越えられる。


レインは。


仲間を見る。


役立たず。


無能。


欠陥。


失敗作。


そう呼ばれ。


捨てられた者たち。


その六人に。


今。


世界の上限が。


なくなった。


レインは。


思わず。


笑った。


「……これ」


ガルド。


「何だ?」


レイン。


答える。


「俺たち」


一拍。


「全員」


「世界最強になれるぞ」


――第三十二話 了――

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