↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/57

第三十一話 捨てた力

第三十一話 捨てた力


「違う」


遠く。


アビス最深部。


暗闇の存在が笑った。


「それは」


「お前が」


「最初に捨てた力だ」


◇◇◇


十二号の拳を。


レインの右手が受け止めている。


【自己支援】


解放率:0.01%


【身体能力補正】


×50


レイン自身が。


一番理解できていなかった。


「俺が……」


攻撃能力。


ゼロ。


防御能力。


最高Dランク。


それが。


レイン・アーク。


三つのパーティーから追放された。


最大の理由。


なのに。


今。


世界最高レベル50。


しかも《境界補正》を持つ十二号の拳を。


素手で止めている。


「あり得ない……」


十二号が呟く。


「私の出力は」


「現在でもAランク上限を超えている」


「俺に言うな」


レインは本気で困っていた。


「俺だって分からない!」


その瞬間。


【警告】


【自己支援継続時間】


残り――8秒。


「短っ!」


「レイン!」


ノアが叫ぶ。


「後ろ!」


王国魔術院。


三十六人。


動く。


十二号だけではない。


敵は。


まだ残っている。


「ガルド!」


「おう!」


レインが。


十二号の拳を離す。


同時。


十二号。


再び攻撃。


レイン。


避ける。


速い。


いや。


世界が。


遅い。


【自己支援】


残り7秒。


十二号の右拳。


見える。


左。


蹴り。


見える。


次。


肘。


それも。


見える。


レインは。


全部。


避けた。


「……」


十二号の顔。


驚愕。


「何で当たらない」


「俺が聞きたい!」


レイン。


後退。


【残り6秒】


「ノア!」


「何だ!」


「六秒で道を作れ!」


「無茶言うな!」


「いつも作ってるだろ!」


「六秒は初めてだ!」


ノア。


《戦場設計》。


地形。


敵。


味方。


出口。


「セラ!」


「はい!」


「五秒後!」


未来視。


「右側!」


「敵が三人開きます!」


「リリア!」


「分かりました!」


魔力集中。


「ガルド!」


「何だ!」


「その元盾!」


「元って言うな!」


「投げろ!」


「盾を!?」


「早く!」


ガルド。


金属板を持つ。


「後で絶対直せよ!」


ミア。


「任せてください!」


「お前じゃねえ!」


「私しか直せません!」


ガルド。


投擲。


巨大な金属板。


回転。


敵三人。


避ける。


セラの未来。


その通り。


右側。


開く。


「今!」


リリア。


《スター・バースト!》


光。


地面。


爆発。


敵ではない。


足元。


土煙。


視界。


遮断。


ノア。


叫ぶ。


「右!」


【自己支援】


残り3秒。


レイン。


仲間を見る。


全員。


距離。


十二号。


背後。


敵。


三十六。


「全員走れ!」


六人。


一斉に右へ。


十二号。


追う。


「レイン!」


十二号の声。


「止まってください!」


「殺せって命令されてる奴に言われて止まるか!」


「私もそう思います!」


「なら追うな!」


「命令なので!」


「面倒くさいな!」


【残り2秒】


十二号。


距離。


三メートル。


【残り1秒】


レイン。


振り返る。


十二号。


拳。


「くっ!」


レイン。


腕。


防御。


【自己支援終了】


光。


消える。


十二号の拳。


直前。


止まった。


「……?」


レイン。


見る。


十二号の腕。


震えている。


「十二号?」


黒い瞳。


人間の瞳。


交互。


「行って……ください」


「お前」


「早く!」


十二号が叫ぶ。


「今なら」


「まだ」


「止められる!」


レイン。


迷う。


「レイン!」


ノア。


「道が閉じる!」


レインは。


歯を食いしばる。


そして。


走った。


「必ず」


十二号へ叫ぶ。


「戻ってくる!」


十二号は。


僅かに。


笑った。


「それは」


「困りますね」


◇◇◇


森。


六人。


全力。


ノア。


先頭。


「北東!」


セラ。


「二十秒後に追手!」


「何人!」


「十二!」


レイン。


支援。


《速度上昇》。


全員。


《疲労軽減》。


全員。


【支援経験値】


微量獲得。


今までなら。


見過ごしていた表示。


だが。


レベル100を目指すと決めた今。


意味が違う。


走るだけでも。


仲間を支援すれば。


経験値になる。


「……そういうことか」


レインが呟く。


「何がです?」


リリア。


「俺の経験値」


「今ですか!?」


「今だから分かった!」


レインは走りながら解析する。


【経験値獲得方式】


敵討伐:低


直接戦闘:極低


支援成功:中


格上対象への支援:高


潜在能力解放:極高


特殊連携成立:極高


仲間の成長:共有


レインの足が。


一瞬。


止まりそうになる。


「俺……」


「どうした!」


ガルド。


「敵を倒すより」


「お前たちを強くした方が」


「経験値が多い」


沈黙。


走りながら。


ミアが言った。


「何ですかそれ」


「分からん」


「ずるくないですか?」


「どこが!」


「私たちが頑張ったらレインさんが強くなるんですよね?」


「そうなる」


「やっぱりずるいです!」


ガルドが笑う。


「いいじゃねえか!」


「俺たちも強くなるんだろ!」


「それはそうですけど!」


ノアが。


走りながら言う。


「理にかなってる」


「何が?」


「レインの能力だ」


ノアは前だけを見る。


「こいつは」


「一人で強くなるように作られてない」


レイン。


その言葉に。


反応する。


作られていない。


「仲間を強くする」


「仲間が成長する」


「その結果」


「レインも成長する」


ノア。


「つまり」


「パーティーそのものが」


「レインの成長装置だ」


「言い方!」


リリアが怒る。


「仲間です!」


「意味は同じだ」


「全然違います!」


レインは。


二人の会話を聞きながら。


別のことを考えていた。


一人では。


強くなれない。


仲間が必要。


偶然なのか。


それとも。


父親が。


そうしたのか。


◇◇◇


「止まれ!」


ノア。


全員。


急停止。


前。


崖。


「行き止まり!?」


ミア。


「違う」


ノア。


下を見る。


川。


高さ。


二十メートル。


「飛ぶ」


「はい?」


ミア。


「飛ぶぞ」


「嫌です!」


「後ろから来る」


セラ。


未来視。


「八秒!」


「もっと嫌です!」


ガルド。


ミアを抱える。


「行くぞ!」


「待って待って待って!」


「三!」


「数えないで!」


「二!」


「話し合いましょう!」


「一!」


「嫌ぁぁぁぁ!」


ガルド。


跳ぶ。


「俺たちも!」


ノア。


セラ。


リリア。


レイン。


次々。


崖から飛ぶ。


落下。


レイン。


支援。


《衝撃軽減》。


全員。


ザッパァァァン!


