第一話 世界最強の後衛
はじめまして。
本作『世界最低の後衛は最強の後衛だった ~三度追放された荷物持ちは、捨てられた才能だけを集めて魔王を討つ~』をお読みいただき、ありがとうございます。
異世界ファンタジーでは「最強主人公」が数多く登場しますが、この作品の主人公は違います。
主人公は最後まで攻撃できません。
防御力も低く、レベルもDランク止まりと評価され、三度も「無能者」「役立たず」としてパーティーを追放されます。
それでも、彼には誰にも真似できない力がありました。
それは――「人の才能を見抜く力」。
自分では戦えないからこそ、仲間を信じ、支え、育てる。
そんな「世界最強の後衛」の物語を描いていきます。
ぜひ最後まで、レインたちの成長を見届けていただければ幸いです。
漆黒の空を、竜の咆哮が引き裂く。
魔王城――。
人類最後の砦となった連合軍は、数十万を超える魔王軍を前に壊滅寸前だった。
大地には魔物の死骸が積み重なり、空には飛竜の群れが舞う。
炎が降り注ぎ、雷鳴が轟く。
勇者は膝をつき、折れた聖剣を支えに立っていた。
「くっ……まだ終われない……!」
聖女は魔力を使い果たし、その場に崩れ落ちる。
「もう……回復魔法は……。」
大賢者も苦笑する。
「禁呪すら効かぬとは……。」
誰もが敗北を覚悟した。
玉座に腰掛ける魔王が、ゆっくりと立ち上がる。
「人間よ。」
その声だけで空気が震えた。
「よくここまで来た。」
「だが、ここで終わりだ。」
漆黒の魔力が戦場を覆い尽くす。
英雄たちでさえ身動きが取れない。
魔王軍四天王が一斉に前へ出る。
誰も勝てない。
そう思われた、その時だった。
「みんな。」
静かな声が響く。
戦場の最後尾。
最も安全な場所。
そこに、一人の青年が立っていた。
年齢は三十歳前後。
派手な装備はない。
剣も持たない。
鎧も軽装。
杖だけを静かに握っている。
彼こそが、このパーティーの後衛。
レイン・アーク。
青年はゆっくりと杖を地面へ突き立てた。
「任せた。」
その一言だけだった。
次の瞬間――。
世界が黄金色の光に包まれた。
勇者の剣が輝く。
「力が……溢れてくる!」
聖女の身体から神々しい光が放たれる。
「魔力が……全回復?」
大賢者は驚愕した。
「詠唱なしで禁呪が使える……!」
盾役は魔王の一撃を正面から受け止める。
弓使いの放った矢は空を裂き、一度に百の魔物を射抜いた。
魔法使いの炎は一つの都市を覆うほど巨大な火柱となる。
誰もが限界を超えていた。
魔王は初めて表情を変えた。
「……馬鹿な。」
「なぜ人間が、この力を……。」
側近が叫ぶ。
「魔王様!」
「あの男です!」
「あの後衛を倒してください!」
魔王はゆっくりとレインへ視線を向けた。
神級鑑定。
世界最高の鑑定魔法。
誰一人偽装できないはずの能力。
魔王の目に映った情報は――
【名前】
レイン・アーク
【職業】
後衛
【レベル】
30
【ランク】
D
【攻撃】
E
【防御】
D
【支援】
D
魔王は思わず笑った。
「ただの……Dランク?」
「こんな男が世界最強の後衛だというのか。」
漆黒の槍が放たれる。
狙いはレインただ一人。
しかし。
盾役が飛び込む。
弓使いが槍の軌道を逸らす。
魔法使いが結界を展開する。
聖女が即座に回復魔法を重ねる。
誰一人として、レインに攻撃を届かせない。
魔王は理解した。
「違う……。」
「強いのは、あの男ではない。」
「……あの男がいるから、お前たちは強いのか。」
レインは静かに仲間たちを見渡す。
そこにいるのは、かつて世界中から見捨てられた者たちだった。
「落ちこぼれ」と呼ばれた魔法使い。
「役立たず」と笑われた盾役。
「命中率ゼロ」と追放された弓使い。
「失敗作」と蔑まれた錬金術師。
「回復量が少ない」と見捨てられた聖女。
全員が、どこにも居場所のなかった者たち。
レインだけが、彼らの本当の才能を見抜いた。
だからこそ、彼らは世界最強になった。
レインは静かに微笑む。
「終わらせよう。」
その一言で、仲間たちは一斉に駆け出した。
勇者の一撃が四天王を斬り裂く。
聖女の祈りが魔王軍を浄化する。
魔法使いの禁呪が魔王城を揺るがす。
そして――。
世界最強のパーティーが、魔王を討ち果たした。
玉座の前で崩れ落ちる魔王は、最後の力を振り絞って問いかける。
「……お前は、一体何者だ。」
レインは少しだけ笑った。
「俺は。」
「ただの後衛だ。」
魔王は目を閉じ、そのまま動かなくなった。
世界に、長い静寂が訪れる。
だが、この場にいる誰も知らない。
世界を救ったこの男が。
かつて三度も「無能者」と呼ばれ、仲間から追放された荷物持ちだったことを。
――十年前。
すべては、一枚の追放通知から始まった。
第1話を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
物語は、世界最強のパーティーが魔王を倒す場面から始まりました。
しかし、これは英雄譚の終わりではなく、一人の「役立たず」と呼ばれた後衛が、どのようにして世界最強のパーティーを築き上げたのかを描く物語です。
次回からは舞台を十年前へ移し、主人公レインが三度目の追放を受けるところから、本当の物語が始まります。
なぜ彼は「無能者」と呼ばれたのか。
なぜ誰にも見えない才能を見ることができるのか。
そして、世界最強の仲間たちとの出会いとは――。
少しでも「続きが気になる」と思っていただけたら嬉しいです。
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それでは、第2話「三度目の追放」でお会いしましょう。




