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世界最低の後衛は最高の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~  作者: あめのひくもり


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第三話 才能が見える日

朝霧が街道を包んでいた。


レイン・アークは、街へ続く石畳の道を一人歩いていた。


昨夜は街道脇で野宿をした。


冒険者として十年以上生きてきた彼にとって、野営は日常だった。


火を起こし、簡単な食事を作り、翌朝には跡形もなく片付ける。


それだけは誰にも負けない自信がある。


だが、それが戦いの役に立つことはなかった。


「これから……どうしようかな。」


冒険者を辞める。


その考えは、昨夜から変わらない。


この世界では戦えない者に価値はない。


三つのパーティーから追放されたことで、それを嫌というほど思い知らされた。


「故郷に帰るか……。」


そう呟いた、その時だった。


「きゃあっ!」


少女の悲鳴が森の中から響いた。


レインは反射的に駆け出す。


木々をかき分けると、一人の少女が倒れていた。


年は十五、六歳ほど。


薄汚れたローブを身にまとい、杖を握っている。


その前には、二匹のゴブリン。


「ギギッ!」


ゴブリンが棍棒を振り上げる。


レインは腰の短剣を抜いた。


攻撃は苦手だ。


だが、時間くらいは稼げる。


「こっちだ!」


叫びながら石を投げる。


ゴブリンの注意が自分へ向いた。


「ギャッ!」


一匹が飛び掛かる。


レインは転がるように避ける。


攻撃を受ければ終わる。


防御はDランク。


致命傷は避けられても、長くは戦えない。


少女へ叫ぶ。


「立てるか!」


「は、はい……でも魔法が……。」


魔力切れか。


レインは腰のポーチから小瓶を取り出した。


「これを飲め!」


「え?」


「魔力回復薬だ!」


少女は驚いた表情で瓶を受け取り、一気に飲み干した。


その瞬間。


「《ファイアボルト》!」


炎が一直線に走る。


一匹目のゴブリンを撃ち抜いた。


もう一匹は逃げようとしたが、二発目の魔法が背中を貫いた。


静寂が戻る。


少女はその場へ座り込んだ。


「た、助かりました……。」


「怪我は?」


「大丈夫です。」


レインは安堵の息を吐く。


「それなら良かった。」


少女は深々と頭を下げた。


「私はリリアと申します。」


「魔法使いです。」


レインも軽く頭を下げる。


「レインだ。」


「ただの……元冒険者だよ。」


「元?」


「昨日、三度目の追放をされた。」


苦笑しながら答えると、少女も寂しそうに笑った。


「私もです。」


「え?」


「魔法使いなのに魔力が少ないから、役立たずだって。」


レインは思わず言葉を失う。


まだ幼い少女まで追放される世界。


やはり、この世界は結果しか見ない。


「大丈夫。」


「君はまだ若い。」


「きっと良い仲間が――」


そこまで言った時だった。


レインの視界に、突然、淡い青い文字が浮かんだ。


最初は目の錯覚だと思った。


だが、その文字ははっきりと少女の頭上に浮かんでいる。


――【潜在才能を検知しました】――


「……え?」


次の瞬間、文字が増えていく。


【名前】リリア


【現在職業】魔法使い


【現在適性】F


【潜在才能】


★★★★★


【真の適性】


《星詠みの大賢者》


【覚醒条件】


・仲間を守るという強い意志


・星属性魔法との契約


・信頼できる後衛の支援


【成長率】


SSS


レインは目を見開いた。


「なんだ……これは。」


リリアが首をかしげる。


「どうかしましたか?」


「いや……。」


文字は消えない。


それどころか、視線を向けるたびに詳細が増えていく。


【推奨育成】


・火属性より星属性


・長詠唱禁止


・支援魔法との相性 EX


・単独行動 不適


・パーティー適性 SSS


レインは混乱していた。


こんな能力は聞いたことがない。


鑑定魔法でも、ここまで詳細な情報は見えない。


しかも「未来の才能」が表示されている。


リリアは不安そうに尋ねた。


「私……何か変ですか?」


レインは首を横に振った。


「違う。」


「君は……。」


言葉を選ぶ。


そして静かに微笑んだ。


「君は、役立たずなんかじゃない。」


リリアの瞳が揺れる。


その言葉は、追放されて以来、誰からも掛けられなかった言葉だった。


「君には、世界で誰よりもすごい才能がある。」


リリアは困ったように笑う。


「そんな慰めはいりません。」


「慰めじゃない。」


レインは初めて確信した。


この力は、人の未来を見る力だ。


今まで誰にも認められなかった才能を見つける力。


三度も「無能」と呼ばれた自分に与えられた、唯一無二の力。


レインは少女へ向かって手を差し伸べた。


「リリア。」


「もし行く場所がないなら。」


「俺と一緒に来ないか。」


「世界一のパーティーを作ろう。」


少女は驚いた顔で、その手を見つめる。


その一歩が。


世界最強の後衛と、世界最強の仲間たちの物語の始まりになることを、この時の二人はまだ知らなかった。

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