川。


沈む。


浮上。


「ぷはっ!」


ミア。


ガルドに抱えられたまま。


「最悪です!」


「生きてるだろ!」


「そういう問題じゃありません!」


ノア。


岸を見る。


「上がるな!」


「川を下る!」


流れ。


速い。


六人。


そのまま。


流される。


崖上。


黒装束。


十二人。


現れる。


だが。


追えない。


「成功」


ノア。


レインの視界。


【生還率】


46%。


「まだ低い」


「追って来る」


セラ。


「別ルートで」


「何分?」


「十五分」


ノア。


周囲。


「十分で川を出る」


「その後?」


「ベルクへ向かう」


レインが驚く。


「予定通り?」


「ああ」


「追われてるぞ」


「だからだ」


ノアが答える。


「予定を変えると」


「敵にこちらの目的を教える」


「ベルクへ行く理由が」


「敵にはまだ分からない」


レイン。


少し笑う。


「なるほど」


やはり。


ノアは。


こういう時。


頼りになる。


◇◇◇


十五分後。


王国魔術院。


追跡部隊。


川辺。


隊長が。


足跡を見る。


「北西」


部下。


「ベルク方面です」


「追う」


その時。


背後。


声。


「その必要はありません」


全員。


振り返る。


十二号。


立っている。


「十二号」


隊長。


「対象は?」


「逃走しました」


「なぜ追わない」


「命令系統に異常が発生しました」


「何?」


十二号。


胸。


【XII】


赤い文字。


自分の指を。


そこへ突き刺す。


ブシュッ。


血。


「何をしている!」


十二号。


自分の胸から。


小さな黒い結晶を。


引き抜いた。


【強制制御核】


「……!」


隊長。


後退。


「十二号」


「それを外せば」


「分かっています」


十二号。


結晶。


握る。


砕く。


パキン。


【強制制御】


――切断。


十二号の身体。


一瞬。


大きく揺れる。


口から。


血。


それでも。


立つ。


「これで」


「命令は」


「必要ありません」


隊長。


剣を抜く。


「反逆か」


十二号。


少し考える。


「十八年前」


「私は」


「命令に従いました」


「その結果」


「一人の男を殺した」


目。


静か。


「今日」


「同じ男の息子を」


「殺せと命令された」


一歩。


「だから」


境界。


足元。


黒い文字。


「確認することにしました」


「何を」


十二号。


「十八年前」


一拍。


「間違えたのは」


「私だったのか」


「命令だったのか」


隊長。


「くだらん」


剣。


構える。


「実験体が」


「考える必要はない」


十二号。


止まる。


その言葉。


十八年前。


同じ。


記憶。


男。


レインの父。


血。


自分の腕。


そして。


死ぬ直前。


父親が。


十二号へ言った。


『お前は道具じゃない』


『いつか』


『自分で選べ』


十二号。


目を閉じる。


十八年間。


意味が。


分からなかった。


でも。


今。


分かる。


「……そうですね」


目。


開く。


「やっと」


「選べます」


◇◇◇


その頃。


レインたち。


川を抜け。


森。


走る。


突然。


レインの視界。


【特殊条件達成】


「……?」


【対象】


十二号。


【潜在才能】


可視化可能。


「今?」


今まで。


十二号には。


何も見えなかった。


レイン。


解析。


【十二号】


現在職業:なし。


固有能力。


《境界反転》。


《空間短縮》。


《因果干渉》。


そして。


一番下。


【隠された才能】


レインの目が。


大きくなる。


【適性職業】


――後衛支援士。


「……嘘だろ」


足が。


止まる。


「レイン?」


リリア。


レインは。


表示を見続ける。


十二号。


完成個体。


世界最高クラス。


境界能力。


戦闘能力。


測定不能。


そんな男の。


本来の才能。


攻撃ではない。


支援。


自分と。


同じ。


その下。


さらに。


表示。


【潜在才能評価】


S。


世界の職業評価。


最高A。


なのに。


S。


「ノア」


「何だ」


「戻る」


全員。


止まる。


「は?」


「十二号のところへ戻る」


ガルド。


「お前」


「さっき必死で逃げたばっかりだぞ!」


「分かってる」


「じゃあ何で!」


レイン。


十二号の才能を見る。


そして。


言う。


「見つけた」


「何を?」


レインは。


少し笑った。


それは。


三度。


無能と呼ばれ。


捨てられた自分が。


今まで。


何度もしてきたこと。


誰にも評価されない。


隠れた才能。


それを。


見つける。


「次の」


一拍。


「仲間だ」


全員。


沈黙。


ガルドが。


頭を抱えた。


「またかよ!」


ミア。


「今度は敵ですよ!?」


「元敵だ」


「まだ元になってません!」


リリア。


苦笑。


「でも」


「レインさんですから」


セラも。


小さく笑う。


ノアだけが。


真剣に聞く。


「才能は?」


レイン。


答える。


「後衛支援士」


ノアの目。


変わる。


「評価」


「S」


「……」


初めて。


ノアが。


完全に言葉を失った。


レインは。


来た道を見る。


「行こう」


「十二号を」


「取り返す」


◇◇◇


同じ頃。


十二号。


一人。


王国魔術院。


三十七人。


その中央。


立っている。


血。


服。


破れている。


敵。


残り。


二十一。


十二号。


呼吸。


荒い。


境界能力。


強制制御核を外した影響。


出力。


不安定。


隊長が。


剣を向ける。


「終わりだ」


十二号。


笑う。


「そうかもしれません」


「最後に言い残すことは」


十二号。


空を見る。


十八年前。


あの男。


そして。


その息子。


「一つだけ」


「何だ」


十二号。


静かに。


言う。


「今度は」


「間違えなかった」


隊長。


剣。


振り下ろす。


その瞬間。


森の奥。


声。


「勝手に死ぬな!」


十二号。


目を見開く。


光。


一直線。


《スター・ランス!》


隊長の剣。


弾かれる。


次。


矢。


三本。


敵の足元。


《未来射撃》。


そして。


巨大な。


金属板。


飛んでくる。


ドォン!


「うおおおお!」


ガルド。


「これ盾として使いにくすぎるぞ!」


「だから車輪を!」


「まだ言うか!」


ミア。


薬瓶。


投擲。


煙。


ノア。


「左に五!」


「右に七!」


「中央九!」


レイン。


最後に。


森から出る。


十二号。


呆然。


「……なぜ」


レインが。


十二号の前へ。


立つ。


「言っただろ」


「戻ってくるって」


「でも」


「お前」


レイン。


指差す。


「俺のパーティーに入れ」


十二号。


完全に。


固まった。


周囲。


敵。


二十一人。


戦場。


ど真ん中。


十二号。


「……今」


「その話をしますか?」


レイン。


即答。


「今だからする」


そして。


笑った。


「お前」


「後衛の才能があるぞ」


十二号は。


人生で初めて。


意味が分からないという顔をした。


――第三十一話 了――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。